インキ不足だけじゃない!2026年食品脱プラ包装の最前線 | ショクビズ!

インキ不足だけじゃない!2026年食品脱プラ包装の最前線

公開日:2026.06.12 更新日:2026.06.26
ライター:ショクビズ編集部

原材料高騰や中東情勢によるナフサ供給不足、さらには深刻なインキ調達難に直面する食品業界。
大手メーカーによるパッケージデザインの簡素化やインキ削減の動きが大きな話題を呼んでいますが、今求められているのは目先の資材不足対策だけではありません。
2026年は欧州を中心に「環境規制」が一段と厳格化され、食品メーカーには本質的な「脱プラスチック」「環境対応」への移行が迫られているのが実情です。

そこで今回は、インキ削減の先にあるパッケージの「完全サステナブル化」に向け、最新の技術トレンドや国内外の先進事例、導入のポイントをわかりやすく解説します。

2026年、食品パッケージを取り巻く環境規制と調達リスク

2026年、食品パッケージを取り巻く環境規制と調達リスク

食品メーカーの包装・パッケージ戦略は、コスト高騰や資材不足といった「調達リスク」と、2026年に激化する国際的な「環境規制」という課題で大きな転換期を迎えています。

食品の品質と安全を守るパッケージですが、なぜ今、構造改革(完全サステナブル化)が必要とされているのか、業界を取り巻く現状から紐解いていきましょう。

中東情勢とナフサ不足がもたらす食品業界への影響

直近の食品業界において、最も切実な課題の一つが原材料や包装資材の度重なる値上げ、そして供給不安です。
背景には、緊迫化する中東情勢の影響に伴う原油・ナフサ(粗製ガソリン)の供給不足と、価格の高騰が挙げられます。プラスチックの主原料であるナフサの不足は、食品トレーやプラスチック容器、包装用フィルムといったプラスチック製品の製造コストに大きな影響を与えました。
また、工場の衛生管理に欠かせないニトリル手袋などの品薄・コスト高騰にも繋がっており、現場の負担は増すばかりです。
このような予測困難な地政学リスクに対抗するためにも、特定の化石資源だけに依存しない調達構造の見直しや、新たな選択肢の検討が必要とされています。

欧州を中心とする2026年最新の環境規制トレンド

足元の調達リスクに加え、中長期的に食品メーカーの大きな壁となるのが、国際的な環境規制の厳格化です。
環境先進国である欧州では、新たなパッケージ規制である「PPWR(包装及び包装廃棄物規則)」を2025年2月に発効。
実質的な適用開始となる2026年8月からは、「使い捨てプラスチックの削減」や「過剰包装の禁止」、「食品接触包装における特定の有害物質(PFAS等)の制限」などが厳格化されます。

なお、「我が社は国内流通メインだから関係ない」と静観することはできません。サプライチェーンが世界規模に広がった現代では、国内メーカーであっても海外の環境基準を意識する場面が増えています。実際に、製品の輸出時だけでなく、外資系企業やグローバルブランドとの取引において、リサイクル適性の証明やバイオマス素材への切り替えを求められるケースが目立つようになってきました。

「完全サステナブル化」の必要性

「ラベルレス化」や「印刷色数・面積の削減」といったインキの抑制(エコデザインへの変更)は、インキ調達難へのリスクヘッジや環境負荷低減として有効な一手です。
しかし、これらはあくまで局所的な対策であり、2026年以降に本格化する脱プラ規制や、ナフサ不足に伴う資材高騰リスクに対する根本的な解決には至りません。だからこそ、現在の食品メーカーに求められているのは一歩進んだ対応です。

表面的なデザイン変更から一歩踏み出し、包材そのものをバイオマスや紙素材へ切り替えるなど、「パッケージの素材そのものを抜本的に見直すサステナブル化」へのステップアップが必要とされています。

【食品メーカー向け】サステナブル・パッケージの主要技術トレンド

サステナブル・パッケージの主要技術トレンド

環境対応とコスト削減を両立させるために、食品包装の技術は日々進化を続けています。
ここでは、食品の品質や安全性を妥協することなく、環境負荷をダイレクトに抑えることが可能な、今注目すべき5つの主要技術をチェックしていきましょう。

1. 脱プラスチックを加速させる「紙化(ペーパー化)」技術

プラスチックから紙への素材代替(紙化)は、脱プラスチックの象徴的なアプローチとして高い注目を集めています。
従来の紙素材には「水分や油分、酸素に弱く、食品の長期保存には向かない」という大きな技術的課題がありました。しかし、近年は紙の表面に特殊な水性コーティングを施す技術や、極薄のバリアフィルムをラミネート(複合化)する技術が飛躍的に進化を遂げています。
この技術革新により、食品に必要な保鮮性や遮断性をしっかりと担保しながら、プラスチック使用量を大幅に削減した「食品用紙パッケージ」の導入が可能です。
現在は外装だけでなく、これまでハードルが高いとされていた内装や個包装への採用も広がりを見せています。

