【速報】「食料システム法」成立!2026年4月施行。持続的食料共有のためコストを反映した価格設定に。

2025年6月11日、食料品・農畜産品の生産コストを考慮し、適切な取引価格に努力義務を課す「食料システム法」が参議院本会議で可決・成立しました。2026年4月の全面施行を控え、国内の食料システムは転換期を迎えることとなります。この記事では、新法がもたらす具体的な変化と、食品関連事業者が取り組むべき対策、そして新たなビジネスチャンスについて徹底解説します。
簡単に説明すると・・・
生産コストの上昇分を商品価格に転嫁しやすいよう、また、食料品・農畜産品の適切な取引価格に向けた協議を「努力義務」とし課すものです。
昨今の物価高でコストが上昇した分、価格転嫁を促すために、売り手側が価格に関する協議を申し出ることが出来、それに対して誠実に対応することを努力義務としたものです。品目によっては、「コスト指標」を作成するとしています。
近年の世界情勢等の影響を鑑みたもので、輸入に頼り切っていると食料や原料が不足し、それに伴い価格が高騰するといった負の連鎖を引き起こします。また、大きな災害で食糧品等が作れなくなったりした時に困らないようにするためのルールでもあります。国内生産量を上げることも重要視されているものです。
「食料システム法」が食品業界にもたらす好影響
単に価格交渉のルールを変えるだけでなく、食品サプライチェーン全体の健全化と持続可能性の向上に寄与することが期待されます。
適正な価格形成の実現
この法律の核心は、生産現場のコストが適切に価格に反映されるようになることです。
生産コストの適正な反映
原材料費の高騰、人件費の上昇、物流コストの増加など、食品製造にかかる費用は年々増加しています。新法によって、生産者や食品メーカーは、これらのコストを根拠にした価格交渉を行いやすくなります。これにより、持続可能な生産・供給体制の構築が促進され、生産現場の疲弊を防ぐことにつながるでしょう。
価格転嫁の円滑化
これまで困難だったコスト上昇分の価格転嫁が、「法的努力義務」として明記されたことで、交渉の場でより堂々と主張できるようになります。これにより、メーカーや生産者が不利益を被るケースが減少することが期待されます。
サプライチェーン全体の透明性向上
価格交渉における「コスト考慮」は、サプライチェーンにおける情報の透明化を促します。
コスト情報の共有
売り手と買い手の間で、製品の製造・流通にかかるコスト内訳に関する情報共有が進むと予想されます。これにより、サプライチェーン全体のどこに非効率な点があるのかが明確になり、具体的な改善策を共に検討するきっかけとなるでしょう。
相互理解の深化と信頼関係の構築
コストの具体的な数字を共有することで、取引先がおかれている経営状況への理解が深まります。これは、単なる取引関係を超え、より建設的で長期的なパートナーシップの構築に繋がるはずです。
持続可能な食料供給への貢献
適正な価格形成は、日本の食料供給体制そのものの強化に繋がります。
生産者の経営安定化と成長
適正な価格で取引されることで、生産者の経営が安定し、後継者育成や新しい技術への投資が進みやすくなります。これは、食料自給率の向上や地域経済の活性化にも貢献し、日本の食料安全保障の強化に寄与します。
食品廃棄の削減
不当に低い価格での取引が抑制されれば、生産段階での無理な増産や、流通段階での不適切な管理による食品廃棄の発生を抑える効果も期待できます。これは、SDGs(持続可能な開発目標)達成にも繋がる重要な側面です。
「食料システム法」対応における食品業界の注意点
「努力義務」の実践と具体的な行動
「努力義務」という言葉の解釈と、それをどのように実践するかが鍵となります。
具体的なガイドラインの策定
「どこまでが努力とみなされるのか」という点は、今後業界団体や行政による具体的なガイドラインが示されることで明確化されていくでしょう。各企業は、これらの動向を注視し、自社の価格交渉プロセスにどう組み込むかを検討する必要があります。
コストデータの明確化と準備
コストを考慮した価格交渉に臨むためには、その根拠となる精緻なコストデータが不可欠です。原材料費、人件費、製造コスト、物流費など、各コストの計算精度を高め、変動要因を分析できる体制を整えることが求められます。
交渉力の格差への対応
長年の商慣習で培われた交渉力の差は、すぐには解消されません。
中小企業の交渉力強化
大手小売業者などと比較して交渉力が弱い中小の食品メーカーや生産者は、この法律を背景に、いかに自身の立場を強化するかが課題となります。業界団体や行政による交渉支援や情報提供がますます重要になるでしょう。
一方的な要求の抑制
買い手側も努力義務を負いますが、これまでのような「買い手優位」の交渉慣行がすぐに変わるとは限りません。売り手側は、法を盾に一方的な価格上昇を要求するのではなく、建設的な対話を通じて相互理解を深める姿勢が成功の鍵となります。
消費者への丁寧な説明と価値訴求
価格転嫁の結果、一部の食品価格が上昇する可能性もあります。消費者への理解促進が不可欠です。
価格上昇への説明責任
もし食品価格が上昇する場合、企業は消費者に対し、「なぜ価格が上がったのか」「持続可能な食料システム構築のために必要なこと」などを丁寧に説明する責任があります。透明性の高い情報開示が求められます。
「価値」の積極的な訴求
単に価格が上がるというネガティブな印象を与えるのではなく、適正な価格がもたらす安心・安全な食品の提供、環境負荷の低減、生産者の生活安定といった「見えない価値」を積極的に消費者に訴求していくことが、長期的な自社ブランドの信頼に繋がります。
取引慣行全体の徹底的な見直し
価格交渉だけでなく、取引関係全般を見直す良い機会です。
長期的なパートナーシップの構築
目先の価格だけでなく、サプライヤーとの長期的な安定供給、品質維持、共同での新商品開発など、より強固なパートナーシップを築く視点が重要です。
契約内容の再確認
価格交渉だけでなく、契約期間、支払い条件、返品条件など、これまでの契約内容全体を精査し、新法の趣旨に沿った形に見直すことが求められます。
持続可能な日本の食料システムの未来へ
「食料システム法」は、日本の食品産業がより持続可能で強靭なサプライチェーンを構築するための大きな一歩です。この法改正の意図を深く理解し、適切な対応を講じることは、各企業にとって新たなビジネスチャンスを掴み、同時に社会貢献を果たす絶好の機会となるでしょう。
この新しい波にどのように対応し、未来の食料システムを作り上げていくか、新たなビジネス戦略を想定し考えることが、これからの食品産業をリードする鍵となるのではないでしょうか。
参考:関連資料
農林水産省「合理的な費用を考慮した価格形成について」
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/kikaku/kakaku_keisei/attach/pdf/imdex-63.pdf
この記事のライター

ショクビズ編集部
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