届出5000件突破で安定成長!今さら聞けない「機能性表示食品」とは

公開日:2022年11月30日

毎日の生活の中で簡単に摂取でき、その効果が期待できると話題の「機能性表示食品」
特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品とは何がどう違うのでしょうか。
表示方法や違いなども併せて、「機能性表示食品」の表示をするために必要なことなどを分かりやすくまとめました。

「機能性表示食品」の基礎知識

・特定保健用食品(トクホ) 
・栄養機能食品 
機能性表示食品

この3つの総称を「保健機能食品」と言います。国が定めた安全性や有効性の基準に従っているもので、『商品に機能性の表示をしてもいいですよ』と、国から許可や承認を得られた食品のことを指します。これらは、医薬品ではないので、疾病の治療や予防のために摂取するものではありません。また、栄養補助食品や健康補助食品といった、いわゆる健康食品については、「保健機能食品」に該当しない、「一般食品」とされています。これは、国の基準や規定に沿った科学的根拠等の提出や申請等の手続きがされていないことが理由です。

「機能性表示食品」とは

 

安全性の確保と科学的根拠のある機能性を表示した食品のことです。
事業者は、販売前に食品の安全性と機能性の「根拠」に関する情報などを消費者庁長官に届け出ることが必要です。
「どのようなことに効果が望めるのか」という、機能性を分かりやすく表示した食品が「機能性表示食品」とされています。そのため、消費者が誤認することなく食品を選べるように、適正な表示を行う必要があります。

・消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/

「機能性表示食品」の特徴やメリット 

特徴

・病気にかかっていない人を対象にしたもので、年齢に限らずその効果が期待できるもの。※授乳婦を除く
・表示できるのは生鮮食品を含むすべての食品。※一部除く
・安全性、機能性の根拠に関する情報、また健康被害の情報収集の体制などの届け出がされている。
・特定保健用食品とは違い、国が安全性と機能性の審査を行っていない。
・「保険機能食品」は、大きく3分類されている。
 ①特定保健用食品(トクホ)
 ②栄養機能食品 
 ③機能性表示食品

メリット

・栄養補助食品、健康補助食品、栄養調整食品といった「一般食品」と差別化が図れる
・「一般食品」は、機能性の表示はできない。
・「保険機能食品」は、機能性の表示ができる。
・健康の維持や増進が期待できるという化学的根拠に基づいた機能性(消費者庁長官に届け出た内容)の表示が定められている(根拠ある表示でPRできる)。
・消費者庁のウェブサイトにアクセスし、商品に記載された届出番号を入力することで安全性や機能性の根拠など情報が閲覧できるため、消費者への信頼性が高い。

「機能性表示食品」の届出情報検索 (caa.go.jp)

「機能性表示食品」を申請するには

以下の6項目をすべて満たしたうえで、販売を予定する60日前までに、消費者庁へ科学的根拠を含めた必要事項等の届け出が必要です。

①「機能性表示食品」の対象食品となるかを判断する
②安全性の根拠を明確にする
③生産・製造及び品質の管理体制を整える
④健康被害の情報収集体制を整える
⑤機能性の根拠を明確にする
⑥適正な表示を行う

トクホや医薬品との違い

商品に分かりやすくマークが記載されているため認知度が高い「特定保健用食品」(トクホ)や、医薬品との違いをカテゴリー別に説明します。

トクホとは

正式名称は、特定保健用食品。
個人の健康を保つことを目的に、食事の習慣や運動習慣を含めた生活習慣を改善し、健康を維持・増進するための手助けとなる食品のこと。特定保健用食品として販売するには、食品ごとに食品の有効性や安全性について国の審査を受け、許可を得なければなりません。
また、トクホ食品を摂取しているからとはいえ、極端な食習慣に対するマイナスを打ち消す効果はありません。生活習慣を改善すれば保健の用途として記載している効果を実感できるというものです。

・特定保健用食品とは(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/food_labeling_cms206_200602_01.pdf

・特保(特定保健用食品)とは?(厚労省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-01-001.html

トクホとの違い

大きな違いは、国の審査と消費者庁の許可マークの有無です。食品を摂取して得られる効果の比ではないため、どちらが優れているのか、効果があるのかといった差ではありません。
「トクホ」は、商品に分かりやすくマークが表示されており、導入されて30年が経つため消費者の認知度も高いことから、手に取るきっかけになりやすいというところがあります。
「機能性表示食品」が施行されたのは2015年4月。「お腹の調子を整えます」や「ストレスの多い現代人に」などのキャッチフレーズで、多くの「機能性表示食品」が販売されているので、テレビコマーシャルなどで見聞きする頻度も高まり浸透してきました。

・トクホ … 許可申請が必要(国(厚労省)の審査を受ける)

機能性表示食品 … 届け出が必要(消費者庁長官に必要事項を提出する)

