オイル漬け食品(オイルフード)とは?メリットや事例など、商品開発のヒントをご紹介!

公開日:2023年1月16日 最終更新日:2022年12月28日

保存食品のひとつにオイル漬け(オイルフード)があります。オイル漬けとは、油に食材を漬け込んだ食品です。保存が効くだけでなく、食材の美味しさを引き出してくれる万能な加工方法として昔から重宝されています。

この記事では、オイル漬け食品の特徴やメリット・デメリット、代表的な食品メーカーを紹介します。オイル漬け食品の開発に興味のある食品メーカーの方は、ぜひ参考にしてみてください。

オイル漬け食品(オイルフード)とは

オイル漬けとは

オイル漬けとは、食材を植物油に浸して瓶詰めや缶詰にしたものです。植物油は、オリーブオイルや綿実油(めんじつゆ)など、安定性のある油が使用されています。

食材を塩漬けしたのち、蒸したり煮たりして瓶漬け、あるいは缶詰にします。その後、加熱殺菌を行うのが一般的です。味が馴染むまでに時間がかかるため、食べ頃は製造後から半年以降といわれています。

食材を油に漬けると、劣化や酸化を予防できるため、保存食として世界中で親しまれてきました。野菜や肉、魚介類などさまざまな食材を保存でき、ニンニクやハーブを漬けて、風味のある調味料に加工される場合もあります。

 

オイル漬け食品の歴史

日本でオイル漬けが広まったのは「缶詰」がきっかけです。1871年に松田雅典が長崎に在留中のフランス人レオン・ジュリーに、「イワシの油漬け缶詰」の作り方を教わりました。

1881年になると、北海道の開拓使缶詰工場で商業的な製造が開始されます。缶詰は保存が効くため日清戦争や日露戦争、第二次世界大戦の「兵隊食」として大活躍しました。

その他にも、1923年に起こった関東大震災では、被災者の救済措置として缶詰が配布されたといわれています。

ちなみに、日本でメジャーなツナ缶を製造したのは、静岡県にある清水食品(元モンマルシェ)です。ツナ缶の製造は、海外輸出や失業者救済に役立ったため事業は拡大。現在ではツナ缶の国内シェア99%以上を静岡県が担っています。

 

オイル漬け食品市場の今後

オイル漬け食品に参入を考えている方は、今後の市場規模が気になると思います。そこで、世界の缶詰市場を参考にして、データを紹介します。

現在の予想では、世界の缶詰食品市場は、2030年までに1,496億ドルに達するといわれています。(参照: NEWSCAST

その理由は新型コロナウイルスの流行です。おうち時間が増え、保存が効いて簡単に食べられる食品の需要が高まっています。缶詰はタンパク質を含む商品が多く、気軽に栄養摂取できるのがメリット。

また人間のライフスタイルは常に変化しています。働き方改革が叫ばれる日本ですが、多忙なライフスタイルを送る人は多く、すぐに調理できる食事の需要は一定数あります。

今後は、缶詰を含むオイル漬け食品の需要も高まっていくでしょう。

 

オイル漬け食品のメリット・デメリット

食品メーカーがオイル漬け食品に参入するメリットとデメリットを紹介します。

オイル漬け食品のメリット

オイル漬け食品のメリットを解説します。

■ 付加価値で高価に販売できる

オイル漬けは、地域の食材や特産品などに付加価値をつけて販売できます。例えば、牡蠣のオイル漬けやチーズのオイル漬けなどは、高級感があり価格を上げやすいのが特徴。

新潟県佐渡市のSadoKitchenでは、海産物をオリーブオイル漬けにして販売を行っています。地域の海産物という付加価値もあり、価格帯は100g・1,000円前後。単価も高めに設定されています。
特定の食材に付加価値をつけたい場合は、オイル漬けを検討してみてはいかがでしょうか。

 

■ 規格外の食品の有効活用で食品ロス削減

オイル漬けは、食品ロスの削減にもつながります。
日本の年間の食品ロスは522万トンにものぼります。これは世界中で飢餓に苦しむ人の食料支援量の1.2倍に相当する数です。(参照:消費者庁 食品ロスについて知る・学ぶ

