エシカル食品とは?食品メーカーの導入メリットと取り組み事例を解説

環境保全や人権への配慮、地域社会への貢献など、「社会的に正しい消費」を意味するエシカル消費。
そのなかでも「エシカル食品」は、SDGsへの関心の高まりや消費者の価値観の変化を背景に、今大きな注目を集めています。
特に、Z世代やミレニアル世代では「誰が、どのように作った食品か」が選ぶ基準になりつつあり、食品メーカーや小売業も無視できないテーマとなりました。
本記事では、エシカル食品の定義や導入のメリットに加え、実際の取り組み事例や導入のポイントまで、わかりやすく解説します。
エシカル食品とは?基本の定義と特徴

「エシカル(ethical)」とは、直訳すると「倫理的な」「道徳的な」という意味を持ちます。
ビジネスや消費の文脈においては、「人や環境、社会全体に配慮した行動」を指し、近年では「エシカル消費」という言葉とともに広く知られるようになりました。
そして、エシカル消費の一分野として注目されているのが「エシカル食品(エシカルフード)」です。
エシカル食品は、人権や環境、動物福祉、地域社会への配慮を重視して生産・流通された食品を意味します。品質や味だけでなく、「どのように作られたか」「どんな社会的価値を持つか」といった背景まで含めて評価されるのが特徴です。
エシカル食品の代表的な例として、以下のようなものがあります。
| 名称 | 特徴 |
|---|---|
| フェアトレード食品 | ・発展途上国の生産者を守るために、適正な価格で継続的に購入する公正な貿易(フェアトレード)によって生産された食品 ・コーヒー、チョコレート、バナナ、紅茶、スパイスなどさまざまな食品が対象 |
| オーガニック食品 | ・化学肥料や農薬を極力使わず、環境負荷を減らして栽培された食品 |
| 地産地消 | ・特定の地域で生産された農林水産物を、その地域内で消費する取り組みのこと ・輸送によるCO₂排出を抑え、地域経済の活性化にもつながる |
| プラントベース食品 | ・動物性原料の代わりに植物由来の原料を使用した食品 ・温室効果ガス削減や動物福祉の観点で注目を集めている |
また、消費者が商品選択の際に参考にする「エシカルマーク(認証ラベル)」も、エシカル食品を知るうえで欠かせない要素です。
- ・国際フェアトレード認証
- ・MSC認証(海洋管理協議会/Marine Stewardship Council)
- ・Rainforest Alliance認証
- ・有機JASマーク(日本)など
フェアトレードやMSC認証などの認証マークは、社会や環境に配慮してつくられた商品であることを示す“証”として、消費者の信頼を高める要素になっています。
エシカル食品は、単なる「優しさ」や「社会貢献」ではなく、企業やブランドの持続的成長にもつながる重要な戦略的要素として位置づけられています。
SDGsとの関連性
エシカル食品は、国際社会が目指す持続可能な開発目標(SDGs)と密接に関係しています。
食品メーカーがエシカルな視点で商品を開発・提供することは、SDGsの実現に向けた実践的なアクションともいえるでしょう。 特に関連性の深いSDGsの目標は以下のとおりです。
目標2「飢餓をゼロに」
フェアトレードや地域の農業支援を通じて、発展途上国の飢餓や貧困の解消に寄与
目標12「つくる責任、つかう責任」
食品ロス削減、持続可能な原材料調達、製造工程の改善などを推進
目標13「気候変動に具体的な対策を」
プラントベース食品や地産地消の推進により、温室効果ガスの排出を抑制
企業によるエシカル食品への取り組みは、社会課題の解決に貢献する手段であると同時に、自社のブランド価値を高めるうえでも有効です。
食品メーカーがエシカル食品に取り組むメリット
エシカル食品は「社会貢献」や「環境配慮」といった視点から注目されていますが、企業にとってのメリットはそれだけにとどまりません。時代のニーズに合った製品づくりは、ブランド力や信頼の向上、コスト削減にもつながる可能性があります。
ここでは、食品メーカーがエシカル食品に取り組むことで得られる主なメリットを3つの観点からチェックしていきましょう。
消費者ニーズの変化に応える
エシカル食品の導入は、消費者の価値観の変化に対応するうえで重要な施策です。
特に、Z世代やミレニアル世代などの若い世代を中心に、商品を選ぶ際の基準に「社会性」や「企業姿勢」を重視する傾向が広がっています。
味や価格といった機能的な価値に加えて、「環境や人権に配慮した食品かどうか」を確認する消費者も増えてきました。
消費者庁が発表した「令和元年度エシカル消費に関する消費者意識調査報告書」では、エシカル消費について「興味がある」と答えた人が全体の59.1%にのぼっています。すでに過半数を超える人が、倫理的な視点からの購買を意識しているという結果です。
このような価値観の変化に対応して、エシカル食品の取り組みを進めることは、消費者からの共感を得やすく、長期的なファンづくりにもつながります。
ブランド価値・企業評価の向上
企業のブランディングや社会的評価に直結する点も、エシカル食品へ取り組むメリットの一つです。
近年は、CSRやESGの観点から、社会課題に向き合う姿勢そのものが企業価値の一部として評価されるようになりました。
また、若手人材の採用においては、エシカルな活動を継続している企業は、価値観を共有できる職場として、好意的に受け止められるケースも少なくありません。
社会性の高い取り組みは、メディアやニュースで取り上げられやすく、広報・PR面での波及効果も見込めます。
食品ロス削減とコスト最適化
エシカル食品への取り組みは、コスト面でも大きなメリットがあります。
たとえば、従来であれば廃棄されていた規格外野菜や余剰在庫、製造過程で発生する端材などを再活用することで、食品ロスの削減と原材料コストの抑制が可能です。実際に、形の不揃いな果物を使用したジャムや、売れ残ったパンを原料にしたクラッカーなど、廃棄を前提としていた素材を商品化する動きが広がっています。
環境への配慮はもちろん、「もったいない」という日本独自の価値観にも訴求できるため、購入者の共感を得やすく、売上の向上にもつながります。 食品ロスの削減は、コストカットに加えて企業の姿勢や理念を社会に示す重要な取り組みといえるでしょう。
エシカル食品の代表的な取り組み事例
エシカル食品に関する関心が高まるなかで、具体的な取り組みによって社会的な信頼を獲得し、ブランド価値を高めている企業が増えています。
ここでは、大手食品メーカーによる先進的な取り組み、地域密着型のユニークな事例、そして海外の成功例まで幅広く紹介します。
▼大手食品メーカーの取り組み例
【事例①】味の素グループ:資源活用と技術革新によるエシカル推進

