小規模食品メーカーが輸出を始めるための基礎知識と成功事例

海外市場への進出は、中小企業の成長戦略のひとつとして注目されています。
特に日本企業にとって、海外市場での成功はブランド力の向上や新たな収益源の確保につながるはずです。
一方で、中小企業は資金や人員が限られているため、成功するためにはしっかりとした戦略を立てなければなりません。
そこで本記事では、日本の食品メーカーがどのように海外展開をしていけばいいのか解説します。
小規模食品メーカーでも輸出ビジネスは可能?

規模の小さい食品メーカーでも海外輸出は十分に可能です。
その理由は、インターネットを活用したオンライン販売の普及により、世界中のユーザーにアプローチしやすくなったからです。
さらに、オンライン商談会や※ウェビナーを活用すれば、海外バイヤーと直接コミュニケーションを取る機会も増えます。
越境ECサービスや物流サポートが充実し、国際配送が容易かつ安全になったことも大きな要因です。加えて、日本の食品は海外でも人気が高く、信頼を得やすい特徴があります。
これらの要素をうまく活用すれば、中小企業でも海外輸出をスムーズに始められます。
※ウェビナーとは、ウェブ(Web)とセミナー(Seminar)を組み合わせた造語でオンラインセミナーのことです。
中小企業が海外輸出を始めるメリット3つ
中小企業が海外輸出を始めるメリットを紹介します。
販路拡大による売上アップ
国内だけでは限られた市場しかカバーできませんが、海外輸出をすると新しい顧客層にアプローチできます。これにより、売上アップが期待でき、事業規模の拡大も見えてくるでしょう。
さらには、販路を広げるとリスク分散にもなり、長期的な安定経営を実現する土台となります。こうした点から、海外輸出は中小企業にとって大きなチャンスといえます。
国内市場に依存しない販売
国内市場だけに頼ると、景気の変動や季節要因で売上が不安定になりがちです。
しかし、海外市場に進出することで、異なる経済状況や季節パターンを持つ国々と取引できます。ひとつの市場で問題が発生しても、他の市場で補えるリスクヘッジになるはずです。
こうした理由から、海外輸出は中小企業の持続可能な成長を支えてくれるでしょう。
ブランド力の向上
海外市場に進出すると、国際的な認知度が高まり、ブランド力が向上します。
海外での成功は国内でも評価されやすく、日本でのブランドイメージ強化にも効果的です。
また、海外の需要に対応する中で、商品の品質が向上し、結果的にブランド全体の価値が高まる可能性もあります。
こうした活動を通じて、中小企業でも強力なブランドを築くことができ、長期的な成長につながります。
海外輸出を始めるための具体的なステップ

