【連載第27回】価格暴騰で消費者がどの様な対応を取るのか?(7)

公開日:2023年6月21日

コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。

今回も、『エンドゴンドラでのストーリ展開』という点について、お店は何をしているのか?を解説してみたいと思います。


近年では、「シーズン」(季節感)というものが非常にあやふやとなってきており、従来考えられていたものよりも早くなっている傾向が強く出てきています。例えば、「冷たい麵」の展開などでは、従来ですと5月中旬以降6月の梅雨入りにかけて売場を構築すれば間に合いましたし、終わりは十分に9月になるかならないかまで売場としての機能も果たせてはいました。が、近年では、4月末の大型連休の前には「冷たい麺関連」の商材についてエンドゴンドラ出の展開を行う事が増加してきています。反対に、9月くらいまで十分に機能していた売場が、旧盆期間を過ぎると直ちに陳腐化してしまい、例えばストレートのそうめんつゆなどは、旧盆期間を過ぎると一気に売れなくなり、9月に売れ残っている商品は、どれだけ値下げをしても売れ残る、というように、季節のサイクルが早くなっています。

その上で、お店としてストーリーを作るとすると、このようになります。シーズンインの頃は、余りまだ馴染みがないために、何を食べればよいのか?と言うことや気温も冷たい麺を好んで食べたくなるまでには上昇はしていません。が、シーズンの入り口で購入いただけるとなると、そのシーズンの多くの期間で購入いただいた商品(例えば、つゆなどは、一回で使い切ることは少ない)を活用していただけることになりますので、積極的に『初物』を購入いただく努力が必要となります。冷たい麵などでは、余り年ごとに新しい商品などは発売されるものではありませんので、従来の商品を使いつつ『食べてもよいかな?』と思っていただける商品などをゴンドラのメインに据えて、商売を行う事が求められます。

例えば、日本で古来から食べられている「麺」の種類でいえば、「うどん系」の商材であれば、気温が高くなると「細い麺(そうめんなど)」が好まれ、気温が低くなれば「太い麺(山梨の名物料理の「ほうとう」の麺など)」が好まれます。つまり、気温がまだ上がり切っていない時期に「冷たい麺」をお勧めするとすると、『乾麺のうどん』などをお勧めし、『ざるうどんがおいしい時期となってきました』のような文言でお客様のニーズを勝ち取ると言うことが求められ、気温の上昇と共に、メインの商材を細くしていき、最終7月の夏休み入りの頃には、完全に「そうめん一択」のような売り場構成を作るというようなことになります。気温や天候の状況を睨みながら、お客様に一歩先んじての提案をし続ける。これがエンドゴンドラの役割の一つです。

次回は、「家庭料理の定番(カレー、お好み焼きなど)」のエンドゴンドラでのストーリーについて考えてみます。

【連載第26回】価格暴騰で消費者がどの様な対応を取るのか?(6)

(次の配信は7月25日頃の予定です。) 


<プロフィール>

信田 洋二

1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。

 

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