アニマルウェルフェアとは?日本の食品メーカーや企業の事例、メリット・デメリットを解説

公開日:2022年9月26日 最終更新日:2022年9月22日

欧米を中心に世界中で広がりを見せている「アニマルウェルフェア」。動物の福祉を意味する言葉ですが、日本ではまだ浸透していないのが現状です。しかし今後は、アニマルウェルフェアが広まっていくと予想されています。

畜産物を扱う食品メーカーは、アニマルウェルフェアに配慮した商品作りが求められてきます。そこでこの記事では、アニマルウェルフェアの意味やメリット・デメリット、日本での取り組みについて解説していきます。

アニマルウェルフェアとは?

 

アニマルウェルフェアとは、政府間機関の国際獣疫事務局(OIE)によって「動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態」と定義されています。

日本では「動物福祉」「家畜福祉」とも呼ばれ、動物が本来の生活で人生を全うし、幸せな生活を送ることを目的としています。

そしてアニマルウェルフェアは「5つの自由」が提唱されています。

・飢え、渇き及び栄養不良からの自由
・恐怖及び苦悩からの自由物理的
・熱の不快さからの自由
・苦痛、傷害及び疾病からの自由
・通常の行動様式を発現する自由

これを元に、各国では動物に配慮した取り組みが進んできました。将来的には世界中でアニマルウェルフェアが浸透し、食糧供給のスタイルも変わってくると予想されています。

 

日本のアニマルウェルフェアが世界から遅れている理由

日本ではアニマルウェルフェアが浸透しておらず、動物の自由について考えている企業や畜産農家は多くありません。

ほとんどの畜産農家では、角を切ったり、狭いケージに詰め込んだりと、人間が扱いやすく、大量に飼育できる仕組みを整えています。例えば、養鶏場では鶏同士がつついて怪我をしないように、クチバシを切断して飼育しているのが現状。

一方世界では、家畜を詰め込む形式のバタリーケージを廃止し、自由に生活できるケージフリーの取り組みが加速しています。EUでは2012年から全面禁止となり、アメリカやオーストラリアの一部の州でも禁止となりました。

そのため日本は、世界でも特にアニマルウェルフェアが遅れた国として認識されています。しかし世界の基準に向き合わなければ、消費者の気持ちに寄り添った商品開発はできないでしょう。

 

食品メーカーがアニマルウェルフェアに配慮するメリット・デメリット

食品メーカーがアニマルウェルフェアに配慮するメリットとデメリットを紹介します。

 

アニマルウェルフェアのメリット

企業間の取引で有利になる

日本においても、アニマルウェルフェアに配慮する取り組みが、少しずつ始まっています。
総合給食大手の株式会社ニッコクトラストでは、内閣府食堂で使用している卵を100%ケージフリーエッグに切り替えたと発表。今後は行政機関を中心にケージフリーエッグが広まり、最終的には外食産業などにも広がっていくと予想されています。

参照:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000033124.html

よってアニマルウェルフェアに配慮した食品は、企業間の取引で有利になるはずです。
実際に海外のスーパーマーケットでは、ケージフリーエッグが浸透しています。また2022年より牛肉の「アニマルウェルフェア認証制度」も始まりました。認証されれば、消費者のニーズともマッチし、安定した売上を維持できるかもしれません。

 

食料の安全性につながる

アニマルウェルフェアは、食糧の安全性につながっています。動物が本来の姿で飼育されれば、ストレスが減り健康的な姿となります。動物の命を食べる私たちにとって、健康な動物とストレスを与えられた動物のどちらを食べた方が健康になるかは明白です。

消費者が添加物を気にするように、飼育環境も見られる時代に突入しています。よって、アニマルウェルフェアに配慮した食料は、安全性の高いものだと認識されていくでしょう。

 

ブランド化して差別化できる

アニマルウェルフェアというだけで商品の差別化につながります。SDGsが叫ばれる現代では、人間だけでなく動物に配慮した商品は、消費者の興味関心を引きやすいでしょう。