海外輸出を始めるためのステップを紹介します。
ステップ①自社のリソースを整理する
海外輸出を検討する前に、まずは自社のリソースを整理しましょう。
海外展開には、展示会参加費や海外向けの広告費など、予算が必要です。また、現地対応ができる人材の確保も欠かせません。
そこで、まず現在の予算やスタッフのスキルを洗い出し、どの部分に投資が必要かを明確にします。リソースを把握することで、今後の施策を効率的に選択・実行できるはずです。
ステップ②自社の商品が輸出に適しているか調べる
海外輸出を始める前に、自社の商品が輸出に適しているかをしっかりと調べましょう。
賞味期限の確認
自社商品の賞味期限が、現地の要求基準に合っているかを確認します。例えば、自社商品の賞味期限が3か月で、ターゲット国の希望する賞味期限が12か月の場合、期限を延ばさなければなりません。ただし、生鮮食品の場合は空輸を利用することで、賞味期限の短さをカバーできる場合があります。
生産量・輸出量
1回に出せる輸出量が、国際輸送費をカバーできるかも確認しておきましょう。少量だと輸出手数料が高くなり、コストに見合わなくなるケースがあります。適切な生産量を確保して、効率的な輸出を目指してみてください。
温度帯
商品の温度帯も輸出コストに大きく関係します。特に冷凍品の場合、国によっては混載便が利用できないことも。すると1コンテナ単位での輸送が必要になり、輸送コストが増加する可能性があります。
添加物
国によって許可されている添加物の使用基準が異なるため、事前に調査を行いましょう。例えば、香港ではクチナシ色素や紅花色素、甘草など特定の添加物が禁止されています。
これらを無視すると輸出が拒否されるケースもあるため、商品の成分表示を見直し、必要に応じて改良を行いましょう。
法規制・認定施設
食品のジャンルによっては、国の認定を受けた加工施設が必要となる場合があります。特に畜産物や水産物などは、厳しい基準が設けられています。例えば、フグ(河豚)のように輸出先が限られている食品もあるので注意が必要です。自社の商品が現時点で輸出可能かどうか、そして法規制上の問題がないかを事前に確認しておきましょう。
ステップ③ターゲット国を決める
自社の商品に合わせてターゲット国を絞り込みます。
候補となる国を複数決めたら、それぞれの国における輸出・輸入の規制について調べましょう。
特に海外では、原材料や添加物に関する規制が厳しい場合があり、これにより輸出自体ができないケースもあります。
例えば、特定の添加物が禁止されている国もありますので、事前にしっかりと調査しなければなりません。
このような情報を事前に入手し、輸出可能な製品や市場を慎重に選んでみてください。
ステップ④ターゲット国の市場調査
ターゲット国の市場を調査し、その国の消費者が好む食品や味付け、パッケージデザインを把握します。
あわせて、競合他社の動向をチェックすると、自社の強みや差別化ポイントが明確になります。
文化的な違いを考慮し、現地の習慣や嗜好に合った商品展開を検討してください。
ステップ⑤行政のサービスや補助金の活用を検討
日本政府や地方自治体は、中小企業の海外展開をサポートするために、さまざまな支援制度を用意しています。
例えば、輸出にかかる費用をサポートしてくれる補助金や、専門家によるコンサルティングサービスの提供があります。
【補助金や行政サービスの一例】
中小企業庁:海外販路開拓支援
独立行政法人 中小企業基盤整備機構:海外展開ハンズオン支援
中小企業庁及び、独立行政法人中小企業基盤整備機構:ものづくり・商業・サービス補助金
これらの支援を利用することで、初期投資を抑えつつ、安心して海外市場に挑戦できます。
ステップ⑥販売戦略を練る
次に販売戦略を立てます。
現地市場で受け入れられるよう、パッケージデザインや商品の内容、味付けを調整しましょう。
例えば、現地の嗜好に合った味付けやデザインを導入すれば、消費者に受け入れられやすくなります。
また、海外の商社を通じて輸出する(間接貿易)場合は、現地のネットワークやノウハウを活用できるメリットがあります。一方、直接貿易では中間マージンがかからないため、利益率が高くなるのが利点です。
自社のリソースや目標に合わせて、最適な方法を選びましょう。
ステップ⑦価格設定、営業資料の作成
輸出する商品が決まったら「価格設定」と「営業資料の作成」を進めていきます。
価格設定では、ターゲット国や競合他社の価格を調査した上で、適切な設定を行います。
営業資料は、現地の文化や消費者の好みに合わせた内容が重要です。商品の特徴や強みをわかりやすくまとめ、バイヤーや顧客にアピールしてください。
ステップ⑧営業活動
営業活動では、現地のバイヤーや販売代理店と積極的に連絡を取り、自社商品の魅力をアピールします。
展示会や商談会に参加して、幅広い顧客層にアプローチしていきましょう。
最近では、オンライン営業の活用も一般的になっています。とくにリソースが少ない中小企業の場合、オンラインを利用した営業は有効な手段です。
ステップ⑨輸出に必要な手続きや書類の準備、ラベルの対応
最後に、輸出の手続きや書類の準備、ラベルの対応を行っていきます。
例えば、輸出申告書や輸出許可証、包装明細書などを用意する必要があります。
また、現地の規制に合わせたラベル対応もしなければなりません。ラベルには成分表示やアレルギー情報、現地言語での説明が求められるケースが多いです。
難しい場合は、専門家のサポートを受け、漏れがないように慎重に進めましょう。
中小食品メーカーが輸出を成功させるポイント
中小食品メーカーが輸出を成功させるポイントを解説します。
信頼できる現地パートナーを見つける
海外輸出で成功するためには、信頼できる現地パートナーを見つけましょう。
現地の商社や代理店と連携すれば、効率的に商品を販売できるだけでなく、定期的なサポートを受けられます。
これにより、言葉の壁や商習慣の違いによるトラブルを防ぎやすくなります。
海外向けの国内商談会・展示会への参加
国内で開催される海外向けの商談会や展示会へ参加してみましょう。
いきなり現地の見本市に行くのはハードルが高いですが、日本国内なら安心して参加できます。
例えば、JETROでは海外輸出向け展示会・商談会を定期的に開催。このような国内イベントでは、海外のバイヤーと直接つながるチャンスがあります。
また、他社の成功事例を学べる場でもあり、輸出のノウハウを身につけるのに最適です。まずは国内の安全なステップから始めて、徐々に海外市場への展開を目指しましょう。
現地の食文化・宗教的背景への配慮
ターゲット国の食文化や宗教的背景を理解するのも大切です。
例えば、イスラム圏ではハラール認証、ユダヤ教ではコーシャ認証が求められる場合があります。宗教によって、食べてよいものや食べてはダメなものが異なるため、細心の注意をはらわなければなりません。
さらに、食文化に合わせた味付けや食べ方の工夫も大切です。辛さの調整や現地の好みに合ったパッケージデザインに変更することで、消費者に受け入れられやすくなります。
輸出に成功した中小企業の成功事例
海外輸出に成功した中小企業の成功事例を紹介します。
Instagramの発信で世界中から注文殺到の「ヤマロク醤油」

