食品ロス削減と持続可能な流通を実現へ「3分の1ルール」見直しと独占禁止法の懸念 | ショクビズ!

食品ロス削減と持続可能な流通を実現へ「3分の1ルール」見直しと独占禁止法の懸念

公開日:2025.10.17 更新日:2025.10.18
ライター:ショクビズ編集部

食品流通業界で長年続く商慣習「3分の1ルール」。大量の食品ロスという深刻な問題に加え、独占禁止法の観点からもその見直しが喫緊の課題となっています。本記事では、3分の1ルールがもたらす課題と法的リスクを整理し、メーカーと小売りが協力して築くべき食品ロス削減と持続可能な流通の未来を考察します。

「3分の1ルール」が食品流通にもたらす課題と法的リスク

食品流通業界で長年定着してきた商慣習「3分の1ルール」は、製造から販売までの期間を短縮することで商品の新鮮さを保つ一方で、大量の食品ロスを生み出す主要因として、その見直しが喫緊の課題となっています。

近年、この商慣習が独占禁止法の観点、具体的には「優越的地位の乱用」の懸念から本格的に問題視され、業界全体での抜本的な改革が求められるようになりました。では、ルールの具体的な影響と法的な懸念点とはなんでしょうか?

「3分の1ルール」とは? 賞味期限設定の課題

3分の1ルールとは、賞味期限を製造日、納品、販売の3つの期間に均等に分割し、小売店への納品期限を賞味期限全体の3分の1以内、販売期限を3分の2以内とする商慣習です。

この期限を超過すると納品拒否や返品の対象となりますが、返品された商品はまだ食べられるにもかかわらず廃棄せざるを得ないという、大量の食品ロス問題を引き起こしています。

影響と食品ロス規模(卸・小売業)

農林水産省によると、依然として大量の食品ロスが発生しており、2023年度の事業系食品ロス量のうち、卸売業から9万トン、小売業から48万トンが発生したと推計されています(※1)。

食品ロス以外にも、下記のように企業のコスト増加や機会損失といった経営課題を業界全体にもたらしています。

■業務の複雑化とコスト増加
賞味期限が近づく商品の在庫管理に過度な注意が必要となり、業務が複雑化し、物流コストが増加します。

■機会ロスの発生
期限が短いことで、本来店頭に並べられたはずの商品が陳列できず、販売機会を失っています。

小売業者は、鮮度保持や売り場の回転率向上を目的にこのルールを定めてきましたが、その慣習が結果的にメーカーや卸売業者の過度な負担となり、大量の食品ロスや業務上の問題を引き起こしている現状は、無視できない状況にあると言えます。

(参考記事)「3分の1ルール」の見直しで加速する食品流通、安全性と食品ロス削減を両立へ

独占禁止法上の法的リスク「優越的地位の乱用」

公正取引委員会が2025年5月に発表した報告書の中で、「3分の1ルール」が独占禁止法上の問題となる可能性が示唆されました。

特に、メーカーと協議しないまま、小売り側が一方的に納品期限を設定した場合などは、独占禁止法の「優越的地位の乱用」にあたるおそれがあるとする見解を示しています。天災など業者に責任のない理由で納入できなかった場合に、一方的にペナルティを課す行為なども、法律上問題となる行為として厳正に対処するとしています。

昨今、ニュースでも取り上げられていた「欠品ペナルティ」も同様で、小売店からの発注に対して納品期限に間に合わなかった場合、機会損失を理由に製造業または卸業者が小売店に対して補償金の支払いなどを負うペナルティ商慣行が違反ではないかと問題視されたものです。
ペナルティを負わないよう、製造・卸売り業者が多く製造、納品することにより、廃棄量が増えることも課題のひとつです。

 持続可能な食品流通を目指す!メーカーと小売りが取るべき具体的な対策

「3分の1ルール」の見直しをきっかけに、食品流通業界全体で持続可能性を高めるための取り組みが加速しています。ここでは、メーカーと小売りの具体的な食品ロス削減対策を紹介します。

メーカーによる対策事例

鮮度保持技術の向上による賞味期限の延長

納品期限のルールに依存せず、商品の鮮度を保つための技術開発が進んでいます。

例えば、包装袋や容器の構造を工夫することで、鮮度保持技術を向上させたり、賞味期限を延長させたりすることができます。

■事例:サトウ食品株式会社では、酸素を吸収するハイバリアフィルムを餅の個包装に採用し、賞味期限を15か月から24か月まで延長することに成功しています(※2)。

▶ながモチフィルム

フードシェアリング等の多様な流通チャネル活用

ECサイトやスマホアプリを活用した販路拡大も有効です。

■事例:フードシェアリングサービス「Kuradashi」は、3分の1ルールの影響などで廃棄せざるを得ない商品などを消費者へ手軽な価格で販売しています。
売上の一部は社会貢献活動に寄付されるため、SDGs推進やブランド価値向上にも繋げることができます。(※3)

参考引用:▶Kuradashi

小売りによる対策事例

納品期限の柔軟化(「2分の1ルール」への緩和)

納品期限を商品の特性に応じて柔軟化する取り組みは、最も直接的な対策です。
例えば、納品期限を3分の1から2分の1に緩和することで、メーカー側の出荷可能期間を延長できます。 2022年10月末までに納品期限の緩和に取り組んでいる、または予定している小売事業者は240事業者に上り、業界全体での意識が浸透してきていることがうかがえます(※4)。

DX活用による需要予測と発注の最適化

AIや気象データを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)により、需要予測の精度を向上させ、発注量を最適化することも食品ロス削減に貢献します。
■事例:日本気象協会とソフトバンクが協業で行うAI需要予測サービス「サキミル」では、高精度で来店客数を予測することで、小売りや食品業界特化のアルゴリズムを用いて、メーカーの供給量と小売りの需要量を照らし合わせ、食品ロスを抑制する取り組みに活用されています(※5)。

参考引用:▶人流・気象データを活用したAI需要予測サービス「サキミル」

消費者への「てまえどり」喚起と啓発

店頭で賞味期限の近い商品から購入してもらう「てまえどり」を推奨するなど、消費者側の意識と行動を変えるための啓発活動も重要です。これにより、廃棄個数の改善が確認されています(※6)。

業界全体で取り組むべき食品ロス削減と共存共栄の道

「3分の1ルール」の見直しは、単に一方の負担を減らすだけでなく、食品ロス削減という社会貢献、さらには企業のブランドイメージ向上にもつながる大切な取り組みです。

これからの時代、メーカーと小売りが一方的な取引関係に終始するのではなく、食品ロス削減と持続可能な社会の実現という共通の目標に向けて協力し合うことが不可欠です。お互いに歩み寄り、新たな商慣行を築いていく姿勢こそが求められています。

実際に、セブン&アイグループでは、取引先のメーカーと連携し、常温加工食品全体に「2分の1ルール」の適用を拡大するなど、流通業全体で商慣習の見直しを広めています(※7)。
参考 ▶株式会社セブン&アイホールディングス食品ロス削減について

今後さらにサプライチェーン全体で連携し、「3分の1ルール」の課題に向き合っていくことが、より持続可能で豊かな未来につながっていくことと期待されます。

【参考資料】

(※1)農林水産省「事業系食品ロス量(2023年推計値)を公表」
(※2・3・6)食品ロス削減関係参考資料(令和6年6月21日版)
(※4)農林水産省「納品期限の緩和を進める事業者が大幅に増加!」
(※5)AI需要予測サービス「サキミル」

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