コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。
今回は『売場で商品に関心を持ってもらう』ために、お店は何をしているのか?解説してみたいと思います。
定番の商品といわれるような商品であっても、お客様の好みなどによって、同じ分類の商品でもよく売れていたり、あまり芳しくなかったりと、そこにはメーカーさんとしても悲喜こもごもの状況が繰り広げられているものと思います。『またあそこの商品に棚を取られた』とか、『良い場所(棚)を貰っているのに売上が伸びてこない』など、多くのメーカーさんが、毎日の営業などのなかで、「何がいけないのであろう」と考えながら日々の商品設計などをされているのではないかと思います。
小売り側としては、ある意味では『売れてくれればどこのメーカーの商品でも良い』のがホンネであり、そこにはメーカーさんに対するこだわりなどは、実はそう重きを置いている訳ではありません。前面に出している所とすると『お客様が選んで(好んで買われて)おられる商品』ということが多くお聞きになる小売り側の声ではないでしょうか。それぞれの商品分類には、『代表選手』のような商材が必ず存在しており、例えば、『殺虫剤と言えば・・・』『カップラーメンと言えば・・・』というように、皆さんも頭の中で浮かんでいるような、ある意味では『誰でも知っている』商品が、それぞれの分類にはおおよそ存在しています。
しかし、それらの代表選手と言われる商品は、ここに至るまでに、相当長い年月をかけて代表選手とまで言われるように成長をしてきた商品であり、いわば『歴史の証人』の様な位置づけの商品ともいえます。それだけに、代表選手以外の商品が勝とうとすると、『何かしら』の別のウリとなるアピールのポイントや格段の機能・性能などを備えなければ、店舗側としてもアピールするポイントがなく、アプローチの使用がないというのが実情です。
問題は、それらの『アピールポイント」ですが、ややもするとメーカーさんから出されているアピールポイントの多くが、『こだわりの原材料や製法』『作りとしての強烈な思い』などが余りにも前面に出てきてしまい、店舗としても「もてあます」ことすら少なくありません。『何故お客様に伝わらないのか?』、メーカーさんから良くお聞きするフレーズですが、それには訳があります。店舗側もそうですが、情報提供の在り方について、今一度考えてみる必要があるのではないかと思います。多くの場合、商品が良く売れる際には、その多くで『どの様に使え(食べれ)ば、何が良いのか?』ということがハッキリとされているケースが、商品の売上に直結する内容です。
また、例えばエンドゴンドラでは、店舗としての提案をするための陳列がなされている場合が多いですが、そこで他の商品との組み合わせ等で、お客様にアピールを行うケースが多くあり、このような『全体としての提案』ができているエンドゴンドラでは、そのストーリー性でお客様から支持を受けるケースが非常に多くなってきています。
従来のような『単品の積み上げ』だけでは、お客様はなかなか反応して頂きにくくなってきています。「エンドゴンドラでのストーリー展開」。なかなか難しい課題かと思いますし、イメージしにくい所もあるかと思います。
これらについて、次号以降更に解説を加えていきたいと思います。
【連載第24回】価格暴騰で消費者がどの様な対応を取るのか?(4)
(次の配信は5月20日頃の予定です。)
<プロフィール>
信田 洋二
1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。
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