2. 化石資源に頼らない「植物由来(バイオマス)プラスチック」

素材そのものの構造はプラスチックでありながら、原料を化石資源から植物へとシフトさせる「バイオマスプラスチック」の活用もトレンドの一つです。原料にはトウモロコシやサトウキビのほか、食料問題と競合しない非可食性植物(ササや微細藻類など)を利用する技術開発も進んできました。
最大のメリットは、焼却処分する際にも地球温暖化の原因となるCO2を新たに増やさない「カーボンニュートラル」の概念にあります。
植物が成長過程で吸収したCO2と、廃棄・焼却時に排出されるCO2が相殺されるため、環境負荷を実質的に低減できる資材として、既存のプラスチック容器からの移行が各所で始まっています。

3. プラスチック使用量をダイレクトに抑える「薄型化」

パッケージに使用するプラスチックの絶対量を削ぎ落とす「薄型化」も、効果的なアプローチです。
従来のフィルムを単に薄くするだけでは、強度が低下して破袋(はたい)リスクが高まったり、酸素や水分を通しやすくなって食品の品質を損なったりする懸念がありました。しかし、樹脂の配合技術や多層押し出し技術の向上により、包装としての保護機能を落とすことなく、フィルムの厚みを極限まで薄くすることが可能となっています。

プラスチックの使用量と廃棄物量をダイレクトに削減できることに加えて、資材そのものが軽くなる点も大きなメリットです。
輸送時の軽量化はトラックの燃費向上に直結し、物流コストの削減と輸送フェーズにおける環境負荷(CO2排出量)の低減を同時に実現する手立てとなるため、多くの現場で導入が進んでいます。

4. 環境負荷とリサイクル性を改善する「脱アルミ」

スナック菓子やレトルト食品などの包装で重宝されているアルミ箔(はく)の見直し、いわゆる「脱アルミ」も、パッケージのサステナブル化において重要なテーマです。アルミ箔は高い遮断性を持つ反面、製造時のCO2排出量が多く、他のフィルムと貼り合わせることでリサイクルを著しく困難にする課題がありました。

そこで近年は、アルミの代わりに高いバリア性を持つ透明な「バリア性樹脂(EVOHなど)」や、独自の蒸着技術を施したフィルムを採用するトレンドが生まれています。最新のバリア素材は、軽量でありながらアルミ箔と同等の品質保持力を維持できる点が特徴です。
さらに、パッケージ全体を単一の素材で構成する「モノマテリアル化」が可能となるため、リサイクル効率を向上させる技術として、導入するメーカーが増えています。

5.印刷工程の環境負荷を抑える「バイオマスインキ」

パッケージ素材の見直しに加え、原料の一部に植物由来成分を使用した「バイオマスインキ」へと切り替えるアプローチは、現実的な選択肢として定着しつつあります。バイオマスインキへの移行は、焼却時のCO2排出量を抑える環境対策にとどまらず、不安定な化石資源への依存度を下げ、資材の安定調達を図るリスク分散としても有効です。
現在はインキメーカーの技術革新によって、従来のインキと同等の発色や印刷適性を備えた製品が主流となっています。食品のブランディングやパッケージのデザイン性を損なうことなく、環境負荷と調達リスクの双方を低減できる手段として、多くの食品メーカーで採用が広がってきました。

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国内食品メーカーにおける最先端の環境対応事例

資材の調達リスクや海外の厳格な規制を見据え、国内の大手食品メーカーもすでに具体的なアクションを起こしています。
ここでは、先進的な取り組みを進める企業の最新事例を見ていきましょう。

カルビー:色数を絞ったシンプルなデザインでインキを削減

2026年5月、スナック菓子大手のカルビー(株)は主力商品である「ポテトチップス」や「かっぱえびせん」「フルグラ」など合計14品において、パッケージに使用する印刷インキの色数を2色に変更し、順次店頭での切り替えを開始しました。

施策の背景にあるのは、中東情勢の緊迫化に伴う一部原材料の調達不安定化とされています。
同社は、インキ不足による生産ストップという最大の懸念を回避するため、「商品の安定供給」を最優先する経営判断を下しました。この大胆な予防的措置は、持続可能なリスクヘッジのリアルな実例です。デザインをあえて引き算することで供給ラインを守るアプローチは、資材不足の時代を生き抜く先進的な危機管理モデルとして、業界内外で大きな注目を集めています。

カゴメ:外装パッケージの印刷面積を削減

カゴメ(株)も、インキの使用量を大幅に抑える画期的な試みをスタートさせました。
同社は2026年5月下旬より、「カゴメトマトケチャップ」の外装ポリ袋の印刷面積を大胆に削減した新デザインへと順次切り替えています。従来のパッケージは全体に赤色や緑色の印刷が施されていましたが、リニューアル後はブランドロゴや必要最低限の表示にとどめるミニマルなデザインへと生まれ変わりました。
この大胆な引き算によって、印刷工程における環境負荷(CO2排出量)の低減と、資材調達リスクへの確実な備えを両立させています。特徴的なのは、デザイン変更がブランドの価値を損なうどころか、中身のケチャップの鮮やかな赤色をより引き立てている点です。「環境への配慮」と「商品の視認性向上」を同時に叶え、企業のサステナブルな姿勢を消費者に伝える優れた実践例といえるでしょう。

