産地偽装問題で注目された「長いところルール」産地表示適正化のために生産者・メーカーに求められる対応とは | ショクビズ!

産地偽装問題で注目された「長いところルール」産地表示適正化のために生産者・メーカーに求められる対応とは

2022年に話題となったアサリの産地偽装問題をきっかけに、食品表示法で運用されている「長いところルール」の見直しと再発防止への対策が進められました。

それ以降、ルールの厳格化や自治体・企業による産地表示適正化への動きが強まりました。

本記事では、今一度「長いところルール」について確認し、生産者や食品メーカーが実践できる正しい産地表示のための対策について解説します。

「長いところルール」とは

「長いところルール」とは、生鮮食品の生育地が複数の場合などに、飼育や養殖の期間が最も長い場所を「原産地」として表示をするルールです。

例えば、中国で採取したアサリを生きたまま日本に輸入し、日本の浜で育てた後に出荷する場合、生育期間全体のうち、中国で生育した期間の方が長ければ「中国」、逆に日本での生育期間の方が長ければ「日本(又は都道府県等)」と表示できます。

食品の原産地表示ルール

そもそも食品は、どのようなルールで原産地の表示がなされているのでしょうか?

食品表示法の食品表示基準をもとにして定められている国の基準は以下の通りです。

食品ジャンル原産地の表示ルール
水産物(生鮮)領海内や排他的経済水域内で漁獲した場合:当該国
公海上で漁獲した場合:漁獲した船籍国
複数の場所で生育し、捕獲した場合:生育期間が最も長い国・地域
畜産物(牛・豚・鶏など)飼育期間が最も長い国・地域
加工食品国内製造の場合:原材料に占める重量割合が最も高い原材料の原産地を表示。2種類以上の原材料を混ぜて使用している場合は、多い順に表示など別途ルールあり
輸入品の場合:原産国名の表示が必要となる。原材料が加工食品の場合は、その加工食品の製造地を表示

以上から、一部の食品で「長いところルール」の適用がなされる場合があることがわかります。

また、「長いところルール」は農産物には適用されません。基本的に収穫した地域が原産地とされます。農産物は基本的に生産される場所と収穫地が同じであるという前提があるためです。

ただし、一部例外として、中国からの輸入が急増している菌床シイタケは、植菌地(菌を植え付けた場所)を原産地として表示することが義務付けられました。長い期間を中国で栽培されたにもかかわらず、日本で収穫することで「国産」と表示できることが問題視されていたことが背景にあります。

このように、一定の決まりはあっても食品ごとに規定が異なる場合があるので、注意しましょう。

「長いところルール」を悪用した産地偽装問題とその影響

2022年に発覚したアサリの産地偽装問題

「長いところルール」が社会問題として大きく報道されたのが、2022年のアサリ産地偽装問題です。

当時、アサリは「長いところルール」の適用が認められていました。

今回の事例では、外国産アサリを輸入し、一時的に国内で畜養をおこなうことで、国産と偽って出荷していたとみられています。

また、通常「長いところルール」を適用する場合には、生育期間は輸入業者や国内の生産者への確認が必要とされています。しかし実際には、書類など事実を証明するものがない場合が多いため、このようにルールが悪用されてしまったと思われます。

アサリの産地偽装は限られた業者によるものでしたが、影響は業界全体におよび、現場に混乱が起こりました。

アサリの「長いところルール」厳格化

問題を受け、2022年3月18日に消費者庁および農林水産省は、アサリの長いところルールの適用に関して、ルール厳格化などの対策を行いました。

規定では、

・貝類を短期間一定の場所に保存することを「蓄養」とした上で、蓄養は「長いところルール」で算定する期間に含まれないこと

・輸入したアサリの原産地は、蓄養の有無にかかわらず、原則、輸出国となること(例外あり)

などを明示しました。

現場で広がる、新しい産地表示の取り組み

アサリの産地偽装問題を受け、自治体や企業などでは、産地表示適正化を進める動きが加速しました。

産地表示適正化に向けたさまざまな取り組みを紹介します。

デジタルによる情報管理

一部の自治体や農業団体、卸売市場などが、デジタルを活用した情報の一元管理により、産地の情報を正確に管理するシステムの構築を進めています。出荷者・品目・産地・収穫日などをデジタルでひもづけ、必要に応じて、誰が・いつ・どこで作ったものかを追跡できる仕組みです。

アサリの産地偽装問題が発生した都道府県では、漁業者や企業と協力し、QRコードを活用したトレーサビリティシステムを開発しました。他の産地のアサリが途中で混入しないよう徹底した流通管理を行い、消費者はQRコードから産地証明書を見て購入できる仕組みです。サプライチェーン全体での連携により、流通の透明性を確保できるようになりました。

さらに、農林水産省のICT活用事例では、野菜や果物などの農産物について、生産地の情報や作業履歴をスマートフォンやクラウドで記録・管理する事例も紹介されています。これにより、情報の精度と即時性が格段に高まりました。

小売や外食産業でも産地情報の開示が求められるように

一方、小売業者や外食産業では、他社との差別化の手段として「こだわりの産地」「信頼できる生産者」といったキーワードが打ち出されることが増えています。そのため、彼らの仕入れ先(生産者やメーカー)に対しても、正確で具体的な産地情報の提出が求められるようになってきました。

今後は、サプライチェーン全体で「どこで作られたのか」を明確に伝えるための仕組みづくりが、より一層重要になるといえるでしょう。

今後、生産者・メーカーに求められる対応とは

一元的な情報管理とさらなるデジタル化

産地表示に対する信頼性がより厳しく問われる中、生産者やメーカーでは、より正確な情報管理体制の整備が求められています。まず基本となるのが、ロット管理や入出荷・加工履歴などの一元的な記録です。

前述もしましたが、紙ベースの管理では限界があるため、近年はクラウドや専用ソフトを活用したデジタル管理への移行が進みつつあります。

これにより、流通段階や消費者からの問い合わせにも即座に対応できるようになります。

流通業界全体で情報共有の見直しを

流通業者との情報共有体制の見直しも不可欠です。従来の口頭やFAXといった曖昧な伝達方法から脱却し、産地情報の記録を明文化したり、取引先と共通のシステムで履歴情報を管理したりする取り組みが広がっています。特に卸売業者を介した流通が多い水産・農産物では、流通段階での産地混入リスクを防ぐためのルール作りが急務です。

さらに、自主的なラベル監査や点検の実施も、信頼確保の重要な一手です。トレーサビリティや表示ルールを定期的に社内で確認し、不備や見落としを早期に発見する仕組みが必要です。

近年はこうした取り組みを、ブランディングや差別化戦略の一環として活用する企業も増えてきました。たとえば「正確な産地表示」「履歴が見える安心感」といった価値を前面に出し、商品や企業の信頼性を訴求する動きです。単なるルール遵守にとどまらず、「誠実さ」をブランドの一部として伝えていくことが、新たなスタンダードになりつつあります。

産地偽装のない食品業界を目指して

「長いところルール」は、あくまで例外的かつ便宜的なルールです。アサリの例のように、ルールを悪用し消費者を欺くことには決して利用してはいけません。

政府による法的ルールの見直しはもちろん、サプライチェーン全体で産地表示適正化に取り組んでいく必要があります。

食品業者としては、最新の表示基準に即した食品表示で、ブランドの信頼と透明性の確保に努めていく必要があるでしょう。

地域や企業の自主的な取り組みで、消費者に安心して食品を手に取ってもらえるようにする仕組み作りが大切です。

この記事のライター

ショクビズ編集部

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