■画像引用元:ヤマクロ醤油 HP(https://yama-roku.net/)
瀬戸内海に浮かぶ小豆島のヤマロク醤油(香川県)は、150年の歴史を持つ木桶仕込みで醤油を製造しています。その独特の風味が評価され、現在では米国やフランスなど10カ国以上で販売されています。
輸出成功のきっかけのひとつが、Instagramを活用したPR活動です。フォロワー数は6万人(2024年12月現在)を超え、その約7割が海外アカウントです。醤油の仕込み風景や木桶の魅力を動画で紹介し、多くの「いいね」を獲得。
伝統的な製法と高品質な醤油の魅力を視覚的に伝えることで、グローバル市場での認知度が向上しました。
ミシュランシェフに選ばれるお酢「飯尾醸造」

■画像引用元:飯尾醸造 HP(https://iio-jozo.co.jp/)
京都府宮津市の飯尾醸造が製造する「富士酢プレミアム」は、ミシュランシェフに選ばれるお酢として注目を集めています。
農薬不使用の米と水のみを原料にすることで、大吟醸のような繊細で奥深い味わいに仕上がります。この高品質な米酢は、国内外のミシュランシェフにも愛用され、現在では品薄状態が続くほどの人気です。
また飯尾醸造は、商品自体の魅力だけでなく、酢飯の品質向上を目的とした「世界シャリサミット」を開催。このような取り組みが国内外での認知度向上につながり、特に海外市場では高品質な調味料としての地位を確立しています。
アジア市場でハチミツの販路を拡大した「杉養蜂園」

■画像引用元:杉養蜂園 HP(https://sugi-bee.com/)
熊本県熊本市にある杉養蜂園は、アジア市場でハチミツの販路を拡大しています。
2017年7月にはタイ・バンコクに出店し、その後はシンガポールやフィリピンなどにも展開。アジアの商圏を広げつつあります。
杉養蜂園が海外進出で成功を収めた要因は、フィリピンを拠点に百貨店事業を手がける「Educar Holdings」とフランチャイズ契約を結んだ点にあります。同社は約500店舗を運営しており、そのネットワークを活用できる点が大きな強みです。
Educar社は杉養蜂園の商品に感銘を受け、進出の提案を行った点もポイントです。
地方メーカーであっても、海外市場に大きなインパクトを与えられる良い事例といえます。
伊豆産のわさびを海外展開「カメヤ食品」

■画像引用元:カメヤ食品 HP(https://kameya-foods.co.jp/)
静岡県に本社を置くカメヤ食品は、伊豆産のわさびを海外展開しています。
同社の強みは、地元伊豆産の高品質なわさびを使用した「ふりかけ」や「おろしわさび」。この地域ならではの商品がEUや北米、韓国、中国などで高く評価されています。
成功の要因として、信頼できる現地パートナー選びがあります。最初に選んだパートナーでは失敗したものの、その教訓をもとに、真摯な姿勢で対応してくれるパートナーを見つけたといいます。
これにより、輸出額は5年で約2.3倍に成長。売上の主軸となりつつあります。
高野豆腐を海外展開する「旭松食品」

■画像引用元:旭松食品 HP(https://www.asahimatsu.co.jp/)
大阪府に拠点を置く旭松食品は、豆腐をはじめとした大豆製品を展開する食品メーカーです。
同社は、欧州の「フードバレー」に参画し、主力商品である高野豆腐が動物性たんぱく質に代わる次世代食品として評価されました。
そして、新たな試みとして、湯戻し不要の「KORI TOFU CEREAL」を開発。このシリアル状の高野豆腐はそのまま食べられ、サクサクとした食感が特徴で、欧州の健康志向の消費者に好評を得ています。
海外輸出を小さく始めてみよう
今回は食品メーカーが海外輸出を始めるためのノウハウを紹介してきました。
中小規模の食品メーカーであっても、海外市場へチャレンジすることは十分に可能です。インターネットを活用したオンライン商談会や越境ECが普及し、限られたリソースでも海外の顧客と直接つながりやすい環境が整いつつあります。
さらに、日本の食品は品質が高く、海外からの信頼を得やすいという強みも持っています。こうしたメリットを活かせば、小規模事業者でも海外輸出によるブランド認知度の向上や売上拡大を期待できるはずです。
この記事のライター
ショクビズ編集部
企業の主な実績
オリジナルシールの企画・作成 10,000社以上
オリジナル紙箱・化粧箱・パッケージの企画・作成 11,000製品以上





