【連載第11回】コロナ前後で変わるお客様の消費動向⑩

公開日:2022年2月16日 最終更新日:2022年3月14日

コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。

第11回も「小売りに於ける部門間の壁」についてのコラムです。


今回は、『メーカーさんも連携の上、どの様に部門間の壁を克服すべきか?』と言う事について解説してみたいと思います。

小売業(スーパー)に於ける『部門間の壁』が如何に厚くて高いか。という点については、前号で解説をしましたが、説明不足の部分がありましたので、少し補足をしておきますと、「鍋つゆ」についていえば、例えば、基本的には有名グロサリーメーカーの商品が店内のシェアでは最も多くの支持を集めてはいますが、決して他の部門で(部門独自の)商品との優劣に差があるか?と言えば、味的にも品質的にも品質が劣るようなものではありません。

が、やはりこれらの「鍋つゆ」的な商材は、生鮮部門にとってみれば専門外の商品であり、陳列の方法なども生鮮品の商材のオープンケースなどの最上段で展開されるか、或いは、冷蔵平ケースの近くで、ワゴンやワイヤーラックなどに「何となく」載せられて販売されているだけ、と言う姿をよく見ます。

反対に有名グループメーカーの商品は、エンドなどで大展開を施されており、商品の情報などがふんだんに掲載され、場合によっては、小型のディスプレイなどで、TVCMが繰り返し流される…と言う様に、その「売り方」の扱いが極端に異なっているが為に、部門独自で扱っている商品は、売れるものでも売れない状態、という事になっているのが実情です。

もちろん、グロサリー部門からすれば、他の(生鮮食品取扱部門など)部門の商材の方が売れてしまう事にでもなれば、面白いはずがありません。それだけ(グロサリー扱いの商材以外の商品が売れる事)は何としても阻止すべく、店内で「鍋つゆ」と言えば、グロサリー扱いの商材以外にはない!と言う位の勢いで、エンドゴンドラなどでの大展開を実施している、と言うのが現在のスーパーの売場間で起こっている事象です。

他にも同様の争いは、焼き肉のたれ、ハンバーグなどの素、塩コショウなど多岐に渡っており、それらの商材については、グロサリー部門と他の生鮮部門との間で頻繁に発生してしまっています。実は、コロナ禍になる以前からこの傾向は根強くあり、壁を超えることは「無理」とまで言われているのが実態です。

しかし、今後の商売の傾向を考えると、メーカーさんとすれば、特に重要な事として、「生鮮品とのコラボ」は必須だと考えます。例えば、近年の女性の社会進出や一億総活躍社会などの流れを受け、料理など家事の時間短縮を図る必要が生じていますので、「時短メニュー」として合わせ調味料などが人気になってきています。

しかし、これらを生鮮品とは別にグロサリーの売場に分けて置いたのでは、お客様の目に触れる確率が非常に低くなります。ましてや、働く主婦が買い物に来られる際には、買い物忘れがないようにメモをもって、目的の商品に一目散と言う光景がよく見られます。目的以外の商品には目もくれず、と言う状態で買い物をしているお客様の目にも商品を留めていただこうとすると、生鮮品の売場に直接これらの合わせ調味料等を置き(例えば、「白菜の旨煮」と言う調味料を白菜の隣に置くという事です)、生鮮品を美味しく、簡単に作れるツールとして、合わせ調味料をアピールすると同時に、白菜の拡販を図る。という主として『生鮮品を売る為に』グロサリーを活用するなど生鮮品の売場もグロサリーの売場も活性化できる可能性のある売り方の提案を行う事がメーカーさんとして考えて頂きたい事です。

この事は、例えば、ヨーグルトの売場で、シリアルやオリゴ糖などをセットで販売することで、ヨーグルトの機能強化にも繋げられることができます。このような例は、店舗内にはかなり多く存在しています。『部門間の壁』をどの様に崩していくべきでしょうか?考えてみていただきたいと思います。

次回は、『部門間の壁』を破る為の様々な事例について、もう少し詳しく解説してみたいと思います。

(次の配信は3月22日頃の予定です。) 

 

【連載第10回】コロナ前後で変わるお客様の消費動向⑨


 

<プロフィール>

信田 洋二

 

1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。

 

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