消費者はより安全・安心なものを求め続けています。よってアニマルウェルフェアは、一種のブランドとして注目を集めることは間違いありません。

 

環境や動物保護に関心の高い消費者から支持を得られる

アニマルウェルフェアは、環境や動物保護に関心の高い消費者からの支持が得られます。
欧米では動物保護団体が「アニマルウェルフェア」の認証制度を導入。認証を受けた商品は、スーパーマーケットでも売上を伸ばしています。

日本ではアニマルウェルフェアという言葉は浸透していないものの、

「ケージフリーで育った卵です」
「ストレスを与えずに飼育しています」

と別の言葉に置き換えれば、消費者から注目されるはずです。より安全な食品を求める消費者も増えているので、アニマルウェルフェアは企業価値を上げてくれるでしょう。

 

アニマルウェルフェアのデメリット

コストが高い

アニマルウェルフェアの製品は、コストが高くなりやすいのがデメリットです。例えば、養鶏場でケージに入れない「ケージフリー」にすると、個体の管理や卵の収穫にコストがかかります。

現在は10個入りで200円前後ですが、アニマルウェルフェアにすると倍以上の価格となります。日本では景気が下がっているため、価格を上げることが難しく、消費者は買い求めづらいかもしれません。

とはいえ、食品に安全・安心を求める人は一定数います。その層にアプローチするマーケティングを考え、付加価値の高い商品としてブランド化することで、高価格でも購入につながるでしょう。

 

認知度が低い

日本ではアニマルウェルフェアの認知度は、まだまだ低いのが現状です。日本の養鶏場の9割はケージ飼育のため、消費者のほとんどはアニマルウェルフェアと言われても分かりません。

そのためアニマルウェルフェアを押し出した商品を販売しても、価値を感じてくれるのは一部の人だけです。別のアプローチ方法を考えつつ、認知度が拡大するのを待つしかないでしょう。

 

アニマルウェルフェアに配慮する日本の食品メーカーや行政の事例

アニマルウェルフェアに配慮している日本の食品メーカーをいくつか紹介します。

 

平飼いたまごを訴求する「イオン・トップバリュ」

■画像引用元:トップバリュ 平飼いたまご - イオンのプライベートブランド TOPVALU(トップバリュ)(https://www.topvalu.net/ge_hiragaitamago/)

 

イオンでは「有機JAS」基準に沿って飼育した「トップバリュ グリーンアイオーガニック 平飼いたまご」を販売しています。

自社で平飼い卵の基準を設定し、野外の運動場を取り入れたケージフリー鶏舎など鶏のストレスを減らすような取り組みを実施。アニマルウェルフェアに配慮したたまごを生産しています。

価格は6個入りで598円(税込価格645.84円)。少々値段は張りますが、お客様から「購入したい」と要望があるほど人気商品となっています。

 

たんぱく質の安定調達・供給を目指す「日本ハム」

日本ハムでは、アニマルウェルフェアに配慮し、タンパク質の安定調達・供給を目指しています。独自のアニマルウェルフェアガイドラインを設定し、動物にストレスを与えない管理方法や輸送方法などが明確に定められています。

 

妊娠ストールフリーを目指す「プリマハム」

■画像引用元:プリマハム | サステナビリティ | アニマルウェルフェアへの対応(https://www.primaham.co.jp/sustainability/materiality/materiality6.html)

 

プリマハムでは、養豚場での「ストールフリー」を掲げています。
通常、養豚場では子どもを産んだ母豚は個別の檻に入れられて飼育されます。ストールフリーはそれを廃止し、自由に行き来できるようにしたものです。現在はストールフリーの養豚場も建設され始め、徐々にアニマルウェルフェアに配慮した飼育が始まっています。

 

