【連載第12回】コロナ前後で変わるお客様の消費動向⑪

公開日:2022年3月29日

コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。

第12回も「小売りに於ける部門間の壁」についてのコラムです。


今回は、『部門間の壁』を破る為の様々な事例について、もう少し詳しく解説してみたいと思います。

『部門間の壁』については、これまでも解説をしてきましたが、実はまだまだ考えなければならない事象が多々生じています。特に、グロサリー売場と各生鮮売場との間に生じている「部門間の壁」は、店舗全体の売り上げ増加を図るためには、避けては通れない課題であるとの認識を持っていただきたいと思います。

例えば、ドレッシングやマヨネーズは、どこに配置されているでしょうか?野菜売り場から遥か遠く、奥まった場所などでの展開はなされていないでしょうか?ワサビやショウガのチューブに入った製品は、魚売り場との距離感は如何ほどあるでしょうか?焼き肉のたれ、すき焼きのたれ、ハンバーグの素、餃子の素やたれなどは、精肉の売場との距離感は如何でしょうか?

これらは、非常に相互の関連性が高い商材であり、刺身を買えば、そのあとに必要なものは、一般的には、醤油(あるいはポン酢)、ワサビ、ショウガ、もみじおろし・・・、という事になりますし、焼き肉と言えば、タレをつけて食べるのが一般的な食べ方とされています。すき焼きは、地区によっては割り下(すき焼きのたれ)を使うところもありますが、関西方面などでは、醤油と砂糖で味付けする、と言うのが一般的な食べ方とされています。

それらの各種の生鮮商材を使って食卓などに供される料理のメニューは、生鮮の商品だけでは完成はしません。店舗にある様々な分類の商材を組み合わせて初めて『料理』として供されることになります。

その食材の多くを支える部門がグロサリー(一般加工食品)であり、グロサリー売場の商品は、その全てが部門と部門をつなぎ(連携させ)、円滑に料理にまで昇華させる結合剤なのです。そのグロサリーの売場が、それぞれの生鮮品とは関係のない場所、あるいは遠く離れた場所にあっては、恐らくは生鮮品もグロサリーもその両面から考えても売り上げが上がることはありません。料理をする順番に応じて、最適な場所で最適な配置で、最適な流れで料理ができるような配置を考えて対応することが必要となります。

例えば、先述しました「ドレッシングやマヨネーズ」と『野菜売り場』との関係性で言えば、端的に言えば、それぞれの親和性から考えれば、近接化、隣接化して陳列をさせるべき商品群の代表です。しかしながら、野菜は単にサラダ様の素材だけではありません。料理の土台(基礎)と言える商材群です。野菜を料理する際に使う調味料などは際限なく使われる可能性も高くあります。

例えば、炒める為の油であったり、煮る為のだし(だしの素)であったり、粉をまぶす為の小麦粉などであったり・・・と、野菜の後に使う可能性のあるグロサリーの商材は非常に多岐に渡ります。その上で、『何を優先して』売り場展開を行うべきか?これは、お店の立地や客層、お客様に何を伝えたいのか?と言うお店の意思など、様々な要素を加味して、優先順位をつけて売場の展開を行う必要があります。

最も避けなければならないことは、『何故その商品をそこの場所で展開する(している)のか?』が、お店で説明ができない状況にあるということです。「昔からこうだった」とか、「これでお客様が慣れている」と言った考え方がお店に少しでもあれば、既にお店に来られているお客様のことを考えた売場とはなっていない、ということが言えましょう。お店の売り上げが上がらない。お客様に来ていただけない。買い物して頂く量が減った・・・などの課題や問題を抱えていらっしゃるのであれば、それは、グロサリーの売場と各生鮮品の売場が「お客様が求めていることから離れてしまっている」と考えて、次なる手や改善について真剣に検討すべきだと考えます。

次回も、『部門間の壁』を破る為の様々な事例について、解説を加えてみたいと思います。

(次の配信は4月20日頃の予定です。) 

【連載第11回】コロナ前後で変わるお客様の消費動向⑩


 

<プロフィール>

信田 洋二

 

1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。

 

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