環境や資源に配慮した水産物「サステナブル・シーフード」が注目を集めています。
これから先の水産物を守るために、私たちができるのは「MSC認証」や「ASC認証」を受けたサステナブル・シーフードを選ぶことです。
欧米では浸透している言葉ですが、日本での認知度はまだ高くありません。しかし、将来的にはサステナブル・シーフードの重要性は高まっていくはずです。
そこで今回は、サステナブル・シーフードの特徴やMSC/ASC認証、導入するメリット・デメリット、企業の事例を解説します。
サステナブル・シーフードとは
サステナブル(Sustainable)とは、sustain(持続する)とable(~できる)から作られた言葉です。
サステナブル・シーフードは、水産資源や環境に配慮し、適切な環境下で管理された水産物を指します。これから先も、水産物を安定して食べられるようにと、考えられた取り組みです。
基準は「MSC認証」と「ASC認証」の2種類があり、それぞれの基準を満たしたものがサステナブル・シーフードと名乗れます。
環境問題や水産資源の減少を予防するには、認証を受けたサステナブル・シーフードを選んでいかなければなりません。
今後は、日本でもサステナブル・シーフードに注目が集まるはずです。よって食品メーカーは、積極的に認証を取得していく必要があります。
MSC認証とASC認証について
MSC認証とASC認証を受けた水産物はサステナブル・シーフードとして売り出せます。
そこで、それぞれの特徴を詳しく解説します。
MSC認証とは
MSC認証とは、非営利団体・海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)が認証するものです。水産資源と環境に配慮し、適切な環境下で水揚げされた「天然」の水産物を指します。
審査は第三者機関によって審査され、厳正な規格をクリアした水産物のみに与えられます。
先進国である欧米のスーパーでは、MSC認証を受けた水産物のみを仕入れているところもあるようです。
また日本でも、イオンがMSCラベルのついた商品の販売を開始。徐々に注目を集め始めています。
ASC認証とは
ASC認証とは、水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council)が認証するものです。環境や地域社会へに配慮し、適切な環境下で育てられた「養殖」の水産物を指します。
水産物の種類も定められており、ASC認証の対象となっている魚介類は、サケ、ブリ・スギ類、淡水マス、シーバス・タイ・オオニベ類、ヒラメ、熱帯魚類、ティラピア、パンガシウス、二枚貝(カキ、ホタテ、アサリ、ムール貝)、アワビ、 エビ、海藻の12魚種です。
参照:水産養殖管理協議会
MSC/ASC認証を受けた水産物は、将来の水産資源を守るだけでなく、安心・安全というイメージが定着しています。よって消費者は安心して水産物を購入できるでしょう。
サステナブル・シーフードはなぜ注目されている?
サステナブル・シーフードは、なぜ注目を集めているのでしょうか。
その理由は以下の通りです。
- ・海洋資源の減少
- ・プラスチックごみによる生態系への悪影響
それぞれについて、詳しく解説していきます。
海洋資源の減少
世界の海洋資源は年々減少しています。国ごとに漁獲量の規制はありますが、ルールを無視した「過剰漁業」が行われているケースも少なくありません。過剰漁業は世界中で蔓延しており、いずれは水産資源が枯渇するともいわれています。
また水産物は環境の影響を受けやすく、水質汚染や気候変動などにより、生態系に悪影響を与える恐れもあります。
さらに世界の人口は増加を続けているため、今以上に水産物の需要は高まっていくはずです。
よって今のうちからサステナブル・シーフードを選択しておかなければ、将来的に水産物が食べられなくなる可能性があります。
プラスチックごみによる生態系への悪影響
海洋プラスチックごみの問題が深刻化しています。世界中で多くのプラスチックが使い捨てされ、処分されないまま海に流出するケースも少なくありません。
プラスチックは多くの海洋生物を傷つけています。特に問題となっているのが、小さく砕かれたマイクロプラスチックです。
マイクロプラスチックは水産物の中に取り込まれ、生態系に悪影響を及ぼしています。そして、その水産物を食べた人間にも影響があるのではないかと、懸念の声も多いです。
よってサステナブル・シーフードを浸透させ、水産資源を守る取り組みを加速させなければなりません。
企業がサステナブル・シーフードを導入するメリット・デメリット
企業がサステナブル・シーフードを導入するメリットとデメリットを紹介します。
サステナブル・シーフードを導入するメリット
サステナブル・シーフードは、「持続可能な開発目標(SDGs)」の14番目「海の豊かさを守ろう」の達成に最も有効だといわれています。
よってサステナブル・シーフードを導入すれば、世間から注目が集まりやすくなるはずです。
またMSC認証、もしくはASC認証のマークが付けられるため、「安心・安全」であることもアピールできます。
今のうちから参入し、環境問題を考える企業として取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。
