事業再構築補助金の新しい公募枠と審査に通る計画書作成のために重要なこと

公開日:2023年11月6日 最終更新日:2023年10月24日

事業再構築補助金第10回以降のルールの変更点

新型コロナウイルス感染症の長期化にともない、中小企業の事業再構築を目的とした「事業再構築補助金」は、9月13日から第11回の公募が始まりましたが、同補助金は前回の第10回から大幅なルール変更が行われました。株式会社丸信で補助金コンサルタントを務める福永晃大氏が変更のポイントを解説するとともに、変更点を踏まえて審査に通りやすくなる秘訣などを紹介します。

第10回からの変更点としては、「通常枠」がなくなった代わりに「成長枠」が創設されました。分かりやすく「売上高減少要件」が撤廃されたこと。従来の「通常枠」はコロナ以前と比べて所定の割合の売上高減少が応募要件だったため、売上が伸びている企業は対象外でした。創設された「成長枠」ではこれが撤廃されたため、事業再構築を目指す中小企業はほぼすべてが対象となりました。
ただし、「成長枠」の対象となる事業については、過去から今後にかけてのいずれかの10年間で市場規模が10%以上拡大する業種・業態という要件が付けられたため、業種・業態によっては対象にならない企業もでてくるでしょう。

計画書作成で心掛けるべきこと

第10回から新設されたのは「成長枠」「産業構造転換枠」ですが、事業再構築補助金で採択されるためには「事業再構築指針」に沿った申請書を記載する必要があるという基本的なルールは従来と変わりません。事業再構築指針に沿った事業計画書がもっとも重要なポイントとなります。

事業再構築指針とは(事業再構築指針手引きより)https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/shishin_tebiki.pdf

事業再構築指針の中でも、もっとも計画が立てやすく申請数も多い「新市場進出」について解説します。「新市場進出」では主に「製品等の新規性要件」=「過去に製造等した実績がないこと」を示す必要があります。ただし、製品等の性能や効能が定量的に計測できる場合に限り、定量的に性能や効能が異なることを証明する必要があります。下記の①~③が新規性を満たさないとして例示されています。

このように、過去に製造した実績がないことを証明せよ、と言われると今まで全く作ったことのない商品をゼロから開発する必要があるかのように思え、ハードルが高く感じられた方も多いのではないでしょうか。しかしながら、上記例示(製造等の新規性要件を満たさない場合①~③)にあてはまらないように、うまく事業計画書を作成することができれば採択されることは十分に可能です。

書き方を変えて審査通過率をアップ

①および②のように過去に製造していたものを再び製造することが明らかな場合は新規性要件を満たさないことが明白ですが、③については少し曖昧な表現になっていることが分かります。

(例)自動車部品を製造している事業者が、単に既存部品の製造量を増やす場合。
(例)自動車部品を製造している事業者が、新たに製造が容易なロボット用部品を製造する場合。
(例)自動車部品を製造している事業者が、新たに既存の部品に単純な改変を加えてロボット用部品を製造する場合。
(例)自動車部品を製造している事業者が、既存製品である2つの部品を単に組み合わせたロボット用部品を製造する場合。

これらの例にあてはまらないと感じさせるような事業計画を立てられれば「新規性あり」と認められ審査を通過する可能性は十分にあります。例えば、
「(例)自動車部品を製造している事業者が、単に既存部品の製造量を増やす場合」は新規性なしですが、「自動車部品を製造している事業者が、新製品開発のために既存部品の製造量を増やし、新たなターゲットに新製品としてパッケージを変更して売り出す場合」とすれば、新規性ありとみなされ審査に通る可能性があります。

以下はその他の変更例です。

(例)自動車部品を製造している事業者が、新たに製造が容易なロボット用部品を製造する場合
⇒自動車部品を製造している事業者が、新たに製造が困難なロボット用部品を製造する場合

(例)自動車部品を製造している事業者が、新たに既存の部品に単純な改変を加えてロボット用部品を製造する場合
⇒自動車部品を製造している事業者が、新たに既存の部品に複雑な改変を加えてロボット用部品を製造する場合

(例)自動車部品を製造している事業者が、既存製品である2つの部品を単に組み合わせたロボット用部品を製造する場合
⇒自動車部品を製造している事業者が、既存製品である2つの部品を複雑に組み合わせたロボット用部品を製造する場合

このように書き換えることで新規性ありとみなされ審査に通る可能性が高まります。

事業計画の書き方の2つのヒント

上記の例は手引きに沿った製造業の例ですので、ややイメージがわかないと思いますが、私が計画書作成に携わった高菜製品製造卸売会社の事業計画では製造工程はこれまでとほとんど変えずパッケージング工程のみを変えて、これまで販売していなかった新規顧客層に小売販売するという計画を立てて見事審査に通過した事例があります。

(ヒント1)
・新規性あり、とみなされるためのコツは、事業計画書の基本となる「誰に」「何を」「どのように」販売して事業再構築を達成していくのか?の「誰に」「何を」の部分の両方を変更させるように意識して計画を立てるようにすることです。

そのうえで、いかに実現性がある計画か?を数字や自社のリソースの活用、既存事業とのシナジー効果などを交えて説明することができれば、審査に通過し補助金が獲得できること請け合いです。

【「誰に」「何を」の変更の例】

・(これまで)卸売業中心で、BtoCはほとんどやってこなかった
→(これから)ECサイトや直売所等で小売BtoCにも挑戦していく

・(これまで)小売業中心で、ターゲットは高齢者だけだった
→(これから)ターゲットを若年層向けに変更し新商品を開発する

(ヒント2)新規性のある有望な事業は、「事業再構築に向けた 事業計画書作成ガイドブック」に紹介されています(P33以降)
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/jigyokeikaku_guidebook.pdf

これらを参考に事業再構築のテーマを見つけることも採択への最短ルートかもしれません。

👇(事業再構築に向けた 事業計画書作成ガイドブックより引用)

これまで事業再構築補助金にチャレンジしたけど採択されなかった方、あるいは、これからチャレンジしたいけど採択されるか不安を抱えている方などは、是非一度、ご相談ください。

 

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