食品メーカーでは、製造の段階で規格外の食品が多く出ます。その食品をオイル漬けにすることで、食品ロス削減につながります。
最近はSDGsに取り組む企業が注目されており、消費者が商品を購入する際の判断材料にもなってきています。食品ロスを削減することは、消費者のSDGsへの意識の高まりへの対応にもつながります。

 

■ 長期保存可能なので、保存食や非常食にも

オイル漬けは長期保存に適しているため、保存食や非常食として重宝されています。特に日本は、世界的にも自然災害の多い国です。そのため、保存食を常備する習慣が身に付いています。

オイル漬け食品を開発し、保存食として提案することで、消費者の災害対策のひとつとして購入につながるかもしれません。

 

オイル漬け食品のデメリット

オイル漬け食品のデメリットを紹介します。

■ カロリーが高い

オイル漬け食品は、油で漬けてあるためカロリーが高くなりがちです。実際に油漬けのツナ缶は、水煮よりも3倍のカロリーがあるといわれています。

ただしツナ缶の油には、DHAやEPAなどの栄養素が溶け込んでいるため、栄養摂取の面で大きなメリットがあるのも事実。また植物性の油には、必須脂肪酸であるリノール酸も含まれています。リノール酸は、人間の身体で生成されない栄養素なので、定期的な摂取が推奨されています。

過剰摂取はおすすめできませんが、食材のひとつとして上記のような食材を活用して、高カロリーとは異なる視点での提案としてみると良いかもしれません。

 

■ オイル漬けのための設備投資が必要

オイル漬けを製造するには設備投資が必要です。特に缶詰や瓶詰めの場合は、数百万円単位で費用がかかります。

ただし最近は、パウチのオイル漬けも主流になりつつあります。缶詰や瓶詰めよりもコストを抑えて製造できますので、ぜひご検討ください。

 

オイル漬け食品をつくっている食品メーカー

オイル漬けの代表的な食品メーカーをご紹介します。

シーチキンで有名な「はごろもフーズ」

■画像引用元:シーチキンLフレーク | シーチキン(油漬)ライトミート | シーチキン | 商品情報 | はごろもフーズ(https://www.hagoromofoods.co.jp/products/detail/?id=16)

 

ツナ缶といえば、はごろもフーズ「シーチキン」を想像する人も多いのではないでしょうか。
はごろもフーズは、ツナ缶のシェア99%を誇る静岡県にある食品メーカー。ちなみに、シーチキンブランドは、日本国内で50%以上のシェアを占めています。

シーチキンは、マグロやカツオなどの魚を、油漬や水煮などにしたものです。賞味期限は製造から3年ほどで、保存食としても重宝されています。

いまではツナ缶は、様々なレシピアレンジも楽しめる食品として、日本の食卓に欠かせない食品となっています。商品の開発だけではなく、販促企画やレシピ提案など行ったことで、このような食卓の定番となる缶詰商品となったのではないでしょうか。

 

サバのオリーブオイル漬けを製造する「TOMINAGA」

■画像引用元:取扱商品 | 富永貿易株式会社 | 富永貿易株式会社(https://www.tominaga.co.jp/products/detail.php?id=381)

 

TOMINAGAは、食品や飲料の企画開発から製造、販売まで一括して行う食品メーカーです。

中でもサバのオリーブオイル漬けは、主力商品として活躍しています。脂の乗った国産サバを、独自の下処理方法で丁寧に加工。高圧釜でエクストラバージンオリーブオイルを使用し煮込まれています。
オリーブオイルは、ガルシア社のエクストラバージンオリーブオイル。24時間以内に搾油されたものだけを使用しています。

