食品メーカーの食品ロス対策の取り組み事例10選

公開日:2024年3月13日 最終更新日:2024年4月8日

地球環境にも悪影響を及ぼす食品ロスの問題は、メディアでも大きく取り上げられており、社会問題になっています。そんな中、「食べ物を粗末にしない」といった昔ながらの考え方を見直す傾向もあります。 

特に食に関わる企業や食品メーカーは、どのような工夫をして食品ロスを減らすかが大きな課題です。

そこでこの記事では、食品メーカーにおける食品ロスの取り組み事例をまとめて紹介します。自社に活用できる取り組みがないか、ぜひチェックしてみてください。

 

日本の食品ロスの現状と課題

食品ロスとは、食べられるにもかかわらず捨てられてしまう食品です。

現在、世界規模で食品ロスが問題視されています。その中でも、特に食品ロスの量が多いといわれているのが日本です。

令和3年度の食品ロス量は523万トン。このうち食品関連事業者から発生する事業系食品ロス量は279万トンにも及びます。参照:農林水産省

日本の食料自給率は約40%にもかかわらず、これだけの食品廃棄が発生していると考えれば問題の重要性が分かります。そのため、食品を生産するメーカーや企業側の食品ロス削減への取り組みが必要不可欠です。

 

食品ロスが発生する3つの要因

食品ロスが発生する要因を3つ紹介します。

食品流通の「3分の1ルール」

食品流通の分野では「3分の1ルール」という商習慣があります。

「3分の1ルール」とは、食品メーカーと小売業、消費者の3者が製造日から賞味期限までの期間を3等分するというものです。

これは消費者の鮮度に対する意識が高まり、1990年代から導入されたものです。例えば、小売(食品スーパー)の販売期限が過ぎると、賞味期限がきていなくても食品卸に返品されます。すると消費できる人がおらず、食品ロスが発生してしまうのです。

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欠品対策のための過剰生産

過剰生産とは、消費者の需要を超えて、商品が生産されることです。食品メーカーは、市場の需要を考えながら生産計画を立てます。

しかし変化の多い現代では、需要の予測は難しいとされています。特に日本は、自然災害が多いため、何がどのくらい売れるのか予測しづらいのが現状です。

その結果、商品を過剰生産し食品ロスが増えてしまいます。

 

外食や中食の食べ残し・廃棄

外食や中食産業では、多くの食べ残しが発生しています。

飲食店での食べ残しを想像してもらうとわかりやすいでしょう。注文したメニューを食べきれず、その料理を残してしまうという事例は日常的に起こっています。

しかも食べ残しは再利用できないため、ほとんどが廃棄の対象です。このように私たちの生活の中でも、多くの食品ロスが発生しています。

 

企業の食品ロス対策は必須の時代に

食品メーカーの食品ロス対策は、必須の時代に突入してきました。

なにより個人で取り組むよりも、企業で取り組む方が大きな成果を上げられます。

近年、持続可能な開発目標(SDGs)が掲げられ、企業での取り組みが重要視されています。

SDGsとは、社会や経済、環境などの改善を目的とした取り組みです。17の目標が定められ、より良い世界を作って行くために活動しています。

特に目標12の「つくる責任・つかう責任」は、消費と生産の最適化を目指しています。2030年までに一人当たりの食糧廃棄を半減させる試算です。

特に食品ロスの多い食品メーカーは、その責任が大きいでしょう。SDGs活動は社会的にも評価されやすいため、フードバンクの取り組みはメリットが大きいといえます。

 

食品ロス削減の取り組みを行う企業事例

それでは食品ロス削減の取り組みを行う企業の事例を紹介します。

食品ロスの商品を販売するECサイト「Kuradashi」

■画像引用元:Kuradashi (https://kuradashi.jp/

Kuradashiは、賞味期限の近い食品や規格外品を販売するECサイトです。

食品メーカー側はさまざまな理由により販売できない食品を出品でき、消費者側はお得に商品を購入できるというビジネスモデルです。また購入金額の一部は、社会貢献活動に当てられます。
サイトを閲覧すると、賞味期限の近い食品が多く販売されていました。ジャンルも多種多様で、肉類や魚介類、米、お菓子、お酒、日用品など、あらゆる商品をお得な価格で購入できます。

食品メーカーと消費者、どちら側にもメリットのある取り組みといえるでしょう。

 

廃棄されるフルーツを活用する「日本丸天醤油」

 

 

■画像引用元:日本丸天醤油 | yasashiku (https://www.yasashiku-gelato.jp/

醤油を中心とした食品を製造する​​「日本丸天醤油株式会社

同社では、不揃いの果実などを使用したジェラート「YASASHIKU Gelato」を製造。味は美味しいのに廃棄されてしまう果物を活用し、大きな話題を呼んでいます。また着色料や乳化剤は一切使用せず、甘酒の自然な甘みを活かしているのもポイントです。

果物は天候に左右されやすく、食品ロスが発生しやすい食べ物です。農家の存続を支援する目線でも、良い取り組みといえます。

 

規格外の芋を活用する「根津」

■画像引用元:根津 (http://netsu-f-v.com/

創業60年以上を誇る青果専門店根津では、規格外のさつまいもを利用した「"純生"スイートポテト」を製造しています。

さつまいもは、サイズが不揃いになりやすく、傷もつきやすいため、廃棄が多かったといいます。その規格外のさつまいもを加工し、スイートポテトの開発に着手。パイ専門店と共同し、何度も試作を繰り返して商品が完成しました。