味の素グループでは、環境負荷の軽減や食品ロス対策といった社会的課題の解決に向けて、さまざまな取り組みを展開しています。
代表例の一つが「クノール®カップスープ」で使用するスーパースイートコーンの活用方法です。従来は廃棄されていた茎・葉・軸・皮といった部位も原料として使用し、廃棄物の削減と持続可能な農業の推進を両立させています。
また、グループ会社のAGFでは、ボトルコーヒーのラベルを短い「ハーフラベル」に変更。プラスチック使用量の削減を実現し、容器包装における環境配慮を強化しました。
さらに、食品の品質保持とフードロス削減を両立する技術開発にも取り組んでいて、原材料の代替技術や賞味期限の延長技術を導入しました。
味の素グループによる技術開発や資源の有効活用は、持続可能な食品流通の基盤づくりにも貢献しています。
【事例②】キユーピー:卵の100%活用によるゼロウェイスト実現

キユーピーは、「卵を丸ごと使い切る」ゼロウェイストの姿勢で業界をリードしています。
卵黄はマヨネーズの原料として使用し、卵白は水産練り製品や製菓原料に再利用。卵殻はカルシウム強化食品や土壌改良材、壁紙素材として活用されています。
特に注目されているのが、卵殻膜の活用です。
化粧品原料や健康食品への応用により、卵のすべての部位を無駄なく利用する循環型のモデルを確立しています。素材のポテンシャルを最大限に引き出す取り組みは、企業の信頼性向上や環境貢献の可視化につながっています。
▼地域密着型の取り組み例
【事例①】朝日通商(瀬戸内グローカルラボ):地産外商×エシカル食品

