2024年問題の食品業界での対策案、企業の事例をご紹介

公開日:2024年4月1日 最終更新日:2024年3月13日

2024年4月から働き方改革関連法によりトラックドライバーの労働時間が軽減されます。ドライバーを守るための法律ですが、人手が足りなくなる可能性が大きく「物流の2024年問題」とまで呼ばれるようになりました。

特に食品スーパーは物流 が無くてはならない業態なので、早急に対策を打ち出さなければなりません。

この記事では、2024年問題の概要や食品スーパーができる対策、企業の事例を紹介します。

 

物流の2024年問題とは

「2024年問題」とは2024年4月以降、トラックドライバーの年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることにより発生する問題をさします。

また勤務時間中のインターバル(休憩時間)も8時間以上から、継続11時間以上与えるよう努めるのが基本となり、運行計画の改善も進んでいくようです。

経済産業省の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」によると、不足する輸送能力の割合は2024年度で14.2%、2030年度には34.1%にまで上がると予測されています。

今後はトラックドライバーがさらに不足し、多くの荷物が運べなくなる可能性が出てきます。

特に物流に頼っている食品スーパーは大きな影響を受けるかもしれません。

 

2024年問題で食品事業者が受ける打撃

2024年問題で大きな影響を受けるのが食品事業者です。

特に大量の食材の確保が必要な食品スーパーや食品メーカーは影響を受けやすいでしょう。

下記は、物流問題によって起こりうる食品業界への影響です。

  • 当日、翌日配達ができない
  • 新鮮な食材を並べられない
  • 必要な時に必要なものが届かない
  • 生産数が落ちる

例えば、食品スーパーは毎日新鮮な食材を仕入れ、それを消費者に販売しています。しかし2024年問題が深刻になると、週3回、週2回など仕入れの回数が減るかもしれません。

特に独自の物流ラインを持っていない小規模事業者は、大きな影響を受ける可能性があります。

 

食品スーパーにおける2024年問題の対応策 3つ

食品スーパーは、地域のインフラとして継続的な食糧供給を担う存在です。そのためスムーズな物流体制の構築が必要不可欠です。

そこで 2024年問題で、食品スーパーができる対応策と言われているのが下記の3つです。

 

発注時間の前倒し

発注時間を午前中に前倒しできれば、物流業者の作業時間を削減できる可能性があります。 

例えば午後に発注をかけると、物流業者側で夜間作業が発生し、積載効率が悪くなります。一方で午前中に発注すると、昼間のうちに準備ができ、スムーズな配送が実現できます。

特に定番商品は頻繁に発注をかけるので、前倒し発注は非常に有効です。実際に物流業界からも、食品スーパーの発注前倒しが要望されています。

 

「2分の1ルール」の採用

食品流通の分野では「3分の1ルール」という商習慣があります。
3分の1ルールとは、①食品メーカー(卸を含む)②食品スーパー③消費者の3者が製造から賞味期限までの期間を3等分するというルールです。
例えば、賞味期限が3ヶ月の場合、最初の1ヶ月以内に運送業者(卸)が食品スーパーに納品できなかった場合、メーカーへ返品されます。

トラックドライバー不足が深刻化する中、3分の1ルールの継続は難しい問題です。

そこで農林水産省では2012年から働きかけ、大手スーパーやコンビニなどが2分の1ルールを採用するようになりました。
例えば、⽣活協同組合コープあいち、⾷生活協同組合ユーコープ、⽣活協同組合おおさかパルコープなどでは、2分の1ルールを採用しています。

このように、物流の問題や食品ロスを削減する上でも、2分の1ルールの導入は有効といえます。

 

流通BMSによる業務の効率化

流通BMSとは、(Business Message Standards)の略で、流通業界の業務効率化を目的としたEDI のガイドラインです。EDIとは、企業や行政などでネットワークを構築し、伝票や文章を電子データでやり取りできるシステムです。経済産業省が主導となり、2007年にはスーパー業界で初めて流通BMSを導入しています。

流通BMSの特徴は以下の通りです。

インターネットの活用
今までの電話回線を利用したインターネットと比べて通信速度が大幅に向上。 月額固定費も安く、通信コスト削減につながる。

メッセージフォーマットの統一
今までは食品スーパーやコンビニごとにフォーマットが異なっていたが、現在はどの小売業も同じシステム使用。

このように流通BMSは、大幅な業務効率化につながっています。

 

2024年問題の解決に取り組む事例 やおすすめの解決策

2024年問題の解決に取り組む事例や解決策をまとめて紹介します。

 

