コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。
第6回となる今回も「コロナ前後で変わるお客様の消費動向」についてのコラムです。
さて、今月は「コロナによって変わったお客様の消費動向」として、「商品の量目」について解説してみましょう。
コロナ禍前であれば、スーパーなどへの買い物の際には、週末にまとめて家族分を購入することは当たり前に行われており、未だもってその傾向がないわけではありませんが、それでもコンビニなどでこの1年有余が経過する中、最も大きく販売を伸ばした商材があります。それは、「冷凍食品」です。
これまでのコンビニでの冷凍食品といえば、スーパーで販売されているものの焼き直しが中心であり、量目的にも商品のサイズ的にも、スーパーの商品と同等レベルでした。しかし、コロナ禍の少し前からではありますが、量目も価格も「個食タイプ」の商品が多く陳列され、それがこのコロナ禍で一気に定着したといえると思います。言わば、老若男女を問わず、コンビニの「個食サイズ冷凍食品」に人気が集まったという状況です。
これは、これまでの商品とは大きく異なり、徹底して「個食」にこだわった商品であり、利便性とともに、味や品質的にも十分に世間に受け入れられたと考えることができます。この商材群は、チェーン本部の名称では、「おかづまみ」と呼ばれ、おかずにもおつまみにも利用できる商材であり、1食当たりの価格も300円以下が中心となっており、商品のサイズ的には、陳列するかごの中に合計で6フェイス(3フェイス×2段)入るサイズに設計がなされている商材です。
「家呑み」が増加し、オンライン飲み会が一般化する状況においては、「おつまみ披露」が話題作りに一役買っていますが、それらのニーズ(簡単につまみにできる。オンラインで映えるなど)に上手くはまった商材であるといえるでしょう。オンライン飲み会で披露されたものが、翌日以降、他の人もコンビニで購入するケースが増加し、いつしか自宅の冷蔵庫(冷凍庫)の「常備菜」として活用されていることも見受けられるようになりました。
これは冷凍食品だけの話ではありません。チルド系惣菜の中でも、スタンディングパウチパックで販売されている「ポテトサラダ」や「肉じゃが」など小さいパックに入っている惣菜をご存じの方も多いと思いますが、これらの商品は、実は一部のスーパーでも販売がなされており、急速に販売を伸ばしている状況です。
この商品は、そもそもコンビニでは、ある意味では「廃棄削減」を目的に長い販売鮮度(商品によって2~3週間程度の販売期限があり、賞味期限は1か月程度が設定されている商品が多い)で販売できるように商品設計がなされている商材ですが「個食化」「世帯人口の減少」「高齢化の進行」など、社会の状況が大きく変化する中での「サイズダウン商品」(量目を削減した商品)として、「食べきりサイズ」の定着化がなされた商品です。
このように見ていくと、世の中の商品の「ダウンサイジング化」(量目の適正化)という流れは、止まらないのではないかと思われます。まだ「増量セール」「増量キャンペーン」に活路を見出そうとしているメーカーさんがいらっしゃるのであれば、そろそろ量目の適正化などを検討してみる時期ではないでしょうか。
次回は、「生鮮食品における量目の適正化」について解説したいと思います。
(次の配信は10月20日頃の予定です。)
▼前回のコラムはこちらからご覧いただけます
【連載第5回】コロナ前後で変わるお客様の消費動向④
<プロフィール>
信田 洋二
1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。
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