中食産業の市場動向に注目!テイクアウトやデリバリーの需要とニーズを考察

公開日:2021年9月6日 最終更新日:2023年5月29日

飲食店の料理や食品スーパー惣菜を自宅で食べる「中食」が急拡大しています。新型コロナウイルスの感染拡大にともなう外出自粛傾向で外食産業が厳しい状況に陥った一方、テイクアウト宅配サービスが台頭し、以前に比べると食品スーパー、コンビニでは惣菜や弁当が充実しました。中食は、今後も伸び続けるのでしょうか。中食の現状や今後の取り組みのポイントなどを紹介します。


 

中食とは内食、外食との違いと基礎知識 

中食(読み:なかしょく)とは家庭以外で調理された食品を購入して持ち帰る、あるいはデリバリーなど配達によって調理済みのものを家で食べる食事の形態のことを指します。
飲食店などで食事をする「外食」、家庭内で調理する「内食」に対して、その間に位置する形態す。
 

 

外食(がいしょく) 家庭外で調理された食品を家庭外で食事する形態 (飲食店などでの食事)

中食(なかしょく) 家庭外で調理された食品を家庭内で食事する形態 (テイクアウト・デリバリー)

内食(うちしょく) 家庭内で調理された食品を家庭内で食事する形態 (自宅での食事)

 

中食は、食品スーパーの惣菜、コンビニのお弁当、飲食店のテイクアウトメニューのほか、仕出しや出前、デリバリーで購入する食品などが含まれます。持ち帰ってすぐに食べられる半面、日持ちしないのが一般的。

日本の外食は、アジア諸国に比べると安価で手軽なメニューが少なく、比較的割高になりがちなことから、惣菜や弁当のように、あらかじめ調理された食品を店舗で購入して自宅で食べる形態の食事が増えてきた歴史があります。この他、共働き世帯や単身者の増加、核家族化といった社会的背景や、他方、保存技術や容器素材の進化などで、より美味しくより安全な食品の開発が進んだこと、さらに電子レンジなど簡単調理器具の普及なども、中食が拡大してきた理由と言えます。

 

忙しい女性の間で中食の需要増の傾向

コロナ禍以前より高まっていた中食需要。
背景として、女性の社会進出や子育てをする環境の変化などから、忙しい女性を中心に注目度が高まり、中食の需要が増えたといいます。
飲食店で済ませるにはお金がかかるため、なるべく自炊したいという人は多いのですが、仕事に育児や子育てとなれば、料理をする時間も惜しく、ましてや食材を買う手間も省きたい。そこで、出来合いのものを「買って食べる」というスタイルが積極的に選ばれるようになりました。中でも、好きな量だけ変えるグラム売りや西洋風の総菜を置く「デリ」(デリカテッセン)など、総菜のイメージも買い方も変化しました。
また、高齢者に配慮された宅食など、ニーズに合わせた商品が充実してきました。

コロナ禍で変わる中食の位置づけ

スーパーやコンビニエンスストア等での総菜・弁当以外に、プロが作った食事を比較的安価に自宅で食べられる中食は、コロナ以前から高いポテンシャルがありました。その証拠に、中食産業は2010年頃より成長を続け、今や市場規模は10兆円を超えています。中食の中でも「惣菜」だけを見てみると、2020年の市場規模は前年比約5%減となりましたが、飲食店テイクアウトやデリバリーなどが急伸したことで中食全体でも大きな伸びとなっています。外食産業25兆円に比べるとまだ半分以下ですが、長引くコロナ禍を鑑みると、近い将来、逆転する可能性を秘めています。コロナ禍で飲食店の利用が制限されたことで、中食のポテンシャルに脚光が浴びたと言えます。中食が伸びた具体的に理由は以下の通りです。

 

・緊急事態宣言等で飲食店の営業時間が短縮
 テイクアウト宅配のニーズと需要拡大

・テレワーク人口が急増しランチ需要が低下
 コンビニやデリバリー利用者が増加

・非接触や時短のニーズが高まる
 テイクアウト等の手軽さが見直される

・腕のある料理人が中食へ移籍
 従来の中食メニューの品質が向上

 

飲食店の利用が制限されたことで、当初は消去法で中食や自炊(内食)が増えていきましたが、それまで中食の利用経験が少なかった人々が、実際にテイクアウトやデリバリーを利用してみたところ、手軽さや美味しさにハマったというケースも多いようです。税率が店内飲食(10%)より持ち帰り(8%)の方が低いことも、中食利用を後押しした要因の一つかもしれません。

 

中食(テイクアウト・デリバリー)のコロナ後の需要とニーズ

中食を経験した人が、その魅力に気づき、コロナ後でもテイクアウトやデリバリーを利用したいと考えている人は増加傾向にあります。実際に民間会社のWeb調査によると、今後テイクアウト・デリバリーを利用したいですか?」との質問に対して、テイクアウト96、デリバリーは93「利用したい」と回答。このように中食産業が社会に定着していくことが予測される中、では、提供する側である食品スーパー飲食店等が取るべき戦略や注意すべきポイントとはどんなことでしょうか。