朝日通商が運営する「瀬戸内グローカルラボ」では、地域資源を活用したエシカル食品の開発に取り組んでいます。
たとえば、未利用魚や規格外農産物を原料とする商品によって、地域のフードロス削減と経済活性化の両立を可能にしました。同ラボでは、「地産外商」の考え方に基づき、瀬戸内の食材を全国や海外に発信する活動も推進しています。
さらに、学生や自治体など地域住民を巻き込んだ商品開発も実施。
食品開発と観光資源を組み合わせた取り組みを通じて、地域全体の活性化や交流人口の増加といった効果も期待されています。
【事例②】関東食糧:地元連携による未利用資源のエシカル活用

関東食糧は、地元農家と連携し、規格外野菜や未利用素材を活用した商品づくりを後押ししています。
これまで廃棄されていた農産物に新たな価値を与えることで、食品ロスの削減と地域経済の活性化の両立を実現しました。
さらに、SDGsやエシカル認証の要素を取り入れた商品づくりにも注力。「社会性」と「経済性」を両立するモデルとして、多方面から注目を集めています。
海外のエシカル食品の成功例
エシカル食品の普及は、日本よりも欧米諸国のほうが早く進んでいます。
アメリカでは、「Impossible Foods」や「Beyond Meat」など、植物由来の代替肉ブランドが急成長を遂げました。
動物性食品が引き起こす環境負荷や倫理的課題への対策として注目され、多くの消費者から共感を集めた結果、市場の拡大につながったといえます。
ヨーロッパでは、オーガニック食品やフェアトレード商品の需要が高まり、一般のスーパーや専門店でも広く取り扱われるようになりました。
エシカル認証が消費者の商品選びの基準として重視されている点も、注目すべき傾向です。
エシカル食品は一過性の流行ではなく、持続可能な社会への意識変化を反映した市場だといえるでしょう。
エシカル食品を商品開発・販売に取り入れるには
エシカル食品は、中小規模の食品メーカーや地域企業にとっても差別化やブランド価値の向上につながる重要なテーマです。ただし、「環境や社会に良いことをすればよい」という単純な話ではなく、商品開発から販売、ブランディングに至るまで一貫した戦略と工夫が求められます。
ここでは、エシカル食品を事業に取り入れる際のポイントや注意点を具体的に解説します。
商品開発のポイントと注意点
エシカル食品を開発するうえで、原材料の調達方法や生産背景の透明性は大事なポイントです。
「どこで、誰が、どのように作ったか」という情報を明確にし、トレーサビリティを確保することが信頼形成につながります。
また、「オーガニック=エシカル」とは限らない点にも注意が必要です。
たとえば、有機農法で育てた食材であっても、生産過程において労働環境や取引の公正性が確保されていない場合、本来の意味での「エシカル食品」とはいえません。開発段階では、機能性や原材料の良さに加えて、地域性や文化背景をふまえた「ストーリー設計」も意識しましょう。
「〇〇地域の規格外野菜を活用し、地元農家と連携して商品化」など、社会的背景や想いが伝わる設計が求められます。
エシカル認証・マークの活用法
エシカル食品を開発・販売する際、エシカル認証マークを活用することで消費者に安心感と信頼を与えられます。
| エシカルマークの一例 | 内容 |
|---|---|
| 国際フェアトレード認証 | ・生産者が公正な価格で取引される仕組みを支援 ・発展途上国の農業や工芸品に多く見られる |
| Rainforest Alliance(レインフォレスト・アライアンス)認証 | ・熱帯地域の生物多様性と労働環境を守る、持続可能な農業・林業を支援する国際認証 |
| MSC「海のエコラベル」 | ・持続可能な漁業による水産物であることを証明するマーク ・海洋資源の保全と漁業者の持続可能な経済活動を両立させることを目的としている |
| FSC認証 | ・森林管理の国際基準に適合した木材・紙製品であることを保証するマーク ・パッケージ資材や印刷物でも取得事例が増えている |
各認証の取得には、審査機関による基準確認、文書提出、実地検査などの手続きが必要です。
取得費用は、商品の種類や申請範囲によって異なりますが、一般的に「初期費用+年間更新費用」がかかると認識しておきましょう。
販促・ブランディングのコツ

