コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。
今回から、『売場で商品に関心を持ってもらう』為に、何をすべきか考えてみたいと思います。
皆さんが買い物に行かれる際に、必ず見られるのが『売場』ですが、おそらく詳細に「どこに何がある」ということを理解されておられる方はほとんどいらっしゃらないのではないかと思われます。お店からすると、「ここを見て!」という気持ちで売場を作っているケースが多いですが、なかなか普段からこと細かく売場の全てをご存じの方は多くはいらっしゃらないのが実情でしょう。
無理もありません。消費者として自分に用事がない売場については、そもそも関心もなく、買う用事もなければ、こと細かく見ることはないのではないでしょうか。例えば、お塩や醤油といった定番といわれる売場であれば、定期的に売場でご自分の欲しい(普段買っている)商品は、どの辺りに陳列されているかなど、おおよそのことはご理解されていると思いますが、では、それらの売場に陳列されている、『自身が買わない商品』については、どこまで「周りに目を向けて」売場を見られておられるでしょうか。どこまで、他の商品について認識されておられるでしょうか。大半のお客様は、消費者ご自身が(普段)買われる商品以外については、ほぼ見ることはないと考えてもよいくらいです。つまり、皆さんの商品も、来店されている大半のお客様にとってみれば、「見えて(認識されて)いない商品」のうちの一つということになります。
店舗には、売場規模(面積)によって、点数の多寡はありますが、非常に多くの商品があります。皆さんの商品についても、同じ分類の他社の商品も含めて、非常に多くの商品が陳列されています。その中で、皆さんの商品もありますが、いわば埋没してしまっています。
この値上げラッシュですが、とあるエリアで、近隣の住民の多くの方々から生のお声をお聞きしました。その際に多くのお客様がおっしゃっておられたこととして、『要るものはいるので、高くなっても必要なので買う。が、馴染みのないもの、見たこともないもの、不要なものは一切買わない(買えない)』というものでした。つまり、普段からの馴染みの商品であれば、値段が高くなったとしても買わざるを得ない。が、普段買わないようなものは一切買わないということです。この言葉は、非常に多くの示唆を含んでいます。
いつも買っているような商品であれば買う。しかし、新商品を含め馴染みのないものには手を出さない(買わない)ということです。物価が上がって、モノが売れない時代がいよいよ色濃くなっていますが、その中でも、必要なものにはお金を使い、それ以外は見てはいても買わない。という意識が強くなっています。
そこで、この状況をどの様にして打破していくか、打破すべきか。埋没してしまっている商品をいかに目立たせて購入にまで結び付けていくべきか。非常に難しい課題かと思いますが、実際にお店ではどのようにしているのかを次回以降解説していきたいと思います。皆さんも、是非ともお店で、普段買っている商品以外の商品についても、少しだけでも興味をもって、見てみてください。
【連載第23回】価格暴騰で消費者がどの様な対応を取るのか?(3)
(次の配信は4月20日頃の予定です。)
<プロフィール>
信田 洋二
1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。
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