栄養機能食品とは

1日に必要な栄養成分(ビタミン、ミネラルなど)が不足しがちな場合に補給することが目的の食品のこと。
国による個別の審査の必要はなく、既に科学的根拠が確認された栄養成分を一定の基準量含んでいれば、栄養成分の機能を表示することができるとなっています。

栄養機能食品との違い 

・栄養機能食品は、特定の栄養成分の補給のために利用される食品。特定の成分について栄養成分の機能を表示できるもの。

機能性表示食品は、安全性の確保と科学的根拠などの必要事項を消費者庁に届け出た食品。 健康の維持や増進に役立つ機能性の表示ができるもの。

医薬品とは

主に病気の診断や治療、予防に用いる薬のこと。または薬機法で、開発・生産・使用について規制されている薬を指します。医薬品には、医療用医薬品と一般用医薬品があります。

・医療用医薬品と一般用医薬品の比較について(厚労省HP)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/09/s0906-6c.html

医薬品との違い

「医薬品」は、疾病に対しての回復・改善といった治療が目的です「機能性表示食品」を含めた「保健機能食品」は、健康増進などが目的で、疾病に対して効果を期待するものではありません。

「機能性表示食品」の市場動向

新型コロナウイルス感染症の流行の影響で、外出や体を動かす機会が減り、運動不足が気になったり、免疫力を気にする消費者が増えたことから健康志向がより高まり、健康食品市場は拡大を続けています。
ここではデータ等を参考に、市場の動きをみていきましょう。

「機能性表示食品」の市場規模の推移

新型コロナの影響で、健康志向の高まりと比例し、市場規模も拡大しています。
マーケティング会社の株式会社 富士経済(東京都中央区、清口正夫社長)が、2022年4月12日に発表したプレスリリース機能性表示食品」、特定保健用食品などの国内市場を調査」によると、2015年に制度が開始された直後の2016年には1,000億円に到達しています。2020年は、新型コロナウイルス感染症の流行から、「コロナ太り」を気にする消費者が増え、脂肪対策商品を中心に需要が増加しています。

「機能性表示食品」の2021年市場規模は4,418億円の見込みで、前年比は約24%の増加。最も伸びたのが、脂肪対策商品。今後は、免疫機能やストレス緩和、睡眠サポートも大きく伸びる見通しで、現在、新商品も多く出されています。

株式会社 富士経済プレスリリース
https://www.fuji-keizai.co.jp/file.html?dir=press&file=22037.pdf&nocache

受理された関与成分の傾向

2015年から施行された「機能性表示食品」の届出数累計5000件(2021年)を対象に調査を行った、株式会社薬事法ドットコムの「関与成分TOP10」資料によれば、届出のあった関与成分の種類は249種類(分類方法は実施会社によるもの)。
最も多かったのは、ストレス軽減やリラックス効果が期待できるアミノ酸の一種の「GABA」が群を抜いての1位。次いで、食後の血糖値や中性脂肪の上昇を抑制する効果が期待できる「難消化性デキストリン」となっている。また、届出が増える中で、新たな成分の届け出はあまり見られないという。

関与成分件数効果
1 GABA620ストレス軽減やリラックス
2 難消化性デキストリン414食後の血糖値や中性脂肪の上昇を抑制する
3 DHA  267認知機能の改善、免疫反応の調整、脂肪燃焼の促進など多種
4 EPA 243血管・血液の健康維持
5 ルテイン219目の酸化防止、抗酸化作用
6 乳酸菌204整腸作用(悪玉菌の繁殖の抑制)
7 ポリメトキシフラボン161BMI(値24~30未満)が高い人の内臓脂肪及び皮下脂肪の減少
8 イチョウ葉テルペンラクトン160脳の血液循環不全や末梢血管循環不全の改善、認知機能
9 イチョウ葉フラボノイド配糖体160脳の血液循環不全や末梢血管循環不全の改善、認知機能
10 ビフィズス菌145整腸作用(腸内フローラの改善による免疫力向上)

※この項目内容は「薬事法マーケティングの教科書調査」を引用しています。
https://yakujihou-marketing.net/archives/3588

注目度が高いヘルスクレーム 

・「体脂肪を減らす」「体重・体脂肪を減らす」
生活習慣病への効果も期待できることから、特保(特定保健用食品)でも多くの人気商品も生み出された人気のヘルスクレームで、市場はさらに活性化しているという。

・「健康な人の免疫機能の維持をサポート」「免疫アシスト」
新型コロナ感染症の感染拡大以降、個人の感染予防や体調管理に関心が高まったことで、注目度が高まった。

・「ストレス緩和」「睡眠改善」
新型コロナ感染症に伴う外出の制限や在宅ワークなど環境の変化や生活リズムの乱れなどからくる様々なストレスの増加で需要が高まった。

※ヘルスクレームとは有効性・機能性に関わる表示のこと

引用・参考:株式会社 富士経済
file.html (fuji-keizai.co.jp)

