食品メーカーが生き残っていくために必要なのが商品開発力です。競合他社と差別化を図り、魅力的な商品を開発していかなければなりません。
とはいえ、売れる商品の開発は難しく、課題に感じている食品メーカーも多いはずです。
そこで今回は、食品メーカーにおける商品開発の流れや成功のポイント、企業の事例を紹介します。
商品開発とは
商品開発とは、自社で新たな商品を企画・開発することです。顧客に購入してもらえる商品を企画し利益を出していきます。
近年、加工技術の進化や新技術の登場により、次々と新しい商品が生み出される時代になりました。その反面、商品開発力も問われるようになり、他者との競争も激しくなっています。
消費者が求める商品のレベルも上がるため、より高い商品開発力が求められるでしょう。
食品の商品開発の6ステップ
それでは、食品メーカーにおける商品開発の流れを紹介します。
①市場分析によるニーズ調査
まずは市場分析によるニーズ調査を実施します。ニーズ調査とは、消費者が求めているものを調べる活動です。
ニーズは「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」に分けて考えることが大切です。
顕在ニーズ:消費者が自覚している欲求
潜在ニーズ:消費者がまだ理解していない欲求
そしてニーズ調査では、潜在ニーズに寄り添って商品アイデアを考えなければなりません。
例えば、「クッキーを買いたい」という顕在ニーズを抱えた消費者がいるとします。その背景には「彼女に喜んでもらいたい」「会社の人に認められるお土産がほしい」という潜在ニーズがあるかもしれません。
このように潜在ニーズを探ることで、より商品開発の精度が上がっていきます。
②商品のアイデア出し
ニーズ調査で得た情報をもとに、商品のアイデア出しをしていきます。
そしてアイデア出しは、マーケットインとプロダクトアウトを組み合わせましょう。
マーケットイン:消費者の求める商品を開発する
プロダクトアウト:自社の技術力を活かした商品を開発する
消費者の求めるニーズを踏まえつつ、自社の技術を活かせる商品を考えれば、競合他社と差別化した商品を生み出せます。
最近の消費者は、よりレベルの高いものを求めているため、どちらかが欠けると差別化できません。
ぜひマーケットインとプロダクトアウトの視点で、商品のアイデア出しを行いましょう。
③商品の具体的な企画
消費者のニーズに合ったアイデアが出たら、具体的な企画に進んでいきます。
特に商品のコンセプトは重要です。形や味だけでなく、消費者にどんなベネフィットをもたらすのかまで考えなければなりません。
例えば、チョコレートを購入した人に「美味しい」と思ってもらうだけでなく、その先に「会社の同僚におすすめして、職場の雰囲気がよくなる」という部分まで考えます。
また工場生産の体制やマーケティング施策などについても、詰めておくと安心です。
④試作品の開発・準備
商品の企画が進んだら、実際に試作品を開発していきます。いくつかのパターンを開発し、社内でどの商品が良いか検討します。
また、商品が工場でスムーズに生産できるのかも調査しておきましょう。試作の段階で工場の生産ラインでのチェックも行い、量産の可否を調べるためです。
さらに社内で問題点を洗い出し、改良を加えてください。。商品は何度も試作を繰り返すことで、クオリティが上がっていきます。
⑤テストマーケティング施策
開発した商品は、まずテストマーケティングで消費者の関心度をはかります。
テストマーケティングとは、限られたエリアや消費者に対して試験的に販売することです。
例えば、特定エリアのスーパーマーケットで試食販売を行うのも、テストマーケティングのひとつです。
テストマーケティングで得られたデータは、商品の改良だけでなく、今後のマーケティング施策にも役立ちます。
また商品の評判が悪ければ、販売の中止や縮小を検討し、損切りすることも大切です。
商品の売れ行きを左右する大切なテストですので、ぜひ実施してみてください。
⑥販売開始
実際に商品を生産し販売を行っていきます。
ここで役立つのがプロモーションです。プロモーションとは、商品を広く認知させる活動を指します。
主にプレスリリースやテレビCM、体験イベントなどで認知度を高めていきます。最近は、インフルエンサーを起用した動画広告もプロモーションとして有効です。
消費者は、初めてみる商品を手に取りにくいため、まずは認知を集めなければなりません。広告やCMなどを活用して、効率的に認知してもらいます。
また売上やコスト管理、顧客満足度なども調査し、販売の効率化も進めていきましょう。
商品開発を成功させるためのポイント3つ
商品開発を成功させるためのポイントを3つ紹介します。
PDCAを回して改善に努める
商品の発売後は、PDCAを回して改善に努めていきます。
PDCAとは
・Plan(計画)
・Do(実行)
・Check(評価)
・Action(改善)
を繰り返し、商品を改善していくプロセスです。
常に消費者からの反応をチェックし、定期的に商品に改良を加えていきます。
PDCAのメリットは、問題点や課題が明らかになることです。明確になった目標に向かって進めるため、必須のプロセスです。
OEM先(外注メーカー)の選定は慎重に
OEMとは、商品の製造を委託して生産を進める方法です。例えば、大手コンビニのプライベートブランド商品もOEMで生産されています。
OEMのメリットは、小さい会社でもオリジナル商品を作れる点です。しかしOEMで商品開発を成功させるには、OEM先を慎重に選ばなければなりません。
