補助金の採択率を上げる方法として、補助金の加点という措置があります。今回は中小企業省力化投資補助金や新事業進出補助金など大型補助金の審査で優遇される地域経済牽引事業計画の認定について、その他のメリットも含めこの制度のご紹介を致します。
地域経済牽引事業計画について
「地域経済牽引事業計画」とは、地域未来投資促進法(正式名称:地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律)に基づいて、事業者が作成し、都道府県知事の承認を受ける事業計画のことです。
この法律は、地域の特性を活かした事業を通じて、高い付加価値を創出し、地域の事業者へ経済的な波及効果をもたらすことで、地域経済の成長発展の基盤を強化することを目的としています。
▼図参照:経済産業省資料
(https://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/miraitoushi/zeiseishien.html)
計画の概要と目的
地域経済牽引事業計画は、具体的には、以下のような事業を促進することを目的としています。
●地域の特性を活かすこと:
各地域が持つ産業集積、観光資源、特産物、技術、人材などを最大限に活用した事業であること。
●高い付加価値を創出すること:
事業によって、地域全体の付加価値額の増加に貢献すること。具体的な基準は各都道府県の基本計画で定められています。
●地域の事業者への経済的効果:
地域内の取引拡大、受注増加、雇用創出、賃上げなど、地域の経済に良い影響を与えること。
承認要件
地域経済牽引事業計画が知事から承認されるためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
1.地域の特性に適合していること:
各都道府県・市町村が策定する「基本計画」に定められた事業分野や活用戦略に合致していること。
2.高い付加価値を創出すること:
各都道府県・市町村の「基本計画」で定められた基準額以上の付加価値額を創出すること。
3.地域の事業者に対する相当の経済的効果が見込まれること:
具体的には、計画期間を通じて、以下のいずれかの効果が見込まれること。
- 促進区域内の事業者間の取引額が増加
- 促進区域内の事業者の売上が増加
- 促進区域内の雇用者数が増加
- 促進区域内の雇用者給与等支給額が増加
認定手続きの流れと留意点
計画策定から都道府県知事承認までのフロー
1.事前相談:
事業者は、まず都道府県の担当部署(例:愛知県産業立地通商課、岩手県商工労働観光部)に事前相談を行うことが強く推奨されます 。これは、計画内容の適合性や、各種支援措置の適用可能性について早期に確認し、不備を避けるために不可欠です 。
2.地域経済牽引事業計画の作成:
各都道府県の基本計画(例:長崎県基本計画、岩手県基本計画)に沿って、事業者は地域経済牽引事業計画を作成します 。計画には、事業内容、実施期間、活用する地域の特性、付加価値創出額、経済的効果、資金計画、活用予定の支援措置などを詳細に記載します 。
3.都道府県知事への提出:
作成した計画を都道府県知事に提出します 。
4.都道府県による承認:
提出された計画は、都道府県によって審査され、承認されます 。承認要件は、地域の特性活用、高付加価値創出、経済的波及効果の3点であり、各都道府県の具体的な数値目標を満たす必要があります。
課税特例に係る主務大臣の確認申請プロセス
1.都道府県知事承認後の確認申請:
税制優遇(特別償却・税額控除)を受けるためには、都道府県知事の承認に加え、国(主務大臣)による事業の「先進性」等の確認が必要となります 。
2.経済産業局への事前相談:
確認申請書を作成する前に、経済産業局へ事前相談を行い、主務大臣の特定を行うことが重要です 。この事前相談を怠ると、申請が受理されない可能性があります 。
3.確認申請書の提出:
主務大臣(通常は経済産業大臣)へ確認申請書を提出します 。
4.主務大臣による確認:
提出された申請書は、先進性評価委員会による評価などを経て、主務大臣による確認が行われます 。確認がなされると、確認書が交付されます 。
▼図参照:経済産業省 地域未来投資促進税制について
(https://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/miraitoushi/zeiseishien.html)
申請における重要な留意事項
●資産取得時期の厳守:
最も重要な留意点の一つは、事業計画承認前に取得(建物の場合は着工)した建物及び設備等資産は、各種支援措置の対象とならないという点です 。税制優遇を受けるための確認書発行前に取得された資産も対象外となります 。申請は、資産取得の少なくとも1ヶ月(30日)前までに行う必要があります 。
●中古資産・リース資産の対象外:
中古の建物や機械、リース目的の資産は税制優遇の対象外です 。新規の設備投資を促進するための制度であるため、この点は厳格に適用されます。
●事前相談の重要性:
計画内容の適合性、支援措置の適用可能性、手続きの流れなど、申請前に都道府県や経済産業局との十分な事前相談が必須です 。
●承認と支援実行の非保証:
