新商品の販売を企画・策定する際や既存商品をリニューアルする際など、ビジネスの場面においてブランディングが必要とされるシーンは多く、食品・酒造メーカーや小売などの業界関係者もブランディングという言葉を耳にすることがあると思います。突然、新商品の開発担当者に任命されて、慌ててマーケティングの本を購入して勉強したという方もいらっしゃるかもしれません。実は中小企業の販売する商品にはブランディングがなされておらず、社長の好みや担当者の感覚でデザインを決定したり、イメージや販促活動の方向性を流動的に変更したりしながら販売している会社も多いのが実状のようです。
しかし、「全ての商品にブランディングは必要です」と、当社で長年酒造メーカーのブランディングを担当しているディレクターは指摘します。そもそもブランディングとは、どのような方法を用いて決定していくものなのでしょうか。
ここでは、当社が携わったお酒のブランディング事例をまとめ、その意味や手法などについてご紹介します。
ブランディングとは?混同しがちなマーケティングとどう違う?
ブランディング(英語表記:branding)とは、「ブランドマネジメントとも呼ばれ、ブランドに対する共感や信頼などを通じて顧客にとっての価値を高めていく、企業と組織のマーケティング戦略」のことを意味します(出典:Wikipedia)。会社でマーケティングの部署がブランディングをやっていたりするので、一瞬混同してしまうという方もいるかもしれませんね。ちなみに『広辞苑第7版』でブランディングを調べてみると「企業などが、自社製品や企業そのものの価値やイメージを高めようとすること。ブランド化」と記載されていました。マーケティングは「商品を大量かつ効率的に売るために行う、市場調査・広告宣伝・販売促進などの企業の諸活動」との解説がありました。
酒造メーカーで例えるなら、お酒の製造・販売元の「企業そのものや商品価値を高めようとする活動」がブランディング、お酒の魅力を「どうやって顧客に伝えるかの施策」がマーケティングというわけです。
お酒(焼酎、日本酒、蒸留酒)のブランディング事例と手法を大公開!
では早速、当社が携わった九州に蔵元がある酒造メーカーのブランディング事例を4つご紹介します(敬称略)。それぞれの会社やお酒に込められた想いに着目し、商品価値を最大限に引き出しました。
事例①:地域で親しまれる名所からネーミング【本格焼酎 六観音】
(参照元:https://www.meigetsu.co.jp/onlineshop/imo/)
明石酒造の「本格焼酎 六観音」は、6種類の原料芋それぞれの個性に合った仕込みを行うことで原料特性を最大限に高めた本格焼酎です。商品名の由来となったのは、えびの高原の六観音池。この商品名から分かるように、古い物を大事にしたいという想い。土にこだわり、芋にこだわり、造りにこだわる想い。今の生活に合ったモダンな商品にしたいという想い。これらの想い(ブランド)を一つのかたちに落とし込みたいと考えました。6の数字はモダンになり過ぎず、和のテイストを残したデザインに。文字の中の模様は、6つの原料芋が混ざり合う感じを表現しています。“こだわりの造り”のイメージを付けるため、紙にアクリル絵の具で塗り、それをスキャニング。あえてアナログな手法を用いました。
▼明石酒造株式会社
https://www.meigetsu.co.jp/
事例②:酒造への想いをキャッチーでモダンなデザインにリニューアル【芋焼酎 新酒(煮たて)2020】
(参照元:https://denen-style.com/denen-nitate/)
田苑酒造は、ENVELHECIDAや、DENEN FLAVORなどモダンなデザインにシフトされていました。そこで、新酒(煮たて)の商品のリニューアルを提案。「田苑酒造の伝統と革新の想い(ブランド)をうまくかたちにできないか」と考え抜き、ワインのボージョレ・ヌーボーのイメージから、黒いシックな色に新酒(NOUVEAU)の発音記号をメインにしました。発音記号のデザインにすることで、フックがかかりキャッチ―な印象に。煮たてのネーミングは残しながら、モダンになり過ぎないようにしました。毎年、新酒の時期に、文字のカラーを変えながら展開しています。
▼田苑酒造株式会社
https://www.denen-shuzo.co.jp/
事例③:3蔵元のコラボ酒【蔵元創業333周年記念 日本酒セット】
(参照元:https://www.hizennya.com/fs/sake/ss-333)
佐賀県の光武酒造場、天吹酒造、窓乃梅酒造の3つの蔵元が同時に333周年を迎えるため、3蔵元の日本酒をセットで売り出すご相談を受けました。最初に考えたのが3つの蔵元の想い(ブランド)をどうしたら1つにできるかということでした。mitsutake、amabuki、madonoumeのアルファベットの中には、共通して「m」の文字があります。この「m」の文字を大きく打ち出して3つ並べ、それを90度回転させると333に。3つの蔵元の想いが箱の中で1つになり、333周年を完成させることでインパクトを放ちます。「同じ佐賀県で333周年を迎える日本酒蔵」という、ありきたりの表現では成し得なかったブランディング事例です。
▼合資会社光武酒造場
http://www.kinpa.jp/
▼天吹酒造合資会社
https://www.amabuki.co.jp/
▼窓乃梅酒造株式会社
http://www.madonoume.co.jp/
事例④:ストーリーを作りながら、若者をターゲットにキャラクターを作成【ガラッパ ゼロワン クラフトジン】
(参照元:https://www.satsuma-godai.co.jp/products/garappa-01-craft-gin-with-carton/)
山元酒造の担当者から、若い人に向けて「GARAPPA」の商品展開をしたいとの連絡をいただいたのがきっかけ。薩摩川内の地で伝統を守りながらも、新しいことをしたいという想い(ブランド)がありました。ガラッパとは、薩摩川内に伝わる有名な妖怪で、このガラッパからの贈り物というのがこのお酒のコンセプト。ガラッパのキャラクターを作り、白地に黒のシンプルなデザインを採用しました。まず第一弾は、クラフトジンで展開。ラベル、カートン(箱)と一緒にブランドブックを作成し、ガラッパがクラフトジンを作るようになったストーリーを伝えました。次はどんなものがガラッパから贈られてくるかーー。そんなワクワク感を含ませ、酒質を変えながらシリーズで展開していきます。
▼山元酒造株式会社
https://www.satsuma-godai.co.jp/
お酒のブランディングはプロにお任せ!一番大切なものとは?
ここでご紹介したお酒のブランディング事例は、当社で実際に制作した商品の一例です。冒頭でご紹介した当社のディレクターは、「ブランディングで一番大切なのは、クライアントの想いだ」と言います。
当社では、まずヒアリングで商品の詳細を把握し、その上でストーリーを作り上げていきます。ヒアリングですくい上げた様々な想いを、豊富な知識と経験に裏打ちされた戦略的な手法でブランディングさせていただきます。商品に込められた想いや商品そのものが持つ魅力をパッケージデザインに乗せ、マーケティングを通して消費者の心に響くようなブランドとして仕上げていくのです。
当社では商品単体のラベルやパッケージデザインはもちろん、日本酒の蔵全体をリブランディングし、リニューアルするプロジェクトに参加するなど、「クライアントの想い」をかたちにするお手伝いをさせていただいております。
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