【連載第30回】価格暴騰で消費者がどの様な対応を取るのか?(10) | ショクビズ!

【連載第30回】価格暴騰で消費者がどの様な対応を取るのか?(10)

公開日:2023.09.21 更新日:2024.10.17
ライター:信田 洋二

コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。

今回からは、『商品を育てる』とはどのようなことか?を解説してみたいと思います。


「商品を育てる」は、なかなかメーカーさんの立場からでは聞き馴染みのない言葉かと思いますが、小売業にとってみれば、言わば『売れる商品に育て上げる』ことは何よりも重要なことと言えると思います。単に、メーカーさんから供給されたものや卸問屋さんから仕入れたものを流す(並べて売る)だけでは、本来の小売業としてのあるべき姿ではありません。メーカーさんが供給してくれない。

卸問屋さんが流してくれないとなると、小売業はお客様に買って頂く商品がなくなり、破綻してしまいます。しかも、せっかくメーカーさんや卸問屋さんが供給してくださった商品であっても、無為無策の中で単純に陳列だけしていてもお客様に刺さる確率は極めて低くなり、結果的に商品が滞ることになります。販売鮮度(賞味期限)の長い商品であっても、絶えず新鮮な商品を入れ続け売場を活性化させ続けなければ、店は次第に陳腐化し、商品の動きも滞り、お客様から見放された店となり果ててしまいます。

世に、多くの店がこのような流れを経て、閉店・撤退をしていってしまいましたが、これらの店舗での共通項としては、『商品を育てる』という意識に欠け、単純に『並べて売る』ことのみに集中してしまった店舗である、と言うことになります。では、『商品を育てる』とはどのようなことなのでしょうか? 考えてみたいと思います。

例えば、近年のコンビニなどのラーメン売場では、おおよそ3尺のゴンドラで2ないし3本での売り場展開をしているケースが多いですが、大体共通項として、上段2~3段では、その週の新商品の販売コーナーがあり、その他の売場では既知の所謂定番化された商品がほぼ固定化して陳列されているという図式をよく見かけます。

新商品のコーナーにある商品は、1回新商品の発売日(商品の取り扱い開始日:コンビニでは毎週火曜日が多い)に発注し、売場での展開を行えば、あとは『売り切れ後免』状態で、大好評の商品で翌日の水曜日に初回発注分が売り切れたとしても、追加での発注を行わないということが頻繁に行われています。

つまり、新商品で『継続的に売れる可能性』がありながらも、全く『育てる』と言う発想が無く、初回発注分で追加無し、ということが繰り返されています。本来、新商品の発売というのは、その後も継続して販売できる可能性ある商材を見付け、それらを『定番化』させることで、部門(分類)全体の底上げを図る為に取り扱いを行うことが求められており、初回発注分の売り切りをもって取り扱いの終了というのは本筋からは大きく逸脱することになります。

ですが、残念ながら、現状では大半の商品がそのような取り扱いをされてしまっています。由々しき事態であり、ある調査では国内のラーメンの製造メーカーさん各社が合計して年間に新たに取り扱いを開始する「ラーメンの種類」は、年間で700アイテムにものぼると言われています。しかし、その内で発売から1年後にも商品として存続できている商品は、僅か数アイテムのみという調査の結果もあると言われています。それだけ、開発競争が激しいとも言えますが、問題は小売り側の『商品を育てる意識の欠如』に大きな要因があるかと思われます。

次回も、『商品を育てる』と言う点で、『小売り側の意識』について解説してみたいと思います。

(次の配信は10月25日頃の予定です。)

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この記事のライター

信田 洋二

信田 洋二

1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。