【連載第32回】価格暴騰で消費者がどの様な対応を取るのか?(12)

公開日:2023年11月29日 最終更新日:2023年12月6日

コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。

今回も、『商品を育てる』と言う点で、特に『商品の育て方の具体例』という事について解説します。


「商品を育てる」つまりは、自店舗にとってみて「売れ筋商品」とするというところがこの取り組みの重要な要素であると言えます。

かつては、TVCMやTV番組などで取り上げられた商品などについては、一定の期間に於いては売れ筋商品となり、予めのCMの量やTV番組での取り上げられ方などが分かっていたため、店舗側とすればその該当の商品を大きく発注・売場展開し、場合によっては「お試し価格」「数量限定特別サービス」という様な打ち出し方で、更なる販促効果を狙って大きな販売数を稼ぐこともできてはいましたが、残念ながら現在ではこのような手法だけでは、十分に商品が育成できるとは言えず、TV番組などで取り上げられてから、1週間も経たずに売上数量(金額)が急降下してしまうということが頻発しています。

打ち出せども、効果は限定的で、かつ短期間で収束してしまうということが大半の商品で発生してしまっています。大手のコンビニなどでは、チェーンのオリジナル商品をプロの料理家などが評価する番組に出品し、開発の経緯や苦労話、商品の特徴などをこれでもかというような内容で1時間番組にしてしまい、料理家などから「高い評価を得た!」と、放送翌日からチェーンの全店で大きく商品展開をするようなことをしていますが、これとて、過去に紹介されたような商品と同類であれば、1週間も継続して販売が好調ということもなく、わずか2~3日で、それこそありえないくらいに販売数が急降下するということはさして珍しくはなくなっています。

従来であれば、TV番組などで大きく取り上げられた商品であれば、その後、長ければ数年間にも渡り、チェーン店舗内の売れ筋上位100単品の中にでも登場してくるような商品も決して珍しくはなかったのですが、現状ではそのような商品は、ほぼ存在しない状況となっています。それだけに、店舗としてしっかりとした「商品育成」を実施し、「売れる商品は自店で育てる」ということを行わなければ、商品の改廃ばかりを実施することになり、店舗側の負担は増すばかりとなります。その意味では、自店舗の客層、アプローチの仕方、陳列の位置とフェイス数など、ち密に計画を立てて育成をしていくことが重要となるのです。

とある店舗では、「カップラーメン」の分類を育成するべく、常温のエンドゴンドラ(端の陳列台)の1本を「カップ麺専用」とし、そのエリアの他店では決して見かけないような(と言って、奇をてらったような奇抜なものではなく、自店舗の客層のニーズに合致しそうなものを厳選して商品展開を実施している)商品ばかりを1本のゴンドラで展開を実施し、絶えず商品の改廃を行い、お客様が喜ぶように「希少性(1ロット限定でしか発注しない)」や「限定性(物珍しさ)」などをPOPなどに表記をした上で、商品の短い紹介文をPOP(プライスカード)に記載することによって、お客様の興味関心を引き付け、何時しか、店の名物としての「ラーメン売場」が出来上がるという状況です。

この店舗では、この「カップラーメン」を購入するために、わざわざ店舗に来店され、どこの売場よりもまずラーメンの売場に立ち寄られ(最もお店の奥に位置しています)ている状況です。チェーン本部からラーメンを売るように指示を受けている訳ではありませんし、カップラーメンとはある意味では成熟された分類でもあります。ただし、商品の一品一品においては、目新しさや希少性、話題性などふんだんにあり、お客様も楽しみにされるように仕掛けを打つ。このことによって、このお店では、「商品(商品分類)を育てる」ということに成功しています。「お店のウリ」として、「お客様、うちのお店には【これ!】を買いに来てください!何処にも負けない絶対の自信があります!!」と言い切れる商品をどれだけ育成するか(できるか)が、お店が存続するためには、必須の字条件であると言えるでしょう。

次月は、別の商品の育成をどの様な手順で行っていったのか?既存の分類の売上(販売)前年比をとある工夫で200%にまで伸ばした「商品の育成法」について、数回にわたり解説したいと思います。

【連載第32回】価格暴騰で消費者がどの様な対応を取るのか?(12)

(次の配信は12月20日頃の予定です。)


<プロフィール>

信田 洋二

1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。

 

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