共同配送を再構築している食品メーカー大手6社

食品メーカー大手6社(味の素・カゴメ・日清オイリオ・日清製粉・ハウス食品・Mizkan)では、持続可能な物流体制の実現に向けて共同配送を再構築しています。

北海道地区では、2023年10月に拠点を1箇所に集約し、共同で保管・配送を行っています。これによりトラック1台あたりの積載効率が高まり、配送回数の削減に成功しました。

また同じ納品先に行くケースも多いため、配送車両台数が減らせ、ドライバーの負担軽減にもつながっています。

今後は、日本各地で複数の食品事業者がタッグを組んで、物流の改善が行われていくようです。 

 

ヤマト運輸と日本郵便がタッグを組む「クロネコゆうパケット」

■引用元:ヤマト運輸HP(https://www.yamato-hd.co.jp/news/2023/newsrelease_20230928_1.html

ヤマト運輸と日本郵便が共同で開発した投函サービス「クロネコゆうパケット」が注目を集めています。

クロネコゆうパケットは、ヤマト運輸が荷物を預かり、日本郵便の配送網を活用して荷物を郵便受けなどに投函するサービスです。

【クロネコゆうパケットの特徴】

  • 1cm、2cm、3cmの厚みに応じた全国一律料金
  • 365日年中無休で大量集荷に対応
  • 日本郵便の配達網でお届け先の郵便受けに投函

参照:ヤマト運輸株式会社

このサービスでは、双方の強みを活かし、効率的な配送が行えるようになっています。

 

Amazonの軽乗用車による配送

■引用元:Amazon FLEX HP(https://flex.amazon.co.jp/?cs=sem|gs|jp|amazon-flex-brand-exact-nationwide-japan|acq|||amafre-job||exact|japan|

Amazonは、個人事業主と業務委託契約を結んで配送する「Amazon Flexプログラム」の契約を緩和しています。

今までは軽貨物車(軽バン)が必須条件でしたが、今後は軽乗用車も対象となり、多くの個人事業主が参入できるようになりました。

Amazonでは、2024年問題が深刻化する前に、多くのドライバーを確保する狙いがあるようです。

 

ホワイト物流を推進している「濵田酒造」

■画像引用元:「ホワイト物流」推進運動ポータルサイト(https://white-logistics-movement.jp/

焼酎メーカー大手の濵田酒造では、ホワイト物流 」の実現に取り組んでいます。

ホワイト物流とは、物流業界の生産性向上や運送業者の労働環境改善の取り組みです。

濵田酒造は、全国に7ヶ所のストックポイントを設け、九州から北海道まで2日配送の体制を構築しています。

物流の中継基地として、配送センターと倉庫の機能を備えることで、効率的な配送を実現しました。

 

食品事業者と配送事業者が共同する「九州物流会」

九州地区を中心に活動する食品事業者と配送業者が共同する「九州物流会」。西鉄ストアやイオン九州、トライアルなど大手食品スーパーも参入し、2024年問題の解決に取り組んでいます。

この会では「商品・車輛の移動距離50%削減」「小売業・運送業従事者の社会的地位向上」などを掲げ、さまざまな施策を打ち出しています。

例えば、

  • 仕入物流の共同化
  • 配送者の共有
  • 拠点の集約

などを検討。

実際に、トライアル車両でイオンの店舗に配送する実証実験も行われています。今後は、さらに輪を広げ全国へ情報発信を行っていくそうです。

 

再配達を抑制するメール便や置き配

 

 ポストイン(ポスト投函)や置き配を増やすと、再配達件数の削減につながります。

ドライバー不足を深刻化させる要因のひとつが「再配達」です。何度も同じ場所に配達すると、時間効率が悪くなり、ドライバー側の負担が重くなります。

例えば、ポストインできる「メール便」などを積極的に活用すると、再配達を減らすことができます。通常の荷物に比べて配送料が安いのもメリットです。

また最近は、指定した場所(玄関など)に荷物を配送する「置き配」が普及しています。置き配ボックスなどの設置が進めば、より配送の効率化ができるはずです。

 

すべての業界で業務改善が必要となってくる

今回は、物流の2024年問題について詳しく解説してきました。今後はトラックドライバー不足が深刻化するため、食品スーパーを中心に配送体制の改善に努めなければなりません。今後は複数の食品事業者・配送事業者がタッグを組んで、独自の配送体制を整える動きは加速していくでしょう。

 

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