「食品通販を始めたけど、写真をどう撮ったら良いか分からない」「飲食店でテイクアウトのサービスを始めたけど、写真を上手に撮れない」「SNSにアップしているけど集客・売り上げにつながらない」「プロっぽく撮りたい」など、食品撮影のお悩みをよく聞きます。プロに依頼すれば安くない費用が発生するのはもちろん、食品撮影が専門ではないカメラマンに依頼すると、想像していた写真にならないことも。
そこで、初心者の方でもスマホを使って簡単に素敵な写真を撮ることができる方法を紹介します。今回は、株式会社丸信で専属カメラマンを務める田中氏に4つのポイント教えていただきました。
良い写真を撮るための秘訣は4つ
食品撮影で大事なポイントは目的、光を当てる方向、角度(アングル)・構図の4つだけ。これを意識するだけで、驚くほど写真の印象は変わります。スマホで誰でも簡単に真似できるように、比較画像や例を使って解説します。
- ●「目的」を決める
- ●「光を当てる方向」を決める
- ●「角度」を決める
- ●「構図」を決める
「目的」を決めればイメージが湧いてくる
例:牛丼
撮影を行う前に、まず最初に抑えておきたいのが「誰に、何を」伝えたいのか目的を明確にすることです。
目的を決めることで、メニュー(副材)や盛り付け方、背景や小物などのセッティングがしやすくなります。牛丼を例にとると、男性向けのボリューム感と、女性向けのヘルシーなイメージでは、ずいぶんと印象が異なることが分かります。
写真Aの場合の目的
● 誰に➡︎男性層・サラリーマン・学生
● 何を伝えたいか➡︎モリモリたくさん食べてもらいたい
ボリュームがあり、美味しそうに撮りたい
↓
イメージの具体案:
● ボリュームを出すためにご飯の量を増やす
● サラリーマン・学生向けに味噌汁、漬物を添える
● 背景を男性向けに紺色にする
イメージの具体案は、難しく考えすぎずに気軽に想定してみると良いと思います。例えば、
・サラリーマンや学生には、がっつりメニューの方が人気だから、ボリュームを増やした見せ方にしたい。
・共通で提供できるメニューのイメージはお昼だから、明るめの雰囲気にしよう。
・夜なら、背景にビールも一緒に添えてサラリーマン向けに打ち出せる。
・背景は、男性向けだから、ピンクではなく、濃いめの青や茶の背景にしてみよう。
など、このように連想ゲームのように想像してみるだけでOKです。具体案が1つ出てくれば、自然と表現したいものが固まってきます。
写真Bの場合の目的
● 誰に➡︎女性層
● 何を伝えたいか➡和食ランチとして食べてもらいたい
ヘルシーに、美味しそうに撮りたい
↓
イメージの具体案:
● 女性向けにご飯の量少なめ
● ヘルシーな印象にするため、スープ・サラダを添える
● 背景を温かみのある淡い色に
女性向けのランチメニューに使用する写真を撮りたい場合は、
・女性はダイエットやカロリーを意識してる方が多いためご飯は少なめに。
・ヘルシーさを強調するのにスープやサラダも添えてみる。
・体に優しいイメージにしたいから、明るく温かみのある背景に。
など。「女性向けのランチ」という単純な目的を決めるだけでも、具体的に撮影するイメージが決まってきます。
このように、目的を持つことでイメージが浮かび、ターゲットに訴求できる構成を作ることができます。
思い描く写真に近づける「光の当たる方向」
美味しそうに撮る技術の一つに「光の当たる方向」があります。難しい技術のように感じられますが、「サイド光」「逆光」「順光」という3つの基本を押さえることで、思い描いた写真を撮ることができます。
実際に3つ光を比較してみます。
サイド光(横からの光)
横から光を当て、反対側に影を作るサイド光は、自然な立体感を表現することができます。写真のように窓の自然光を横から取り入れると、サイド光で撮影できます。
逆光(後ろからの光)
後ろから光を当てる逆光は、被写体のシルエットがはっきり浮かび上がり、瑞々しい雰囲気を表現しやすくなります。近年、料理写真の撮影方法としては定番です。写真のように窓の自然光を被写体の後ろから取り入れることで逆光で撮影ができますが、暗くなりすぎないように露出補正をかけると、良い感じのニュアンスを表現することができます。
順光(正面からの光)
撮影をする時に一般的なポピュラーな撮り方で、正面(カメラ側)から光が当たるのが順光です。被写体に直接まんべんなく光が当たるので、凹凸がなくなり立体感もあまり出ませんので、この光の当て方での撮影はおすすめできません。
順光で正確に色や形を撮影したい時は、背景を上手に取り込んだり、被写体の周りをボカしたりすると、立体感も綺麗に表現できます。
立体感が増す!レフ板を使って光を調整
「サイド光」「逆光」「順光」の3つの光について、同じ被写体で撮影した写真を比較してみると、それぞれ光の当たる方向が持つ特徴・違いを視覚的に理解することができます。
それぞれ立体感の出方に違いが見られるので、少し明るさを足したい時は、撮影時にレフ板(反射板)の活用もおすすめです。
レフ板(反射板)は、あるときは影を強く、ある時は影を弱く調節することができます。撮影時、レフ板(反射板)を使用した写真を比べてみるとほんのちょっとした差のようにしか感じませんが、実際に撮影した出来上がりの写真を比較すると違いがはっきり分かります。
反射板が用意できない時は、白い画用紙などでも代用できるので、ぜひ試してみてください。
「斜め45度」「俯瞰」の角度で映えを撮る
