食品スーパーにおける見切り販売のメリット・デメリットや取り組み事例

公開日:2024年5月20日 最終更新日:2024年5月8日

食品スーパーでは、売れ残った商品を割引し「見切り販売」することがあります。 
売上の底上げや食品ロス削減につながるため、多くの店舗で採用されている販売手法です。 
この記事では、見切り販売のメリットやデメリット、見切りを削減するコツをまとめて紹介します。 
効率的な見切り販売をしたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

 

見切り販売とは

見切り販売とは、売れ残った商品の価格を下げて販売する取り組みです。 

 

【見切り品になる商品】 

  • 賞味期限が近い 
  • 傷や劣化などがある 
  • 棚落ちになった 


食品スーパーやドラッグストアなどの小売店
では、廃棄になる前の商品を見切り販売しています。 
また34月、910月は棚替えがあるため、多くの棚落ち品が発生します。これらは見切り販売され、場合によっては
ネット販売に回されることも。売れ残った商品を売り切る手段として、多くの小売業で取り入れられています。

 

 

日本における食品ロスの現状

食品ロスとは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品です。 
特に日本の食品ロスは、世界の中でも多いといわれています。

令和3年度の食品ロス量は523万トン。
このうち食品関連事業者から発生する事業系食品ロス量は279万トンにも及びます。参照:農林水産省 
 国際連合で定められた「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標のひとつに、「小売・消費レベルにおける
世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させること」があります。

特に食品スーパーは人々の食生活に密着した存在です。よって食品スーパーが主体となり、食品ロス削減に
取り組んでいかなければなりません。 

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次に、食品スーパーが見切り販売を行うメリットとデメリットを紹介します。

 

食品スーパーの見切り販売のメリット

まずは見切り販売のメリットを紹介します。

食品ロスの削減になる

まだ食べられる食品を販売すれば、食品ロス削減につながります。
特に食品スーパーは、多くの食料品を扱っているため、食品ロスの量も膨大です。

 例えば、傷んだ野菜の食べられる部分を切り出して見切り販売すれば、購入につながります。
中には、見切り野菜を集めて「鍋セット」「野菜炒めセット」などに加工・販売している店舗もあります。
このように、見切り販売を工夫すれば、食品ロスの削減につながるはずです。

 

利益の確保につながる 

商品を捨てるより、価格を下げて販売した方が利益の確保につながります。
食品業界では、売れ残った商品をメーカー側が回収する商習慣があります。ありがたい仕組みですが、
場合によっては
小売店側が負担しなければなりません。  


【小売店側が負担するケース】 

  • 野菜や肉、魚など生鮮食品の劣化 
  • 調理済みのお惣菜 
  • その他、店舗内で加工したもの 

 
これら売れ残りを廃棄するのではなく、利益に変える工夫が必要です。見切り販売は、こういった廃棄コストを軽減し、
利益の確保につながります。

 

適切な見切りは集客につながる可能性がある

適切なタイミング、そして売り場を用意すれば、見切り販売で集客できます。
中には見切り販売を楽しみにしているお客様もいるため、販売戦略のひとつとして効果的です。
見切り販売で集客し、他の商品を宣伝すれば「ついでに買おう」と思ってもらえます。 

ただし集客目的での見切りは、独占禁止法により禁止されています。見切りをする場合は「賞味期限が近い」
「商品に傷がある」など、見切りをする理由が必要です。 
過度な見切りではなく、今ある見切り品をどのように販売するか考えてみてください。

 

食品スーパーの見切り販売のデメリット

続いて、見切り販売のデメリットを紹介します。 

見切りのタイミングが難しい

見切りのタイミングは難しく、少し間違うと機会損失につながります。 
例えば早めに見切りをして、あっという間に売り切れると、定価で売れるはずだった商品の売上が落ちます。
逆に見切りが遅いと廃棄になり、こちらも売上につながりません。 
見切りのタイミングは、その日の天候や気温、お客様の入り具合によって変わります。
そのため、その日の状況を見極めて判断する能力が問われるでしょう。 

 

ブランド価値を落としてしまう

見切り販売は、食品スーパーのブランド価値を落とす原因になります。
安さがウリのお店なら問題ありません。しかし、品質に自信のあるお店や高級ラインの食品を取り扱うお店だと、
お客様からの信頼を失う可能性があります。 ブランド品が値引きされない理由には、こういった背景があるのです。
そのため、自社の立ち位置はどこなのか、見極めてから見切り販売を実施しましょう。 

鮮度が落ちてリピートにつながらない可能性がある 

食品スーパーでは、鮮度の落ちた野菜や肉、魚などを見切り販売します。
しかし鮮度が落ちると、味や食感も悪くなります。すると、お客様の満足度が下がり、信頼を失ってしまうかも
しれません。 もちろんお客様も理解した上で購入していますが、あまりにも味が悪いと「見切り品以外の商品も
美味しくないのでは?」と思われます。 そのため見切る商品であっても、一定の品質を保持しておくことが大切です。

 

 

食品スーパーにおける見切り販売を削減するコツ

見切り販売を効率化すれば、食品ロス削減や売上の確保につながります。
しかし、それ以前に、見切りを出さない努力が大切です。見切りを出さずに売り切れば、売上を最大化できます。 