OEMは自社工場のように、自由度が高くないのがデメリットです。OEM先によって、さまざまなルールや制約あるため、自社の商品に合っているのか確認しておくことが大切です。
製造方法や納期、工場の担当者など、スムーズに生産できるように打ち合わせが必要です。
既存製品の技術を活かす
商品開発と聞くと、一から新しい商品を作るイメージがあります。
しかし実際のところ、既存商品の技術を活かせば新商品を作ることができます。
例えば、既存商品にロールケーキがある場合、生地の原料を変えたり新しいクリームを入れたりなど、さまざまなアレンジが可能になるでしょう。
それが消費者のニーズとマッチすれば、コストをかけずに商品開発ができます。
一から考えるのではなく、既存の技術が活かせるか考えてみてください。
食品メーカーにおける商品開発の事例を紹介
食品メーカーの商品開発事例をまとめて紹介します。
メイドイン東京の商品開発にこだわる「遠忠食品株式会社」
画像引用元:遠忠食品株式会社HP (https://enchu-food.com/)
東京都で佃煮や漬物、惣菜の製造・販売を行う遠忠食品株式会社。同社では、東京都内の食品事業者を集め「メイドイン東京の会」を立ち上げました。
実際に東京都内の生産者のもとを尋ね、原材料を購入。東京で生産された食材を活用したアイデアを生み出し、商品開発に活かしています。
都内でも高齢化や後継者不足により、食材の生産者が減ってきました。そういった問題を解決するために、生産者を大切にした商品開発を行っているのです。
また月一回の頻度で「商品会議」を行い、さまざまな食品事業者とアイデア出しをしています。生産者を呼んでYouTube配信するなど、新しい取り組みも参考になります。
このように、自社だけでなく生産者を巻き込んだ商品開発も成功の要素です。
和菓子に洋菓子の要素をプラスした「株式会社大江戸」
画像引用元:株式会社大江戸HP (https://www.ooedo-wagashi.co.jp/)
和菓子の製造・販売を行う株式会社大江戸では、新しい取り組みで新商品を開発しています。
近年、お土産売り場では洋菓子が主流になりつつあります。和菓子の売上は低迷し、株式会社大江戸も廃業の危機に陥っていたそうです。
そこで和菓子に洋菓子のテイストを加えた「和洋菓子」を開発することにしたと言います。既存の和菓子の製造ラインを活かしつつ、開発を進めたそうです。
その結果、どら焼きにバターをサンドした「バターどら焼き」や、あんことクリームを合わせてサンドしたどら焼き「クレーム ドラレーヌ」など、和菓子の良さを活かした商品が生まれました。
今では消費者から高い支持を受け、営業をしなくても問い合わせが増えたそうです。
既存の技術を活かした商品開発の事例として参考になります。
マヨネーズの販路拡大を目指した商品開発「キユーピー」
画像引用元:kewpie HP (https://www.kewpie.co.jp/)
キユーピーでは、マヨネーズの販路拡大を目指した商品開発を行っています。
もともとマヨネーズは、「炒め物に使うとコクが出て美味しい」という声がありました。その声をもとに、マヨネーズの良さを感じられ、1本で味が決まる商品の開発に着手しました。
そこで生まれたのが「キユーピー3分クッキング マヨ風味炒め用ソース」です。新しいマヨネーズの提案ができ、消費者からの評価を得ました。
このように自社の主力商品を軸に、新しい販路を開拓するのもおすすめです。
本場のさぬきうどんを再現した「テーブルマーク」
画像引用元:テーブルマークHP (https://www.tablemark.co.jp/)
冷凍食品をメインに製造・販売を行うテーブルマークでは、主力の「さぬきうどん」の改良に力を入れてきました。
目指したのは、「本場のさぬきうどん店よりも美味しい」と言われる商品。本物よりもクオリティの高いうどんを目指しています。
うどん職人の手作り感を追求し、ひとつひとつの原料から厳選して見直したそうです。また、あえて不揃いに乱切りすることで、本場のさぬきうどんに近づけています。
現在も常に品質の改良を行っており、理想のさぬきうどんを追求しています。
本場のちゃんぽんを追求した「マルタイ」
画像引用元:マルタイHP (https://www.marutai.co.jp/)
棒ラーメンでお馴染みのマルタイでは、九州という立地を活かした商品開発を行っています。
九州ではちゃんぽんを食べる文化があります。しかしちゃんぽんの麺は、一般的な中華麺よりも太くコシがあるため、カップ麺の開発に着手しているメーカーがほとんどなかったそうです。
そこで福岡県に拠点を置くマルタイでは、ちゃんぽんのカップ麺開発に着手。マルタイの社員は、長崎県のちゃんぽんを食べ歩き、スープや麺の味を確かめたそうです。
そして1976年に、即席カップ麺初の「長崎ちゃんぽん」を発売。現在も当初の味を守りつつ、微調整を加えています。
このように、地域で食べられている食品を活かした商品開発も参考になります。
食品の商品開発はOEMがおすすめ
今回は、食品メーカーにおける商品開発の流れや成功のポイントについて解説してきました。消費者の求めるレベルは年々上がり続け、競争も激しくなっています。ぜひ本記事を参考に、商品開発力を高めてみてください。
そして、ショクビズを運営する丸信では、食品OEMの総合情報サイト「食品開発OEM.jp」を運営しています。作りたい商品のイメージを伝えるだけで、完成品がお手元に届くサービスをご用意しています。商品開発を効率化したい担当者の方は、ぜひご活用ください。
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