【連載第19回】コロナ前後で変わるお客様の消費動向(18)

公開日:2022年10月26日 最終更新日:2022年10月25日

コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。

第19回は「季節感を演出するエンドゴンドラ」の季節ごとの展開のポイントについて解説します。


「季節感」は、お客様の買う気を誘う上においては、最も重要な要素のうちの一つです。それぞれの季節感の演出については、実施できている点とできていない点とがあるのではないかと考えています。近年では、小売業についても労働力の圧倒的な不足状況からエンドゴンドラ等の展開にまで手が回らず、とにかく陳列展開を行う事だけに集中してしまっているような売り場や、日替わりセールの商品の残骸などがその大半を占めている売場などを多く見掛けますが、エンドゴンドラは『催事のゴンドラ(陳列棚)』です。季節ごとに何を目立たせて対応するべきか?単品のみの積み上げのみではなく、「関連商品の販売」についても同時に誘える様な楽しい展開を心がけることが重要です。

季節ごとの展開のポイントで言うと、今回はもうすぐやってくる『冬』の売り場のポイントについて考えて見たいと思います。

『冬の商材』と言えば、その代表格は「鍋料理に関する商材」と言うことになると思いますが、これまでのように、ここに雪のディスプレイや雪だるまのディスプレイ等を展開して季節感を出すことは、おそらくはどの小売でも、十分に時間をかけられるほどの労働力は存在していません。ですので、『冬』の演出を「鍋」で実施する場合には、「鍋用のつゆ」に他の商材を加え、いかにも冬の食卓というイメージで売場を表現することが重要となります。

例えば、鍋コーナーであれば、鍋つゆのみになりがちな売場に、さらに春雨、だし昆布、ポン酢(数種類)等に加え、チューブのもみじおろし、和からし、ショウガ、七味(一味)、豆板醤・・・と、およそ鍋に関すると思われる商材を一斉に「鍋つゆ」のコーナーで同時に(あるいは併設して)展開を実施することで、お客様から見るとそこの売場で一気に常温で販売されている商品が一斉に揃う(無論、冷蔵系の商品は同時には販売不可)ことになる、という利便性を追い求めることが可能となるばかりではなく、いずれにせよ一緒に購入していただきたい商品を可能な限り近接、併設、同時での展開を実施することによって、売場での季節感の演出を行うことができるようになります。

『冬』と言えば「鍋」である。装飾を最小限にしながらも、例に上げたような商材を共に大きく展開することで(エンドゴンドラの中でも、4段展開であれば3段目あたりに展開をする)季節感の演出をしつつ、鍋商材を拡販することができるようになってきます。このように工夫一つで過度な演出を行うことなく季節感を出すことが可能となるのです。

次回から数回は、緊急掲載として、『史上まれにみる物価高』に消費者はどのように対応しようとしているのか?という点について解説をしたいと思います。

【連載第18回】コロナ前後で変わるお客様の消費動向(17)

(次の配信は11月25日頃の予定です。) 


<プロフィール>

信田 洋二

1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。

 

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