【連載第33回】価格暴騰で消費者がどの様な対応を取るのか?(13)

公開日:2023.12.29 更新日:2024.09.03
ライター:ショクビズ編集部

コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。

今回は、商品の育成をどの様な手順で行っていったのか?既存の分類の売上(販売)前年比をとある工夫で200%にまで伸ばした「商品の育成法」について解説したいと思います。


商品分類を200%(売上2倍)に伸ばすことは、なかなかできることではありません。多くの店舗で、あるいはメーカーさんなどもしのぎを削り出して、商品を多く展開し、POPなども大きく掲出していたとしても、200%に伸ばすというようなことはなかなかできていないのが実情でしょう。このお店においても、最初はそのように考えれれていました。

しかし、商品の種類を全面的に見直し、陳列を一旦全てばらして再構築したところ、分類の売上を200%に伸ばすことに成功しました。その商品分類は、このお店では『グミ』の商品構成を見直して売上200%を達成させました。そもそも、このお店では、女性客や若年層の客層が少ないと思い込んでいた部分があり、グミなどについては、本部側が提示した商品構成と陳列だけで展開がなされていました。

店舗全体の売上が低迷する状況下で、何かしらの「起死回生の策」を講じる必要がありました。基本的には、今一度、全ての商品群の在り方などを見極め直し、一旦全ての商品構成を『自店の客層・使われ方』に合わせることを目指しました。その中で、競合店との差別化も図りやすく、売場での見栄えも良く、しかも取り込みたい客層に向けてのアピールポイントが明確に打ち出しやすいという点で、『グミ』売場の再構築を優先度を上げて対応することにしました。

『グミ』は、皆さんもあまり意識されないかと思いますが、実際の陳列で多い展開の手法としては、「メーカー毎に固めて商品を陳列する」ということが一般的に行われています。同様の陳列となっているものには、『ドレッシング』や『レトルトカレー』、『パスタソース』などがあり、これらは、メーカーの商品シリーズ単位で陳列されているケースが多い商品群となっています。

『グミ』などはその典型で、「フレーバー」についてはかなりばらついた陳列となってしまっており、お客様の好みと思われる商品以外には目がいかないという状況となっていました。これをあえて、展開の手法を変え、『フレーバー単位』(メーカー問わず)に纏め直して展開を図ったのです。当初、この展開の方法にはかなり抵抗感もあり(見慣れないだけ)ましたが、メーカー単位に固めている従来の手法から何かしらの変更を考えなければ、売場としての活性化は成り立ちません。

そこで、思い切って『フレーバー単位』での展開をしてみたのです。実際、例えば、「レモン味」「ブドウ味」等は、売れ筋商品が多い状況ですが、他社の『レモン味』『ブドウ味』などは、探すことすら行われず、お客様ご自身の好みによって『いつも買っているもの』だけを探すということが常態化していました。

これをあえて『フレーバー単位』とすることで、見知らぬ商品との接触の機会が増え、ついで買いや味変、別の味探しなど、売場で色々と探しこむお客様の姿が多くみられました。そのことで近隣の学校などに口コミで『あそこの店、面白いグミ売ってる(と言って、特別な商品を置いたわけではない)』との評判が立ち、グミを求める学生や社会人の女性などが増加し、結果的に売り上げを前年比200%に伸ばすことができました。

このように、『商品を育てる』ということは、これまでの既成概念などに囚われず、お客様に『何を』伝えるのか?を考えた上で、
現状での最適解を求め続けること。それが、お客様に受け入れられるか?を考える上で重要であるということになります。

さて、約3年に渡って、この項につき連載させて頂いておりましたが、諸般の事情により、次号をもって私の連載は終了すること
となりました。最終回は、『これまでのまとめとメーカーさんへのお願い』をお送りします。よろしくお願い申し上げます。

【連載第32回】価格暴騰で消費者がどの様な対応を取るのか?(12)

(次の配信は1月15日頃の予定です。)


<プロフィール>

信田 洋二

1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。

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