 そこで見切り商品を出さないコツやポイントを紹介します。

 

割引率を低くして早めに見切る

店舗で加工する食品は、製造時間を改善することで見切りを減らせます。

例えば、お惣菜売場ではお客様が減るタイミングで35割の大幅な割引を実施します。
しかし、最後に割引するなら見切り販売を早めた方が得策です。お客様の多い時間帯に1〜2割引きで販売すれば、
売上を確保しつつ廃棄率を下げられます。 
また「値引き」は、お客様にとって嬉しいイベントです。多くのお客様に見切り販売の存在を知ってもらい、
リピーター確保につなげましょう。

 

 

POS(販売実績)データで発注をコントロールする

POS(販売実績)データを活用すれば、見切りを減らせます。 

  • いつ品切れしたか 
  • 何個在庫になったか 
  • 値下げして何個売れ残ったか 

販売実績を確認し、今後の売上予測を立てたり発注数を決めたりすれば、おのずと見切りも減っていきます。 
特に天候や気温など、過去の状況と合わせて売上予測を立てると、より精度が高まるはずです。

 

 

前出しを徹底する

前出しとは、売場にある商品を前に出して整理する作業です。 
お客様が商品を手に取ると、目に見える商品数が減ります。
するとお客様の目にとまりにくく、機会損失につながります。 
だからこそ前出しを徹底して、手に取ってもらえるチャンスを増やすことが大切です。
また前出しをすると売場の見栄えが良くなり、店舗のイメージアップにもつながります。 

ぜひ前出しを徹底して、商品を手に取りやすい売場を目指しましょう。

 

 

コンビニのローソンは見切り販売推奨へ

コンビニエンスストア大手のローソンでは、加盟店に見切り販売を推奨しています。 
一般的にコンビニでは、ブランド価値の低下を避けるために、見切り販売は推奨されていませんでした。
しかしローソンでは、食品ロス削減や廃棄による店舗側の負担軽減のため、見切り販売に乗り出しました。
見切りのタイミングに関しては、加盟店が自由に判断できます。これにより店舗の負担が軽減。
中には売上確保に成功した店舗もあるようです。

 

 

食品ロス削減に取り組む食品スーパーの事例

最後に食品ロス削減に取り組む食品スーパーの事例を紹介します。

食品の端材を有効活用するヤオコー

■引用元:ヤオコーHP(https://www.yaoko-net.com/product/

埼玉県川越市に本社をおくヤオコーでは、関東地方を中心に「ヤオコー マーケットプレイス」を展開。
独自の環境方針を取り決め、地域社会との共生を目指しています。 

店舗では、パイナップルをカットフルーツとして販売する過程で出た可食部の端材をドライフルーツに加工
これにより廃棄や食品ロスが減り、売上の確保にもつながっています。
また一部の鶏肉をノントレー化し、産地パックで高鮮度を維持する取り組みも行っています。賞味期限が長くなり、
食品ロス削減につながっているようです。

 

青果売り場の果物をスムージーにするウジエスーパー

■引用元:U-cafe(@ucafe2021)・Instagram(https://www.instagram.com/ucafe2021/?hl=ja

宮城県登米市に本社をおき、30店舗以上を展開するウジエスーパー
同スーパーでは、2021年から食品ロス削減の一環として、店舗内のカフェでスムージーを販売しています。 

もともと大手スーパーと差別化を図るために、季節商品を豊富に取り扱う戦略を取っていました。
しかしその反面、食品ロスの増加が問題になっていたそうです。
そこで仕入れた商品をスムージーに加工し、販売することに。食品ロスを掲げて売り出した結果、
大きな集客効果を生み、売上アップにつながりました。

 

お客様に合わせた商品を用意するナイス

■引用元:ナイスHP(https://www.nices.co.jp/

秋田県を中心に食品スーパーを展開するナイスでは、食品ロスの解決に取り組んでいます。
特に、お客様に合わせた商品販売をしているのが特徴です。 

例えば、大家族のお客様と単身のお客様では、必要とする商品の量が異なります。そこで野菜を小さくカットしたり、
お肉のパックを大・中・小の3種類用意したりなど、ニーズに合わせて販売。
また食品ロスの出やすい季節商品に関しては、予約アプリを用意して、できるだけ売り切る努力をしています。
ナイスでは、この活動が評価され秋田県のSDGsパートナーにも認定されました。

 

フードバンクへ商品提供しているハローズ

■引用元:ハローズHP(https://www.halows.com/

中四国に食品スーパーを展開する「ハローズ」では、2015年からフードバンクへの寄付をしています。
従来の流れは、食品スーパーからフードバンク団体に寄付し、そこから支援団体に配布されるのが一般的でした。 

 しかしハローズでは、店舗で販売できない食品を集めて、そのまま支援団体に寄付しています。
これにより、早く傷んでしまう商品の提供が可能となりました。
廃棄率が大幅に改善するだけでなく、地域貢献にもつながっているそうです。

 

見切り品を出さない努力が大切

今回は食品スーパーにおける見切り販売について解説してきました。
適切な見切り販売は、食品ロス削減や売上の確保につながります。
そして見切り販売を行う前に、適切に売り切る戦略も必要です。 

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