最近初めて受理された関与成分やヘルスクレーム

起床時の疲労感を軽減する効果があるとして、2022年7月に新しく認められたヘルスクレームは「起床時の疲労感軽減」。関与成分は、セラクルミン。
ウコンに多く含まれる成分で、インドのアーユルヴェーダや中国の漢方など、東洋医学においてその薬効が注目されていたもの。抗炎症作用、抗酸化作用などもある成分。

特徴的な「機能性表示食品」の事例

従来のサプリメントなどで不足しがちな栄養を補うといった形から、「せっかくだから効果があるものを」といった、普段の食事にプラスワンの価値を付加した商品が増え、人気も比例しています。

大手メーカーの商品

株式会社伊藤園の人気ブランド「お~いお茶」シリーズでは、体脂肪(内臓脂肪と皮下脂肪)を減らす機能が報告されているペットボトルの「お~いお茶 濃い茶」が続伸。茶葉やティーバッグ商品も展開しています。
株式会社ヤクルト本社では、従来からの腸内環境の改善といった効果に、ストレスを和らげ、睡眠の質を高める効果が期待できる「Yakult1000」を、2019年に関東地区限定で発売。その後、全国販売を展開。ネット上でも大きな話題となり、市場は大幅に増えました。

異業種企業の商品

下着メーカーの株式会社グンゼは、1985年に国内で初めて「紅麹」の清浄培養に成功。古くから日本酒に使われてきたという発酵食品の原料となる麹菌で、同素材の販売を開始。その後、健康食品事業として味噌やパンなどの食品やサプリメントなどの販売を拡充。2008年には、「紅麹」を使用したトクホ(特定保健用食品)の研究や開発、事業化、及び発酵技術を使用した新商品の研究・開発などを目的に、株式会社東洋新薬と事業を提携しました。
2016年5月に、小林製薬株式会社に研究・販売事業を譲渡しています。

▼グンゼ「紅麹」
https://www.kurenaicorp.jp/pdf/benikouji.pdf

東洋新薬 機能性素材“紅麹”で、グンゼ株式会社と事業提携  エビデンス素材のさらなる拡充 – 株式会社 東洋新薬 (toyoshinyaku.co.jp)

地方企業・地域活性化の商品

地域活性化の一助にもなることから、地元の素材を活かした商品開発への注目度も高まっているのが地元の特産品。

野菜や魚など、生鮮食品といった「機能性表示食品」も増えており生産者側には新たな販路拡大にもなっています。「機能性表示食品」という付加価値を付けることで、新たな商品として魅力も増し、地域ブランドとして知名度もあがります。美味しさにプラスされる付加価値は、1つだけではないようです。

■福岡県八女市・・・毎日健康玉露習慣 
・ヘルスクレーム:高めの血圧を下げる  
・関与成分:GABA≫
良質な日本茶の中でも最高級の玉露の生産地として名高い、八女の玉露を使った商品。製造元が地元でも有名な老舗製茶園というところも納得して購入できる。

▼九州お取り寄せ本舗
https://www.otoriyose.site/shopdetail/000000000856/

特徴的な商品

■シャケを使った東北地方の郷土料理、『氷頭なます』がヒント
商品名;「AO+PG TABLET」(株式会社マキュレ)
・ヘルスクレーム:関節軟骨の保護に役立ち、膝関節の可動性をサポートなど
・関与成分:サケ鼻軟骨由来プロテオグリカン
URL https://www.aomori-pg.org/item/item-2000/

■米どころ秋田県ならではの玄米
商品名;「玄米ごはん」(株式会社大潟村あきたこまち生産者協会)
・ヘルスクレーム:食後の血中中性脂肪が高めになる人の血中中性脂肪値の上昇をおだやかにする
・関与成分:イソマルトデキストリン(食物繊維)
URL https://akitakomachi.co.jp/pro/

■みかんの産地静岡県特産のみかん
商品名:三ヶ日みかん
・ヘルスクレーム:骨代謝のはたらきを助けることにより、骨の健康に役立つ
・関与成分:β‐クリプトキサンチン
URL https://mikkabi.ja-shizuoka.or.jp/mikan/health/

■鮮魚における「機能性表示食品」について共同で開発されたかんぱちの刺身
商品名:生鮮プレミアム 活〆かんぱち (マルハニチロ株式会社、株式会社ベイシア)
・ヘルスクレーム:中性脂肪を下げる効果がある
・関与成分: DHA・EPA
URL  https://www.maruha-nichiro.co.jp/corporate/news_center/news_topics/2021/04/05.html

今後の「機能性表示食品」市場の展望

コロナ禍をきっかけに、食に対しての意識も大きく変わってきました。日常の食事にも、「せっかく食べる(飲む)のだから」という意識が働き、より体に良いものを意識的に選ぶ傾向があるようです。
株式会社矢野経済研究所の健康食品市場に関する調査(2022年)によると、生鮮食品の数は増加傾向にあります。野菜や果物など馴染みのある生鮮食品は、日常的にも取り入れやすいことから、生産者にとっては強みとなる機会かもしれません。

資料参考:株式会社矢野経済研究所
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2938

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