米FDAが着色料赤色3号使用禁止を決定。食品業界への影響と対応策とは

米食品医薬品局(FDA)が、合成着色料の「赤色3号(エリスロシン)」の食品・経口医薬品への使用を禁止すると2025年1月15日に発表しました。
菓子類や飲料水など多くの食品に含まれている色素です。ここでは、禁止となった背景や今後の影響についてなどを解説いたします。
禁止の概要と流れ
食品業界にとって大きな転換点となる出来事です。
長年、食品に鮮やかな色合いが出ると使用されてきた赤色3号ですが、その安全性に関する懸念が再燃し、今回の決定に至りました。
食品業界としては、FDAの発表内容を理解し、赤色3号の安全性に関する科学的根拠、食品業界への影響、そして今後の対応策が必要となります。
FDA発表の背景と詳細
アメリカの食品メーカーに対して
・2027年1月15日までに食品への使用を中止
・2028年1月18日までに経口医薬品への使用を中止
上記に伴い、代替となる食品添加物で補うことが求められるそうです。
FDAは、動物実験の結果、赤色3号が甲状腺腫瘍を引き起こす可能性があることを根拠に、今回の禁止措置を発表しました。
具体的には、アメリカの食品メーカーに対して2027年1月15日までに食品への使用を、2028年1月18日までに経口医薬品への使用を中止するよう求めています。
この決定に至った背景には、長年にわたって赤色3号の安全性に関する懸念が根強く存在していたことがあります。特に、発がん性との関連性が指摘されており、市民団体などから禁止を求める声が強まっていました。ちなみにFDAは、30年以上前から化粧品への赤色3号の使用を禁止しています。
アメリカ政府の着色料使用禁止への考えは、今後さらに厳しくなると考えられ、規制が強化されれば、アメリカへ輸出する日本企業の商品にも大きく影響してきます。
赤色3号とは?
赤色3号は、合成着色料の一種で、食品や化粧品などに広く使用されてきました。英語ではRed №3といいます。
食品表示では「赤色3号」や「着色料 (赤3)」などと表記されています。
鮮やかな赤色を出すことができ、コストも安いため、食品メーカーにとっては魅力的な着色料でした。しかし、その一方で、健康上のメリットが無いと、安全性に関する懸念が常に問題として取り上げられてきました。
赤色3号の安全性に関する科学的根拠
FDAの決定は、動物実験における甲状腺腫瘍発生との関連性が主な根拠となっています。しかし、ヒトへの影響については、まだ十分な科学的データが揃っていると認められたわけではありません。
ヒトにも有害である可能性が疑われているというのが現状です。
食品業界への影響
赤色3号の使用禁止は、食品業界に以下のような影響を与えると考えられます。
製品 reformulation
赤色3号を使用していた製品のレシピを改定し、新たな着色料への置き換えが必要となります。
コスト増加
新しい着色料への切り替えは、コスト増加に繋がる可能性があります。
消費者の反応
赤色3号不使用の製品に対して消費者の反応を注視し、マーケティング戦略の見直しが必要となる場合があります。
規制対応
FDAの規制を遵守するための体制構築が求められます。
日本政府の考え
アメリカだけでなく、EUなどでも使用が制限されていますが、現時点(2025年2月現在)で消費者庁は、全面的な禁止を決定しているわけではありません。
天然に存在しない添加物に分類したものの、日本では食品添加物としての使用が認められているため漬物などにも使用されています。日本に住む1人あたりの摂取量は極めて少なく、健康被害などの報告はないということです。
注:日本では、食品、医薬品、化粧品への利用が認可されている。(2025年1月現在)
▼参考
今後の対応策
食品業界が取り組むべき対応策は以下の通りです。
代替着色料の調査・導入
天然由来の着色料や、安全性が高いとされる合成着色料への切り替えを検討する。
製品開発
新しい着色料を使用した製品の開発や、着色料を使用しない製品の開発を進める。
消費者への情報発信
製品改定に伴う変更点や、安全性への取り組みについて、消費者へ積極的に情報発信する。
サプライチェーンとの連携
原材料メーカーや包装資材メーカーなど、サプライチェーン全体で連携し、スムーズな移行を進める。
法規制への対応
FDAの規制を常に把握し、法令遵守を徹底する。
代替色素
赤色3号のように、発がん性が懸念されるなど石油由来のものを避けておけば安全性が確保できます。また、近年、世界的に自然派が指示されていることも鑑みると自然由来に変更することで、企業やブランドイメージアップの効果も期待できます。
下記が自然由来の主な色素
- コチニール色素 → 中南米のエンジムシという昆虫から抽出された着色料
- ビートレッド → 地中海の沿岸地方が原産の作物「ビート」の根から抽出された着色料
- アナトー色素 → 中南米原産ベニノキの種子の果皮から抽出された着色料
- パプリカ色素 → 中南米原産パプリカ果実から抽出された色素
- アントシアニン系色 → フラボノイド系の植物色素(ブルーベリーや紫芋、ブドウやイチゴ、チェリーなど)
まとめ
FDAの赤色3号使用禁止決定は、食品業界にとって大きな課題となる一方で、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性も秘めています。
欧米(EU)では、その他の合成着色料に対しても厳しい見方を示しています。
国際的にも食に対して安全性の意識が高まる中、消費者ニーズに応える新たな製品開発や、サステナブルな原料の活用など、革新的な取り組みが求められています。海外に販路を広めようとしている場合は、情報と内容を把握することが必須です。
※添加物不使用に関するガイドライン(令和6年4月~施行)では、「合成〇〇〇」という言葉の使用は不可となっていますが、ここでは、分かりやすく「合成着色料」と表現しています。
着色料の表示については、消費者庁食品表示企画課が公開している資料等で「添加物表示類型2」をご確認ください。
この記事のライター

ショクビズ編集部
企業の主な実績
オリジナルシールの企画・作成 10,000社以上
オリジナル紙箱・化粧箱・パッケージの企画・作成 11,000製品以上