イメージ通りに撮れない大きな理由の一つに角度(アングル)があります。ここで押さえたいのは「斜め45度」と「俯瞰」の2つの角度です。
「斜め45度」は、人が座った時に料理を見ている目線になる、スタンダードな撮影角度。一方、「俯瞰」は、SNSなどで良く見かける真上から撮影する確度。近年一般的になってきた撮影方法です。特に料理の彩りや盛り付けの全体を見せたい時に適しています。
カメラの角度によって出来栄えが大きく左右されるので、「斜め45度」「俯瞰」は必ず実践しましょう。
2つの「構図」でワンランクアップの写真を
撮影の時、構図が決まらず、料理の並べ方で色々苦戦された経験の方も多いと思います。構図には決まりはないので、自由に変えながらどんどん撮影して問題ありませんが、困った時は「斜めパターン」「三角形のパターン」を押さえておくとよいでしょう。これにより出来栄えがワンランクアップします。
「斜め」「三角形」構図のメリットは、広がりや奥行きを作ることができ、立体感が生まれやすくなること。また、三角形の構図は、画面にリズムが生まれたり、主役を引き立て安定感を出す効果もあります。
構図を決めるのはコツが必要ですが、まずは少し意識することから始めましょう。それだけもで魅力が増しますのでトライしてみてください。
4つのポイントを意識した撮影例を紹介
今回、紹介した4つのポイント(目的・光の方向・角度・構図)を意識した撮影例をいくつか紹介します。
商品パッケージの場合
例1)
目的 → 外箱を正見せたい
光の方向 → サイド光
角度 → 俯瞰
構図 → 真ん中
解説:被写体が一つなので真ん中に配置
例2)
目的 → 外箱・中身を見せたい
光の方向 → サイド光
角度 → 俯瞰
例3)
目的 → 外箱・中身を見せたい
光の方向 → サイド光
角度 → 俯瞰
構図 → 平置き
盛り付け画像・被写体1つの場合
例4)
目的 → 牛丼の商品そのものを見せたい
光の方向 → サイド光
角度 → 俯瞰
構図 → 斜めパターン
解説:被写体は1つですが、背景のクロスの置き方を斜めにすることで、広がりやリズムを感じる構図になっています。
例5)
目的 → 牛丼の商品そのものを見せたい
光の方向 → サイド光
角度 → 斜め45度
構図 → 三角形パターン
解説:被写体は1つですが、背景のクロスの置き方を斜めにすることで、三角形構図にした例です。被写体が1つでも画面にリズムが生まれて、写真の出来栄えがグッと上がります。
盛り付け画像・被写体複数の場合
例6)
目的 → ターゲット層/サラリーマン・学生
︎ボリュームがあり、モリモリたくさん食べてもらいたい
︎光の方向 → サイド光と逆光の中間
角度 → 斜め45度
構図 → 三角形
解説:主役の被写体にピントを合わせて、奥の漬物をボカすことで、さらに奥行きが表現でき、さらに主役の被写体をより目立たせることができます。
例7)
目的 → 女性層に向けてヘルシーな和食ランチを打ち出したい
光の方向 → サイド光
角度 → 俯瞰
構図 → 三角形
解説:アングルを俯瞰にしかつ三角形にすることで、メニュー全体を見せることができ、よりヘルシーさを表現することができます。
おまけ:シズル感を出すなら「アップ画像」を活用
さらに美味しい写真を撮るテクニックとして、アップ画像があります。アップ画像は、食材の瑞々しさや新鮮さなど細かい部分までよく撮影できるので、通販の詳細ページやSNSなどで活用できます。
全体の写真だと食材の新鮮さなど分かりづらい場合があるの、アップ画像でシズル感を出すと表現しやすくなります。「シズル感」とは、しっとり、サクサク、シャキシャキ、とろ~り、ぷりぷりなどの食感や、熱々、ジュージュー、などの音や、あまーい、こんがりなどの匂い・味を想像させることです。
聴覚や嗅覚など五感に働きかけることで、あたかもその場にいるような雰囲気をリアルに感じさせ、美味しさや新鮮さなど食欲をかき立て、消費者が食べたいと思う感覚を刺激することができます。
また、アップで撮影するときに、箸やフォークで食材を持ち上げているシーンにすることで、人の気配を感じさせられます。見る人の食欲をそそることができるので、おすすめです。
細かい部分の盛り付けは、ピンセットや刷毛で
細かい部分まで映るアップ画像は、盛り付けも意識すると魅力的に仕上がります。細かい部分は、ピンセットを使用して調節していくと完成度もワンランクアップします。
また、最後の仕上げとして、刷毛を使用して水や油を塗り足してテカリを表現すると、よりプロがセッティングしたような仕上がりに近づけることができます。どのようなピンセットや刷毛を使えば良いか判断がつかない場合は、下記写真に近いものを用意すると、初心者でも使いやすくおススメです。
まとめ
食品撮影で押さえておきたい4つのポイントやテクニックを紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
こうしたテクニックの他にも、他社の通販サイトやチラシの画像を見て「これ美味しそう!」と思ったら、その写真を真似てみるのも良いでしょう。最初は上手くいかなくても、回数を重ねると必ず良い写真が撮れるようになるのが食品撮影の面白さ。まずは、どれか一つからでも意識してみてください。
ご自身での撮影では不安、食品撮影のプロに任せたいという方は、丸信までお問い合わせください。
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