 

テイクアウトのニーズにあわせたバリエーションの充実

惣菜を専門とする民間コンサルティング会社が行った、コロナ禍における自炊メニュー宅配メニューランキング調査によると、自炊メニューの上位は「1位:カレー」「2位:チャーハン」「3:パスタ」、宅配メニューの上位は「1位:ピザ」「2位:食料品」「3:お寿司」でした(下記表)。今後中食戦略では、こうした消費者の嗜好に基づいた商品開発が求められます。例えば、自炊メニューの中でも、上位に加え「餃子」「お好み焼き」「たこ焼」は中食メニューとして品ぞろえするのがおススメ。また、自炊メニューにはランクインしていないが惣菜の定番である「唐揚げ」のような売れ筋商品は、容量のバリエーションを増やすなど、消費者の多様なニーズに対応するラインナップも必要です。

 

《コロナ禍に自宅でよく作られたメニュー》

1.カレー

2.チャーハン

3.パスタ

4.餃子

5.焼そば

6.お好み焼き

7.ラーメン

8.うどん

9.鍋

10.たこ焼き

 

《宅配サービスで購入するもの》

1.ピザ

2.食料品

3.寿司

4.飲料

5.衣類

6.お米

7.日用品

8.野菜

9.お弁当

10.冷凍食品

出典:成田惣菜研究所

 

健康に配慮した商品開発

弁当や惣菜などの中食メニューは、冷めても美味しく感じられるように、概ね味を濃くして調理されています。しかし、中食の利用が拡大すると、特に意識をしない限り、健康面についての不安も増大します。実際に“コロナ太り”といったワードも出るなど、外出自粛やテレワークの推進にともない日常生活で体を動かす機会は激減。これに歩調を合わせるように食事量が増えると、当然ながら健康を害することになることから、健康面に配慮した商品が求められるようになりました。
実際、カロリー計算がされたものやタンパク質や糖質を抑えたものに菜食主義やビーガン専用など、日頃から体を気遣う人をターゲットとした商品も開発され、一定層で人気となっています。食に対しての意識は、今後更に高まるとも言われています。
中食を提供する側としては、コロナ禍で増えた家族層の利用から、目的別でも選べる商品など、これまで重視していた内容量や味の満足度の他に、糖質や塩分、油分などを控えたヘルシー路線の開発といった商品の幅を広げることも重要です。
また、通常の調理では手間がかかるけれど健康に良いとされる魚料理や煮物などもニーズは高まるでしょう。

環境に配慮した容器や包装材

昨今、SDGsの観点から、脱プラスチックの機運がより高まっています。レジ袋やストローなど身近なものが注目されていますが、中食メニューで使われる容器等にも、耐水性や耐熱性、持ち運びやすさだけでなく、環境対応の波が押し寄せています。リサイクルPET素材や植物由来原料を配合した容器や、紙を原料にした非プラスチック容器など、環境トレー(下記「4」参照)が次々と登場しています。大手の中には、容器そのものを環境配慮素材へ積極的に切り替え、食品スーパー等を通じて回収し、リサイクルして再利用するところまで責任を持って取り組む容器メーカーも出てきました。料理の中身だけでなく今後は包装する容器や素材にも環境対応が加速しそうです。

 

注目の環境対応容器のご紹介

環境対応のトレーや容器は様々で、現在も進化をつづけています。その中から、惣菜テイクアウト、デリバリー等の用途で注目されている環境対応製品をいくつか紹介します。

FSC認証の紙トレー
https://www.maru-sin.co.jp/event/21_event_food_novisit/pdf/shizai/tray.pdf

 

・植物由来原料を25%配合したバイオ容器
https://www.maru-sin.co.jp/event/21_event_food_novisit/pdf/shizai/hips.pdf

 

・計量で嵩張らないハーフクリアパック
https://www.maru-sin.co.jp/event/21_event_food_novisit/pdf/shizai/half.pdf

 

・バイオマス原料30%以上使用しCos削減に貢献する計量化した環境対応気泡材
https://www.maru-sin.co.jp/event/21_event_food_novisit/pdf/shizai/nano.pdf

 

かつて中食は、内食(自炊)を楽にする手法と捉えられがちで、これまでテイクアウトやデリバリーに抵抗があった方も多いことでしょう。しかし、外出自粛等の影響があったとはいえ、中食が完全に市民権を得た今、中食産業を主戦場としたい食品スーパー飲食店、食品メーカーは、環境や機能性に配慮しつつ今後さらにメニューや容器を含めた商品開発を強めていくことが求められるでしょう。