サステナブル・シーフードを導入するデメリット
サステナブル・シーフードのデメリットは、認証を受けるのが難しい点です。
MSC/ASC認証の審査基準は厳しく、厳正な審査が行われます。また認証を受けた後も、5年ごとに更新があるため、常に品質管理を徹底しなければなりません。
これらの審査を通過できる水産物はそう多くなく、導入できない企業もあるようです。
サステナブル・シーフードの取り組みを行う企業事例
サステナブル・シーフードの取り組みを行う企業の事例を紹介します。
パナソニックはWWFジャパンと協働し、SDGsの「海の豊かさを守ろう」活動
パナソニックでは、WWFジャパンと協働し、SDGs「海の豊かさを守ろう」の活動を行っています。
2018年3月から本社を含む多数の拠点の社員食堂で、MSC/ASC認証を取得したサステナブル・シーフードを導入しています。
また水産資源を守るために、
- ・有明海の干潟保全と環境教育活動への支援
- ・白保サンゴ礁保護活動への支援
- ・黄海エコリージョン支援プロジェクト
参照:パナソニック
などの活動も積極的に行っています。
このように、身近な社員食堂からサステナブル・シーフードを導入し、企業イメージ向上につなげている事例です。
「and BLUE」のMSC/ASC認証の取得サポート
and BLUEは、MSC/ASC認証の取得サポートや、サステナブル・シーフードの紹介をしている企業です。
例えば、
- ・企業や飲食店に水産物を紹介・提供
- ・水産物をテーマにしたケータリング
- ・MSC/ASC認証の取得サポート
など幅広い仕事を請け負っています。
またMSCとASCが協働で取り組んだ「海藻CoC認証」の流通・加工の展開をスムーズにするサポートも開始。日本のサステナブル・シーフードを牽引する企業として注目されています。
MS&ADインシュアランスグループは「サスティナブル・シーフードデー」を開催
MS&ADインシュアランスグループでは、三井住友海上駿河台ビルの社員食堂で、毎月「サステナブル・シーフードデー」を設け、利用者に食事を提供しています。
同グループでは、「自然資本の持続可能性向上」を重点課題に上げ、実現に向けて取り組みを進めています。これは「SDGsはビジネスにおいてリスクでありチャンスでもある」ということを浸透させるのが目的です。
消費者だけでなく、社員の意識改革も行うことで、より生きやすい社会を目指しています。
水産メーカーの「ダイニチ」は認証取得で国際的に認知
ダイニチは、愛媛県宇和島市にある水産メーカーです。もともとは養殖用飼料の開発からスタートし、現在は多くの水産物を取り扱う総合水産メーカーとして業界を牽引しています。四国や九州を中心とした生産者と取引を行い、世界20ヶ国以上に水産物を輸出するようになりました。
また養殖のマダイとして世界初のASC認証を取得。2022年には、海のエコラベルとも呼ばれるMEL認証も取得し、国際的にも認知されるように。
多くの生産者と取引のある水産メーカーは、MSC/ASC認証の取得に向けた取り組みがおすすめです。
MSC/ASC認証を受けた魚を活用するレストラン「Sincere BLUE」
東京・原宿にあるフレンチビュッフェ「Sincere BLUE(シンシアブルー)」は、MSC/ASC認証を受けた魚を活用するレストランです。
日本の総漁獲量は、この30年で約3分の1にまで減少しています。しかし日本の水産物の将来を考えている飲食店はそう多くありません。そこで多くのシェフと相談し、サステナブル・シーフードに特化したお店を始めたそうです。
それだけでなく、知名度が低かったり傷みやすかったりなどで、市場に出回りにくい「未利用魚」も活用。取り扱いにくい魚であっても、美味しく調理して、多くの人から喜ばれています。
今後はサステナブル・シーフードを発信するレストランとして、注目を集めていくでしょう。
サステナブル・シーフード専門のBtoBサイトも登場
サステナブル・シーフードに注目が集まり、専門のBtoBサイトも登場しています。
株式会社シーフードレガシーでは、サステナブル・シーフードの売買に特化した日本初のBtoB専用Webサイト「Sustainable Seafood Catalog(サスシーカタログ)」を開設しています。
サスシーカタログでは、日本国内で調達できるサステナブル・シーフード、もしくはMSC/ASC認証の取得を目指す水産物のみを紹介しています。
新しいビジネスを開拓するサイトとして注目を集めており、今後は食品メーカーの仕入れ先としても重宝されるでしょう。
今後はMSC認証やASC認証が重要視される
今回はサステナブル・シーフードについて詳しく解説してきました。今後は、MSC/ASC認証を含め、環境に配慮したマークが重要視される時代に突入します。
よって食品メーカーは、環境に配慮した認証マークを商品に印刷して表示することが大切です。
環境問題に対する注目度は上がり続けているので、認証機関や業界団体等が承認している環境マークを調べてみてはいかがでしょうか。
その他の環境マークについては、下記のサイトにまとめておりまので、ぜひご覧ください。