植物代替肉の使用を推進する「日清食品」

■画像引用元:研究室からステーキ肉をつくる。 | 日清食品グループ(https://www.nissin.com/jp/sustainability/feature/cultured-meat/)

 

日清食品では、環境負荷の低い植物代替肉・培養肉の開発に力を入れています。動物に配慮するのはもちろんのこと、家畜による温室効果ガスの削減にも取り組んでいます。
2019年3月には東京大学との共同研究により、ウシ筋組織を作製することに世界で初めて成功しました。今後も代替肉の開発を進め、環境に優しい食品供給を目指しています。

関連記事:流行りの代替肉とは?代表的な大豆ミートや、日本の食品メーカー事例をご紹介

 

牛放し飼いで効率よりも個性重視した「磯沼ミルクファーム」

■画像引用元:磯沼ミルクファーム 磯沼牧場 offcial(https://www.isonuma-milk.com/)

 

東京都八王子市にある「磯沼ミルクファーム」では、牛を牛舎につながない「フリーバーン」で乳牛を飼育しています。生き物は個性があり、自由に育てた方が味も良くなるという想いから放し飼いにされているそう。

効率が悪くコストはかかりますが、個性豊かな商品になりリピーターができるほど人気商品となっています。最近は「推しの牛」のヨーグルトが買いたいという人もいて、消費者の心をしっかりと掴んでいるようです。

鶏がストレスのない鶏舎に切り替えた「鈴木養鶏場」

大分県日出町の鈴木養鶏場では、鶏に快適な環境の中で卵を産んでもらうことを目的に、2005年よりアニマルウェルフェアに取り組んでおり、先進国であるEU(イタリア)のメーカーから輸入した鶏舎への切り替えを進めています。アニマルウェルフェア対応の鶏舎では、従来の2万5千羽から1万6千羽に減らしてゲージ内スペース拡大、鶏舎内の温度や餌の支給をコンピューターで自動管理し、爪とぎの設置や卵を埋むゲージの隅にはのれんを設置して影を作り卵を産みやすくし、糞は毎日ベルトで運搬する機能など、鶏のストレスを徹底的に軽減する仕組みを取り入れています。現在は残り1鶏舎で、2024年までにすべての鶏舎をアニマルウェルフェアに対応させる計画です。

山梨県「やまなしアニマルウェルフェア(YAW)」

山梨県は国内の自治体で初めてアニマルウェルフェアの認証制度「やまなしアニマルウェルフェア(YAW)」を創設しました。

やまなしアニマルウェルフェア認証制度では、2つの認証区分を設けています。

①エフォート〔取組(計画)認証〕

県主催の講習会の受講等により、アニマルウェルフェアの知識を習得し、エフォート基準を満たすとともにアニマルウェルフェアの取組宣言(計画、取り組む内容)を提出した農場を認証します。

②アチーブメント〔実績(成果)認証〕

アチーブメント基準を満たした農場及びそこで生産される畜産物等を認証します。
引用:https://www.pref.yamanashi.jp/oishii-mirai/contents/sustainable/animal_welfare.html

これらの基準を満たすとアニマルウェルフェアロゴマークが表示でき、商品のブランド価値を上げることができます。

実際にフランスでは、アニマルウェルフェアに関する食品ラベルを本格化。鶏肉のラベルでは、全生涯(出生、飼育、収集、輸送、食肉処理)を5つのステージで評価されています。今後は日本でもアニマルウェルフェアのラベルの表示が推奨されていくと予想できるでしょう。

 

アニマルウェルフェアに配慮した取り組みを

日本でもアニマルウェルフェアに配慮した取り組みの必要性が叫ばれるようになりました。今後は、消費者が企業のアニマルウェルフェアに対する姿勢を見る時代に突入します。

また生産者側が、アニマルウェルフェアに対応している食品メーカーを探すようになる可能性も否定できません。

ぜひアニマルウェルフェアについて理解し、商品開発の参考にしてみてください。

 

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