規格外になりやすい食品を扱っている食品メーカーは、ぜひ参考にしてみてください。

 

廃棄フルーツからグミを開発「やまやま」

■画像引用元:やまやま | 無添加おやつ 腸活おやつは無添加こどもグミぃ〜。 (https://yama2.shop-pro.jp/

和歌山県で社会課題の解決に取り組む事業を行っているやまやま

同社では、地域の農家さんから規格外や廃棄になる果物を買い取り、それを丸ごと乾燥させた「無添加こどもグミぃ〜。」を製造しています。
毎月約240kgもの廃棄フルーツがグミに加工され、全国の子供達に届けられています。
また加工や発送の作業は、障害者福祉施設に業務委託し、雇用の創出にもつながっているそうです。

食品ロス削減だけでなく、地域の活性化にもつながっている事例です。

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廃棄パンをクラフトビールに「マルセリーノ・モリ」

■画像引用元:upcycle (https://upcycle-beer.com/

ベーカリー専門店「Boulanferme」では、パンの耳を活用したクラフトビールを開発しています。

サンドイッチを製造すると、パンの耳が大量に出ます。そのパンの耳を乾燥・加工し、クラフトビールにアップサイクルする仕組みです。
今までパンの耳は、家畜の肥料にするなど「ダウンサイクル」が常識でした。
そこでクラフトビール醸造所と協力し、サスティナブルなクラフトビールupcycleの開発に着手したそうです。
クラフトビールは、パン由来の香ばしさを感じられ、多くの人から「美味しい」と評価されています。

クラフトビールは、徐々に人気が出てきている分野なので、参考にできる部分は多いです。

 

お餅の賞味期限を延長「佐藤食品工業」

■画像引用元:佐藤食品工業 (https://www.sato-foods.co.jp/

サトウの切り餅で有名な佐藤食品工業

同社では、酸素を吸収し、水分の蒸発を抑えるハイバリアフィルムを採用。個包装内の切り餅やまる餅の美味しさを保っています。酸化を防ぎ、水分を保持することでつきたての食感を維持。賞味期限を15ヶ月から24ヶ月に延長しています。

賞味期限の延長は食品ロス削減につながるため、自社の製造工程で工夫できる部分はないかぜひチェックしてみてください。

 

売り方を工夫している「成城石井」

■画像引用元:成城石井 (https://www.seijoishii.co.jp/csr/

世界中から美味しい食品を厳選し、取り揃える食品スーパー成城石井

同スーパーでは、SDGsの取り組みを強化し、食糧問題の解決に取り組んでいます。

  • ・見栄えが悪く仕上がったプリンを「不揃い焼きプリン」として販売
  • ・食パンをスライスせずに一斤で販売
  • ・惣菜をパック売りから量り売りにして容器コストを削減

このような取り組みは、食品スーパーの運営で参考になるはずです。

小さな工夫をコツコツ積み重ねれば、大きな食品ロスにつながっていきます。

 

3分の1ルールを改定した食品スーパー「ヤオコー」

■画像引用元:ヤオコー (https://www.yaoko-net.com/

食品スーパーヤオコーでは、3分の1ルールの見直しを行っています。

同スーパーでは、3分の1ルールを「2分の1ルール」に変更。店舗へ出荷できる商品の期限を延ばし食品ロスを削減しています。中でも、購入後の消費が早いカップ麺や飲料、お菓子などは、緩和が推奨されているようです。

地方スーパーでの導入も検討されており、今後は全国へ広がっていくでしょう。

 

廃棄されるフルーツをチーズケーキに「チーズケーキラボ seed(シード)」

■画像引用元:cheesecake lab seed (https://e-seed.info/

オーガニックのチーズケーキ専門店cheesecake lab seedでは、廃棄されるフルーツを使用したチーズケーキを製造しています。

廃棄されるフルーツは、傷の入ったものや完熟しすぎたもので、鮮度に問題がなく本来は美味しく食べられます。それを上手く活用し、「エシカルフルーツのチーズケーキ」を開発しました。
農薬や化学肥料を使用せずに作られた特別栽培米の米粉、遺伝子組み換えではない餌で育てられた鶏の卵など、こだわりの食材で作られています。

また再生ギフトパッケージなど、SDGsへの取り組みも積極的で、今後も環境に寄り添ったスイーツ作りを続けていくそうです。

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野菜の茎や皮をチップスに「オイシックス・ラ・大地」

■画像引用元:Oisix ra daichi (https://www.oisixradaichi.co.jp/

食品宅配サービスOisixを運営するオイシックス・ラ・大地では、廃棄食材を利用したチップス「ここも食べられるチップス」シリーズを開発しています。

Oisixでは、自社通販サイトの製造過程で廃棄の野菜が発生します。その野菜を活用し、ブロッコリーの茎や大根の皮をチップスにし、サステナブルマーケットUpcycle by Oisixで販売。約1年で20万個を販売し、フードロス削減に大きく貢献しました。

その他にも、梅酒作りで使用された梅の果肉を使用した「梅シュトレン」「梅ドライフルーツ」なども開発。アップサイクル食品の開発を積極的に行っています。

 

食品ロスの取り組みは広がっている

食品事業者の取り組み次第で、食品ロス削減に大きく貢献できます。特に食品メーカーや食品スーパーは、大量の食品ロスが出やすいため、早急な取り組みが必要です。SDGsなど食品ロスを削減する動きは世界中で活発化しているので、ぜひ取り組みを推進していきましょう。

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