森永製菓:プラスチックの軽量化とバイオマスインキのハイブリッド対応

森永製菓(株)は、素材の削減とインキの切り替えを同時に実現する、多角的なアプローチを展開しています。
同社は、ブランドの象徴的な商品である「inゼリー」シリーズにおいて、パッケージ全体の環境配慮設計を大幅に強化しました。

具体的な取り組みとして、容器のプラスチック構造そのものの見直しが挙げられます。日常的な飲みやすさや強度を維持したまま、キャップとストロー部分の設計を極限までブラッシュアップし、プラスチック使用量の削減(軽量化)を達成しました。さらに、パッケージ外装の印刷工程には植物由来の「バイオマスインキ」を導入。資材の削減と印刷のグリーン化という、両面からのアプローチを成立させています。
一つの手法にとどまらず、自社の技術を結集して「ハイブリッドな環境対応」を具現化したこの施策は、既存商品の価値を守りながら環境負荷を最小限に抑える、次世代のパッケージ開発における重要な指針となっています。

食品工場の生産技術・R&D部門が押さえるべき3つの導入ポイント

食品工場の生産技術・R&D部門が押さえるべき3つの導入ポイント

パッケージのサステナブル化は、単に「環境に配慮する」という理念だけでは現場に定着しません。
ここでは、工場の安定稼働や食品の安全性を担保するために、実務レベルでクリアすべき主な3つのポイントを解説します。

既存の充填・包装ラインとの互換性(生産性の維持)

新たな環境配慮型資材への切り替えにおいて、現場の最大の障壁となるのが、工場の包装・充填(じゅうてん)機械との相性です。

どれほど環境性能が優れていても、既存ラインの稼働スピードが落ちれば、生産コスト全体の増大に直結します。特に、紙素材への変更やフィルムの薄型化は熱圧着(シール)の条件管理を複雑にするため、「シール部のシワ」「熱によるフィルムの溶融」「圧着不足によるピンホール」といった不具合を引き起こすリスクがあります。

生産技術部門では、既存のマシンで「従来の生産性を維持したままスムーズに流せるか」「温度・圧力・時間の三条件をどう再構築するか」という、実機での徹底した検証が必要です。資材メーカーと初期段階から密に連携し、アタッチメントの最適化までを織り込んでおくことが、安定稼働へ向けて欠かせないステップといえるでしょう。

食品の「安全・安心」を担保するバリア性の確保

脱アルミや薄型化をおこなう場合、R&D部門が最優先でクリアすべきは、設定された賞味期限(品質保持能力)を担保できる科学的根拠の提示です。環境性能をいかに高めても、内容物の酸化や乾燥を防ぐバリア性が低下すれば、食品の安全・安心は担保できません。
従来のアルミ構成から新資材へ移行する際は、目視では分からない水分や酸素の透過率がわずかに変化し、風味の劣化を招くリスクが生じます。そのため、選定段階における保存試験と、厳密な経時変化のデータ測定が不可欠です。
初期のスクリーニング段階からバリア性データを蓄積して、ブランドの信頼を守りながら環境対応の両立を目指しましょう。

信頼できるパートナー(包材・印刷会社)との協働

信頼できるパートナー(包材・印刷会社)との協働も、サステナブル包装へのスムーズな移行を実現するためのポイントの一つです。

工場の機械特性や食品の特性に合わせた細かなチューニングには、専門会社との緊密な連携が欠かせません。新資材の導入初期には、テスト対応や技術的な検証において予期せぬ不具合が発生するケースが多々あります。トラブルが発生した際、的確な代替案や仕様変更をスピーディーに提案できる専門知識を持ったパートナーの存在は、開発期間の短縮に直結します。

また、資材そのものの「安定供給」を維持できるサプライチェーンの構築能力も重要な選定基準です。技術的な課題解決力と、リスクに強い供給力の双方を兼ね備えたパッケージのプロを味方につけることが、持続可能な製品開発を支える確かな基盤となるでしょう。

まとめ|2026年の環境規制を機に、持続可能なパッケージ戦略へ一歩を踏み出そう

2026年、原油価格の高騰やナフサの供給不足といった課題が続く現状は、薄型化・脱アルミ・バイオマス化など、パッケージ全体の変革を断行する絶好のタイミングといえます。
工場の既存ラインとの互換性や食品のバリア性確保など、技術的なハードルをクリアするための鍵となるのが、専門知識と安定した調達網を持つパートナーとの早期の連携です。先を見据えたパッケージ戦略の構築は、単なる規制への適応にとどまらず、これからの食品業界を生き抜く強力な武器にもなります。
信頼できるパートナーを見つけて、持続可能な未来へ向けた具体的な第一歩を踏み出しましょう。

お役立ち情報

印刷の色を減色するなど検討したいとお考えであれば、専門のスタッフに相談し、適切な形で変更することをお勧めいたします。


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