エシカル食品の価値を消費者に伝えるには、商品の背景にある想いや取り組みを「見える化」することがポイントです。
どれほど社会的・環境的に意義のある商品でも、伝え方を誤れば価値を理解してもらえません。
具体的には、次のような施策を取り入れるのが効果的です。
販促の施策例
- ・店頭POPで生産者の顔や取り組み背景を紹介
- ・SNSで栽培や製造の過程を発信し、商品が生まれるまでのストーリーを伝える
- ・ブランドサイトに「SDGsとの関連性」や「エシカル方針」をまとめて掲載する
さらに、商品パッケージ自体にもエシカルな視点を取り入れることで、ブランド全体の一貫性を高められます。
たとえば、次のような資材を活用すると、企業の姿勢を明確に打ち出せます。
- ・CO₂排出量の少ない環境配慮型パッケージ
- ・再生紙や非木材素材を用いた森林保全型の包装資材
- ・ラベルレスや、リサイクルしやすいトレー設計など、海洋プラスチック対策に配慮した仕様
エシカルな資材を使用していることを、パッケージ上や店頭POP、商品説明ページで明確に伝えると、環境意識の高い消費者の共感を得やすくなります。資材選定そのものが企業のエシカル姿勢を体現する「ブランドメッセージ」として機能するため、マーケティング戦略の一環として積極的に取り組みましょう。
環境に配慮したパッケージ資材の導入にハードルを感じる場合は、専門的な知見をもとにサポートする企業を利用するのがおすすめです。
弊社でも、再生素材や脱プラ仕様など多様なパッケージをご提案しているので、導入を検討する際はお気軽にご相談ください。
エシカル食品の未来と市場展望
日本国内でも、エシカル食品は着実に市場を拡大しています。
市場が拡大している理由として、消費者意識の変化があり、「社会や環境に配慮された商品を選びたい」という声が広がっている点が挙げられるでしょう。
実際に、スーパーやコンビニではエシカル商品専用の棚やPOPが設けられるようになり、オンラインでも特集ページやランキング形式で紹介されるケースが増えています。
地域資源や作り手のストーリーといった独自の強みを生かせば、大企業との差別化も十分に可能です。 今後は、付加価値の高い商材としてさらなる需要拡大が期待されます。
今後の展望とメーカーに求められる視点
エシカル食品は、中小食品メーカーにとっても持続的な成長戦略の一環として取り組むべきテーマです。
環境や社会への配慮にとどまらず、利益やブランド価値の向上にも直結する可能性があり、消費者や市場の関心も年々高まっています。たとえば、環境負荷の少ない素材を使うと調達コストを抑えられる場合がありますし、フェアトレード原料を採用した結果、企業イメージの向上につながるケースもあります。
製品開発、製造、販促、パッケージまで一貫性を持たせることで信頼を得やすくなり、購買行動に影響を与える場面も増えているのが実情です。 ブロックチェーンを活用したサプライチェーンの可視化も進んでいて、消費者の納得感を高める新たな手段として注目されています。
エシカル食品は、社会と企業をつなぐ「新しい価値軸」
エシカル食品は、社会や環境への配慮にとどまらず、企業のブランド価値や信頼性を高める重要な要素として定着しつつあります。
環境負荷の少ない素材の活用、フェアトレードの推進、地域との共生を反映した商品づくりは、企業の姿勢を示す手段としても有効です。マーケティングやブランディングの面でも、エシカルな視点を組み込むことで消費者からの共感を得やすくなります。大規模な投資をしなくても、自社の理念や地域資源を活かした取り組みなら、差別化にもつなげやすいでしょう。
中長期的な成長を見据えるなら、エシカル食品の導入や既存商品の見直しは有力な選択肢です。 社会的な信頼と企業価値の向上、両面に貢献できる実践的なアプローチとして、導入・拡充を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事のライター
ショクビズ編集部
企業の主な実績
オリジナルシールの企画・作成 10,000社以上
オリジナル紙箱・化粧箱・パッケージの企画・作成 11,000製品以上