骨まで柔らかく煮込んであるため、子供からお年寄りまで安心して食べられる缶詰です。幅広い年齢層に受け入れられる缶詰は、ロングセラーになりやすい傾向があります。

缶つまシリーズが大ヒットした「国分」

国分は300年以上の歴史を持つ大手食品卸売業・食品メーカーです。2010年から酒のつまみに特化した「K&K缶つま」シリーズを発売。1個500円前後と高価格帯ながら、大ヒットを記録している、おつまみ缶詰のパイオニア的存在です。

種類の豊富さもさることながら、食材へのこだわりは他の缶詰メーカーと一線を画します。
「北海道産 子持ちししゃも」「日本海獲り ほたるいかの沖漬風」「鹿児島県産 赤鶏さつま炭火焼」など、食材の産地までこだわることで、消費者の支持を獲得しました。

このように缶詰市場での展開では、これまでにない地域限定食材や高級食材を使うなど、他社商品と差別化する商品企画の工夫が必要です。

秋田発のオイル漬け専門店「Nortecarta」

■画像引用元:Norte Carta(ノルテカルタ)(https://www.nortecarta.com/)

 

秋田県八峰町にあるオイル漬け専門店「Nortecarta」。世界遺産「白神山地」と日本海の町として知られています。

同社では、秋田の食材をふんだんに使用したオイル漬けを製造・販売。いぶりがっこやチーズ、あわびなど、地域の特産品を中心に商品構成を立てているのが特徴です。

中でも「いぶりがっことチーズのオイル漬け」は、「マツコの知らない世界」で紹介され、一気に人気商品となりました。

いぶりがっことチーズのオイル漬け

■画像引用元:Norte Carta(ノルテカルタ)(https://www.nortecarta.com/)

秋田が誇る「いぶりがっこ」を、定番の組み合わせであるチーズとともにオイル漬けにしました。
秋田の魚醤「しょっつる」と塩麹の旨味を加え、他にはない味わいに仕上げました。(引用:オイル漬け専門店「Nortecarta」

このように、他社にはない自社独自の良い商品を開発することで、メディアに取り上げられるチャンスが広がります。

 

牡蠣のオイル漬けなど広島名産品を製造する「ヤマトフーズ」


■画像引用元:ヤマトフーズ(https://onlineshop.setouchi-lemon.jp/view/item/000000000033?category_page_id=ct11)

広島名産品を製造するヤマトフーズ。広島県産の牡蠣を瀬戸内産レモン塩で味付けし、オリーブオイル漬けにした「レモ缶ひろしま牡蠣のオリーブオイル漬け」が人気商品です。

自社開発した「藻塩レモン」は、牡蠣の美味しさを引き立て、ほどよく爽やかさも感じられます。

そのままでも美味しくいただけますが、鍋で煮詰めてアヒージョにしたり、パスタの具材にしたりなどアレンジも無限大です。アレンジを前提に商品開発し、それをPRすることで、消費者も購入しやすくなるでしょう。

 

柿の種をオイル漬けに「阿部幸製菓」


■画像引用元:阿部幸製菓(https://www.abeko.co.jp/?pid=153953025)

「阿部幸製菓」は、米菓子を中心に製造・販売する食品メーカーです。中でも「柿の種のオイル漬け」は人気商品となり、ヒルナンデスやシューイチなどの全国メディアでも取り上げられました。

柿の種をニンニクやラー油などと一緒に漬け込み、旨味たっぷりの商品に仕上がっています。そのまま食べるもよし、ご飯にのせるもよし、好みに合わせて楽しめる設計です。

お菓子をオイル漬けにする斬新なアイデアは、参考になる部分があります。自社でもオイル漬けにできそうな商品はないか、チェックしてみてはいかがでしょうか。

 

オイル漬け食品で新しい販路を開拓しよう

オイル漬け(オイルフード)の需要は高まり、参入に前向きな企業も増えています。しかし、どんな商品を開発すればいいのか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

ショクビズを運営する株式会社丸信では、商品企画のサポートやOEM商品を探せる「食品開発OEM.jp」を運営しています。

これまでの経験や実績をもとに、食品メーカーや小売店向けの相談やサポートも承っておりますので、ぜひご活用ください。

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