【連載第16回】コロナ前後で変わるお客様の消費動向(15)

公開日:2022年7月22日

コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。

第16回も「エンドゴンドラ活用術」についてのコラムです。


エンドゴンドラを作成する分類としては、一般加工食品、菓子、日用雑貨品がありますが、各々の分類ごとにエンドゴンドラは『意味付けをもって(コンセプトを明確にして)』作成する必要があります。例えば、一般加工食品の場合、これらのコンセプトを大きく分けると『季節感の演出』『新商品・注目商品の展開』『メニュー(料理)提案』『生鮮食品との連動』とに分けられます。さらに加えて言うと『定番商品の紹介(定番売場への引き込み)』にも活用することができますので、都合5つの意味付けを持たせる事ができる、ということになります。

エンドゴンドラで展開する場合に特に重要となる事柄としては、『生鮮品との連携・連動』が挙げられます。例えば、『焼き肉のたれ』や『すき焼きのたれ』など、年間を通じて販売が見込める商材でのエンドゴンドラ展開の場合、精肉部門(売場)との連携が最も重要であり、しかも、主に『牛肉』の売場に限りなく近い場所での展開を考えて対応する必要があります。

一般加工食品の売場で展開されている『焼き肉のたれ』や『すき焼きのたれ』は、その多くがTVCMなどで馴染みのある商品が多く販売されており、所謂『定番化』がなされている商材が非常に多い状況です。しかし、それらの商材の定番での展開場所は、店舗の売り場レイアウトの構成にもよりますが、決して精肉部門の近くで展開ができているという訳ではない場合も少なくありません。お客様からすると、「肉はすぐに分かってもタレが・・・」というように探される場面も多くのケースで見掛けます。そのような売場は、決して『買いやすい』売場とは言えません。

精肉部門においても、TVCMなどで多く見掛けるような商材ではない、比較的知名度という点ではあまり高くないメーカーの各種の「タレ」が販売されてはいますが、そもそも論として、精肉部門では「タレ」を売ることが専業背はないため、その取扱いなどにおいては、場所取りもフェイスの考え方でも『?』と思われるような展開をしてしまっているケースが多く見られます。それだけに、やはり『焼き肉』や『すき焼き』の際には、一般的に普及している商材が『目立つ(精肉売り場の近く)展開』がなされているべきです。

そのエンドゴンドラでの展開の際に、新商品の「タレ」や口コミなどで評判が上がってきているような商品等を、一般普及品と共に展開を行い、味の紹介や美味しい食べ方等の情報を付加して、お客様に提供することが非常に重要となります。加えて言うならば、単に「タレ」のみを大きく展開しているお店は多数ありますが、一般加工食品の取り扱いの中で、『焼き肉の際に使えそうな商材』(例えば、チューブ入りのおろしにんにくやラー油、コチュジャンの様な辛みそなど)をこれらのタレと一緒に展開を行うことで、お客様は焼肉関連の商材の内、タレ以外の商品を遠方まで探しに行く必要がなく、エンドゴンドラだけで大半の材料が揃うことになります。

かつては、タレならタレだけを大々的にエンドゴンドラでは展開する、と言うことが善とされていましたが、高齢者や働く女性などが非常に増加した近年では、可能な限り買い物には時間を掛けず、簡便に商品を探し回らなくても買い物ができる、と言うことがお客様から好まれる傾向にあります。その意味では、『一か所でほぼ揃う』ことをまずは目指したエンドゴンドラつくりをすべきだと考えます。

次回は、『季節感を演出する』エンドゴンドラを如何に構築していくべきか?解説をしていきます。

(次の配信は8月24日頃の予定です。) 

【連載第15回】コロナ前後で変わるお客様の消費動向(14)


<プロフィール>

信田 洋二

1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。

 

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