食品ロスを減らし販売機会を増やす。賞味期限を延長する3つの方法

公開日:2022年10月24日 最終更新日:2022年10月27日

世界的な問題となっている「食品ロス」は、食品業界において最も解決すべき大きな課題です。本来「食べられるのに捨てられてしまう」食品ロスの量は、2020年度推計値で年間522万トン。日本人1人当たりに換算すると、1年で約41㎏。1日に茶碗1杯分が廃棄されている計算になります。この統計結果は、推計を開始した平成24年度以降で最少です。「豊食」が「飽食」となり、資源を無駄にするうえ、廃棄にかかるコストや環境への影響など、問題は多岐にわたります。

こうした中、SDGsや食品ロス削減の観点から政府も推進しているのが賞味期限の延長。食品を提供する事業者には、食品の賞味期限を既存のものより長くすることで、廃棄量を減らすことが求められていますが、賞味期限の延長は販売期間を延ばすことにもつながります。では、どのような食品が延長可能で、どのようにすれば賞味期限を延ばせるのか。この記事では賞味期限を延長する3つの方法を紹介します。

 

賞味期限と消費期限の違い 

基礎知識として、賞味期限と消費期限の違いについておさらいします。ポイントは食品の劣化(傷み)の進み具合です。 いずれも「袋や容器が未開封で、表示欄に書かれている保存方法を守り、保存ができている場合」に該当する期限です。 

賞味期限とは 

食品の風味や品質を保ち、おいしく食べることができる期限。 商品に印字されている「年月日」までに、「品質が変わらずにおいしく食べられる」期限のこと。主に、スナック菓子、カップ麺、缶詰、ペットボトル飲料などで、「消費期限」表示と比べ、傷みにくい食品で、表示期限を超えた場合でも、これらの品質が保持されていることがあるものを指します。 また、製造から3ヶ月以上、品質が保たれる商品については、「年月」で表示されることもあります。 

消費期限とは 

期限を過ぎたら食べない方が良い、食品の安全を保障する期限。 商品に印字されている「年月日」までに、「安全に食べられる」期限のこと。これは、主に、弁当や、サンドイッチ、生めん、ケーキなど、傷みやすい食品に表示されています。 

※消費期限と賞味期限の違い農林水産省 
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/featured/abc2.html 

 

賞味期限を延長する3つの方法 

【方法1】賞味期限の「年月」表示への変更 

農林水産省が推奨している賞味期限の「年月」表示変更。これは、製造から賞味期限までの期間が「3ヶ月を超えるもの」については「年月表記」でも構わないとされています。国が定める規定では、賞味期限が3ヶ月以内の食品については、従来通り「年月日表示」をする必要があります。この変更に伴い、「日」が切り捨てられ、「表示月の末日」までが実際の賞味期限となったことを受け、多くの企業では「年月」表示変更にあわせて賞味期限自体を延長させる動きが活発化。1日単位で管理しなければならなかった倉庫内の商品管理等の手間やコストの削減にもつながり、食品ロス削減に向けた取り組みの貢献にもなります。 

※賞味期限の年月表示化 
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/161227_3-15.pdf 

【方法2】包装資材や容器の見直しで賞味期限を延長 

ここ数年で、さまざまな食品メーカーが、「食品ロス」を減らすことを目的とした「賞味期限を延ばす」取り組みをしています。キユーピー株式会社では、パッケージ容器の改善により、主力商品である「キユーピーマヨネーズ」の一部容量と、「」の賞味期限を従来の7ヶ月より12ヶ月延長しました。では、具体的にどのような方法で延長ができるのでしょうか。 

農林水産省食料産業局「賞味期限の延長」各社の事例まとめ 

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/youki/attach/pdf/index-69.pdf 

  • 素材の見直し・・・現行の素材は適しているか。耐久性に加え、透過性、バリア性を考えた素材を使っているか見直してみる。 
  • 構造を変える・・・化粧箱や外装パッケージなどの接着部分の変更や包装・容器の形を見直すことで、配送時の耐圧効果につながることも。 
  • 密閉性を高める・・・容器に無駄な隙間はないか。また、食用ガス包装など視野を広げてみる。 
  • 梱包資材や方法を考える・・・梱包のコスト削減ばかりにとらわれ、梱包材の強度を落としてしまうと、配送時に中身が潰れ商品破損の原因に。強度が担保される資材を使うことも大事です。 

【方法3】科学的根拠の食品検査で劇的な延長も

賞味期限を設定する方法の一つが、科学的な食品検査です。試験項目としては「理化学試験」「微生物試験」「官能評価」の3つがあり、エビデンスを基にした試験を行うことにより正しい賞味期限を設定することができます。

しかし、必ずしもこの試験を全て行う必要はなく、特性が似ている食品に関しては食品の特性を十分に考慮すれば、類似商品の試験や検査の結果を参考にして消賞味期限を設定することができます。試験を行わずに設定している食品も多いことから、食品検査を受けることで、場合によっては賞味期限を劇的に伸ばすことも可能になります。

※主な食品検査サービス
https://marushin-eisei.com/inspection/

 

SDGsを意識した資源を無駄にしないものづくりを

日本の食品業界は「なるべく新鮮な商品を手にしたい」という消費者の要求に応えようと、海外よりも賞味期限を短めに設定する傾向があるようです。作り手にとって、「おいしい」と喜んでもらえることが最もうれしい評価に違いありません。しかし、日本では古くから、物を大切にする「もったいない文化」も根付いている国でもあります。資源を無駄にすることなく、消費者が安全で安心できるものを提供する。そんな取り組みこそが、SDGsを意識した現代社会に求められる「ものづくり」かもしれません。

(参考)

・食品期限表示の設定のためのガイドライン 
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/expiration_date/pdf/syokuhin23.pdf 

・農林水産省 食品の期限設定の考え方と実例について 
https://www.maff.go.jp/j/study/syoku_loss/02/pdf/ref_data2.pdf 

 

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