【連載第1回】変容する中食業界で生き抜く惣菜戦略 ~店内加工を業績の柱に~

公開日:2024年3月26日 最終更新日:2024年3月25日

当用漢字である「総菜」、そのくくりの一部、和字である「惣菜」、成田惣菜研究所では店内で加工して販売するそう菜を「惣菜」と記し、工場などで大量に製造されるそう菜を「総菜」と記して棲み分けをしている。総菜は品揃えの領域とし、店内で加工された惣菜は、より個性があり、アイテム数は少ないものの、各店の売れ筋商品、業績の柱としての位置付けがより強くなければならない。

美味しさの目安に、出来立て・作り立ての時間的なものがあるが、揚げたての揚物、炊き立てのご飯など、再加熱にはない味、価値がある。作り置きが多い惣菜、外食と対比される部分も少なくないが、出来立てを提供することが前提の外食、注文を受けてから作るのであるから当然諸経費が加算されコストが高くなりやすい。

更に飲食スペースの確保、接客などの有料サービスがあり、コロナ禍以降も厳しい環境に置かれているが、ファストフードは惣菜のくくりに近い部分もあり、この所の業績はかなり上向いているようだ。

工場総菜の作り置き販売が大前提のコンビニエンスストアでも、店内加工の揚物などホットメニューが好調で、更に店内炊飯、お弁当や丼ぶりづくりにチャレンジする店舗も増え、イートインの活用で外食に迫る勢いも見受けられる。百貨店のイベント会場などでの実演を兼ねた販売は相変わらず好調で、集客・賑わいは購買の楽しさも倍増させ、その付加価値は大きい。

店内加工の惣菜は、あれもこれもと商品づくりを増やせば、当然作業効率は悪くなる。成田惣菜研究所も設立30年となるが、当初から店内加工の優先順位としてのアイテムに大幅な変化はなく、鶏の唐揚げやコロッケ、ポテトサラダ、お弁当なら鮭弁当なのである。まずは店舗規模に応じて上位からのアイテム数を厳選し、より磨きをかける工夫が欲しい。売れる商品なのだから値引きして販売することは、その価値を下げてしまう。廃棄もなく、売上も利益もしっかりと確保しなければならない。

次に季節アイテムである。春から秋にかけての売れ筋、冷たい麺類やサラダ・和え物を総菜オンリーでは数字は作れない。秋から冬の売れ筋、煮物や麺類・鍋のキットアイテム、売れるアイテムが僅かな粗利、総菜だけでは余りにももったいなく、売れるその時期だけでも店内加工惣菜にチャレンジしたい。

手不足と店内加工強化、相反する事案だが、将来的に生き残れそうなお店、企業は明確に見え始めている。益々競合が激化する総菜のくくり、今日の明日安易に出来ることではないが、優先順位をより明確に、お客様ニーズを的確に、迅速に捉えて行かなければ生き残れない。(つづく)

<プロフィール>

成田廣文(成田惣菜研究所所長/ナリタヤ代表取締役)

大学卒業後、アメリカを視察。コンビニンスストアトいう業態を知り感動する。1974年実家の鮮魚店を食品スーパーに業態変更して開店。77年食品スーパーの売上が半減、利益確保の手段としておにぎり、サンドイッチなどから惣菜の販売を開始。89年全国スーパーなどから、問合せが殺到。コンサルタント業務を開始。94年成田惣菜研究所を設立。顧客企業はスーパーなど全国800社に上る。自らも惣菜店を経営するかたわら、惣菜コンサルタントとして地方を飛び回る。成田惣菜研究所においての基本は『手づくり』。自営業者としての生き残り策の模索が、結果的に他にない実践的な惣菜ノウハウにつながり、今や、“日本一の惣菜コンサルタント”として時代に求められている。※お問い合わせはこちら