事業計画の承認は、各種支援措置(特に国の補助金や金融支援)の実行を保証するものではありません 。各支援措置には別途申請と審査が必要であり、事業者はそれぞれの窓口で確認を行う必要があります 。
●計画変更時の手続き:
承認された計画内容に変更が生じた場合、原則として変更申請を行い、都道府県知事の承認を得る必要があります 。課税特例の確認を受けている場合は、改めて主務大臣の確認申請が必要となります 。
地域経済牽引事業計画による主な支援措置
地域経済牽引事業計画が承認された企業が享受できる多様な支援措置を詳細に解説します。税制優遇、金融支援、規制緩和、補助金申請時の優遇措置を網羅し、特に令和7年度税制改正による最新の変更点に焦点を当てて、具体的なメリットを明確にします。
1.税制上の優遇措置
承認された計画に基づき、新たに建物や機械等の設備投資を行う場合に、法人税等の特別償却・税額控除が適用されます 。
【令和7年度税制改正による変更点と適用期限延長】
・適用期限が令和7年3月31日から令和10年3月31日まで3年間延長されました 。
●機械・装置等
・通常: 取得価額の35%特別償却(改正前40%)または4%税額控除 。
・追加要件Aを満たす場合: 50%特別償却または5%税額控除 。
・追加要件Bを満たす場合: 6%税額控除。
●建物等(付属設備、構築物含む)
・通常: 取得価額の20%特別償却または2%税額控除。
・対象資産: 新設または増設に係る特定地域経済牽引事業施設等を構成する機械・装置・器具・備品・建物及びその付属設備並びに構築物で、その制作・建設の後、事業の用に供されたことがないものに限られます(リース用や中古は対象外)。
▼参照:経済産業省 地域未来投資促進税制について
(https://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/miraitoushi/zeiseishien.html)
2.金融支援
金融面では、日本政策金融公庫からの固定金利での借り入れ(長期・低利融資)や、信用保証協会の保証限度額拡大といった優遇措置が提供されます。また、地域経済活性化支援機構(REVIC)や中小企業基盤整備機構によるファンド組成・活用支援も含まれます。
3.補助金申請時の加点措置
国等の補助金申請時に加点措置を受けられることも、本制度の重要なメリットです 。具体例として、大規模成長投資補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金、そして今年度から新設された中小企業新事業進出補助金、中小企業省力化投資補助金(一般型)における優先採択や加点評価が挙げられます。この加点項目は、国が「地域経済の自立的な発展」を重視しているために設けられており、地域への波及効果や他企業・自治体との連携性が高い事業が評価される傾向にあります。
まとめ
地域経済牽引事業計画は、「地域未来投資促進法」を基盤とし、地域の特性を最大限に活用しながら高付加価値を創出し、地域経済に広範な波及効果をもたらす事業を促進するための包括的な政策ツールです。本制度は、税制優遇、金融支援、規制緩和、補助金加点といった多角的な支援措置を組み合わせることで、地域経済の自立的な成長と持続可能な発展を目指しています。
制度の運用においては、各都道府県が地域固有の強みに応じた具体的な承認要件を設定しており、これは地域ごとの多様性を尊重し、最適な投資を誘導する設計思想を反映しています。特に、税制優遇の適用には「先進性」の確認が不可欠であり、これは単なる投資促進に留まらず、真に革新的で将来の地域経済を牽引しうる「質の高い」事業を選別しようとする国の強い意思を示しています。
一方で、申請プロセスは、都道府県知事の承認から国の先進性確認に至るまで、厳格なタイミング管理と複数の関係機関との綿密な連携を必要とします。特に、資産取得時期の厳守や事前相談の重要性は、制度の恩恵を最大限に享受するための実務上の絶対条件となります。これらの複雑性は、制度が「地域牽引」という崇高な理念を掲げる一方で、実務上のアクセスしやすさとの間に一定の課題を抱えていることを示唆しています。
しかしながら、観光、農林水産業、製造業、デジタルといった多様な分野で既に成功事例が生まれており、これらは地域特性の戦略的活用、具体的な経済循環の創出、そして地域社会との合意形成が成功の鍵であることを明確に示しています。これらの事例は、本制度が地域経済の活性化に実質的な貢献をしていることを裏付けています。
今後の展望としては、令和7年度税制改正による適用期限の延長や要件の見直しが、より多くの事業者の参入を促し、地域経済への投資をさらに加速させることが期待されます。制度の普及と効果最大化のためには、特に中小企業やリソースが限られた事業者に対し、行政機関による一層きめ細やかなサポートや、専門家活用の促進が重要となると思われます。地域経済牽引事業計画は、日本の地域が持つ潜在力を引き出し、持続可能な発展を実現するための重要な戦略的基盤として、その役割を強化していくことが見込まれます。
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この記事のライター

ショクビズ編集部
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