グローサラントとは?成城石井やイオンなど続々参入!いま食品小売で注目される理由を解説
日本のスーパーマーケット(食品スーパー)の新業態としてメディアにも取り上げられ、注目を集めている「グローサラント」。ウエルシアなどのドラッグストアが低価格帯の加工食料品や野菜などの生鮮食品の販売に参入し売上を伸長させるなかで、食品スーパーの次の一手として期待されている営業形態です。ここでは、グローサラントの特徴やイートインとの違い、グローサラントの源流、成城石井やイオンなど日本で展開されている店舗の事例などについてまとめました。コロナ禍においても増え続けているグローサラント型店舗とは?今後、食品小売業界で勢いが増すであろうキーワード「グローサラント」についてご紹介します。
グローサラントとは?食品小売店で注目される理由
グローサラントは「食料品」×「レストラン」の新しい営業形態
グローサラント(Grocerant)とは、食料品(Grocery)とレストラン(Restaurant)を合わせた造語(混合語)で、食品スーパーなどで購入できる食材をその場で調理し、店内で提供する営業形態を指します。食品スーパーに立ち寄る気軽さで、レストランや専門店並みのクオリティの高い食事が食べられる点が魅力で、その施設のことを「グローサラント型」店舗ともいいます。
コンビニなどの店舗内で購入した商品(既製品やカウンターFF)を食べるイートインとは異なり、食品スーパーで売られている食材を用いたメニューの中から注文でき、その場で調理された出来立ての料理を食べられるのが最大の特徴です。
フードコートのような開放感があり、ゆっくりと食事をすることもでき、食品スーパーで見つけた食材を試したり、どのような調理法が向いているのかを自分の舌で確認したりという楽しみ方もできます。また、料理を食べてみて気に入った食材を食品スーパーで購入し、自宅に持ち帰って調理するといった双方向での楽しみ方も可能です。レストランで提供しているメニューを自宅でも作れるようにレシピカードを準備して、購買につなげる工夫もしています。
コロナ禍で急成長を続けるECサイトや宅配、ドラッグストアにはないライブ感や体験を、リアル店舗の強みとして打ち出す食品スーパーが増えているのです。
グローサラントの始まりはイタリアの食品スーパー「イータリー」
食品スーパーの新業態として日本では東京を中心に増えてきているグローサラントですが、始まりは2010年にアメリカ進出を果たしたイタリアの「イータリー」が源流だといわれています。ニューヨークにオープンした1号店では、カプチーノやジェラート、パニーニといったイタリアのグルメをその場で調理し、陳列棚の隣に併設されたレストランで食べるという新しいスタイルでたちまち人気店となりました。
立ち飲みカウンターでワインを楽しめたり、料理本などの専門書も読めたりという、グルメ食品売り場とレストランを融合させた、まさに体験型の新業態「イータリー」の誕生に、アメリカ在住の流通コーディネーターはこぞって絶賛し、日本の食品小売業界にグローサラントという概念を広く紹介したといいます。
2017年撮影:イータリー ニューヨーク1号店 実は、「イータリー」の海外進出はアメリカより日本のほうが早く、ローソンが2008年に代官山に1号店をオープンしたものの、2014年に閉店。2017年に「イータリーグランスタ丸の内店」として三井物産ときちりが再オープンしたという経緯があります。2018年にきちりが事業から撤退し、現在はイータリー社と三井物産の共同出資会社であるイータリー・アジア・パシフィックが運営しています。2020年6月に国内3店舗目となる「イータリーHARAJYUKU」をオープンし、話題になりました。
成城石井とイオンのグローサラント型店舗事例、特徴をご紹介
イータリー以外に東京などの都市部でグローサラントを導入している食品スーパーは、成城石井、イオン、クイーンズ伊勢丹、イトーヨーカドー、東急ストアなどが挙げられます。中でも成城石井とイオンはいち早くグローサラントに着目し、先駆け的なポジションを確立しました。時系列では2017年7月にイオンがJR新浦安駅前に「イオンスタイル新浦安MONA」をオープン、同年8月に先述の「イータリーグランスタ丸の内店」、同年9月に成城石井が京王線調布駅直結の商業施設内に「SEIJO ISHII STYLE DELI&CAFE」を出店しています。 ここで、成城石井とイオンのグローサラント型店舗の特徴についてご紹介します。
SEIJO ISHII STYLE DELI&CAFE(成城石井スタイル デリ&カフェ)
■画像引用元:成城石井スタイル (https://seijoishiistyle.com/)
アメリカ視察から学んだノウハウを日本版グローサラントとして落とし込み、成城石井の中では最大規模の面積を誇る店舗です。「売り場に近いレストラン」をコンセプトとし、旬の食材を使用したメニューをオススメの食べ方で提供しています。
国産牛豚を使用したハンバーガーや自家製ベーコンのピザ、自家製ローストビーフ丼のほか、フレッシュスムージーやジェラートなど幅広いメニューを展開。レストランで味わったメニューを家庭で再現できるようにレシピカードのサービスも提供しています。食材の約90%を店舗で購入できるため、物販購入につながるメリットもあり、惣菜製造を調理スタッフが担うことで、店舗の販売管理費の増加を抑制できたとしています。
もともと惣菜などオリジナルのメニューに定評のあった成城石井ですが、そのこだわりはグローサラントにも活かされており、今後も日本のグローサラントをけん引する存在といえそうです。
イオンスタイル新浦安MONA「ここdeデリ」
■画像引用元:イオンスタイル新浦安MONA (https://www.aeon.com/store/lp/585709/)
イートインとマルシェが融合する「食」をテーマとしたマルシェダイニングです。「ここdeデリ」というスタイルで、84席のイートインスペースやバルを併設。 手作り、ライブ感、出来立ての料理にこだわり、チョップドサラダの専門店「サラダビッツ」やスーパーの惣菜コーナーで販売している食材を活用したサンドウィッチショップ「デリサンド」、生パスタを使用した「ペルグラーノ」などを提供しています。リカーコーナーで購入したアルコールを持ち込めるバルが特徴です。
グローサラントは食品小売企業の戦略に
アメリカではグローサラントはコミュニティの場としても活用
目新しさだけでなく、食品小売企業の戦略としても注目されているグローサラント。 コロナ禍の真っただ中の2021年6月には阪急オアシスがグローサラント「キッチン&マーケット」の3店舗目を兵庫県にオープンするなどの動きも出ています。
アメリカでは、一人でも気兼ねなく食事を楽しめるようにカウンター席や一人掛けのソファー席が設置され、家族向けにキッズ用のプレイスペースが設けられるなど大規模な施設が主流で、顧客ターゲットは幅広く設定されているそうです。また、食事をする商業施設としてだけでなく、貸切できる部屋を備え、公民館のような役割も担っているといいます。
ライフスタイルが多様化し、孤食(個食)の問題も取り沙汰されている日本でも、買い物のついでに気軽に利用できるグローサラントは、今後コミュニティの場として機能する日が来るかもしれません。現在は東京を中心に新規導入が続いているグローサラント。今後の進化に注目したいと思います。
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記事:ショクビズ!編集部
この記事のライター
ショクビズ編集部
企業の主な実績
オリジナルシールの企画・作成 10,000社以上
オリジナル紙箱・化粧箱・パッケージの企画・作成 11,000製品以上