【連載第6回】変容する中食業界で生き抜く惣菜戦略(最終回) ~身体に優しく美味しいお惣菜づくり~

公開日:2024.08.30 更新日:2024.09.04
ライター:ショクビズ編集部

長野県は健康長寿世界一を目指しての取り組みがわかりやすく、平均寿命は男性・女性ともに全国トップクラスである。県あげての取り組みで地域の野菜をたくさん食べる習慣を身につけ、一日3食規則正しい食生活をし、そしてよく噛んで食べる。沖縄も同様に長寿県で、鰹節の消費量が多く、角煮やチャンプル、ソーキそばの出し汁などでも健康長寿に大きく貢献している。全国それぞれの地域特性を生かした取り組み、時間軸はある程度必要だが、身体に優しく美味しく食べることは、何よりの健康づくりなのである。

無農薬、添加物など素材にも配慮したオーガニック総菜類に人気があるようだが、生活環境の変化とともに総菜ニーズの高まり、工場での大量生産・大量消費の構図で致し方ない部分もあるが、普段ご家庭で使用しないような添加物も数えきれない程使われている。スーパーの総菜売り場を拝見しても工場製品としての総菜が大半を占めるが、店内加工で差別化を図らなければならない。

惣菜としての素材、手間と粗利のバランスは大事だが、出来るだけ規格外で十分対応ができ、野菜でも多少形が整っていなくても大歓迎。以前オーガニックの産地を拝見したが、農薬を使わないと虫が多いと言われているが、最近は農薬を使用しないと虫は寄ってこないとのことだ。魚介類は海水温の上昇でとれる地域が変化し食習慣や一次加工などで苦慮し、アニサキスなどの線虫も少なくないが、それを丁寧に処理する所から美味しさにつながるケースもある。

基礎調味料である、さ(砂糖)、し(塩)、す(お酢)、せ(醤油)、そ(味噌)、特に和食としての味付けはほとんどがこれで事足りる。大量生産となれば時間的な安全性、見栄えの維持などでどうしても添加物の使用は避けられないが、店内加工であればご家庭の味に近づけられるのである。糖度や塩濃度などは簡単な計量器で調整ができるので、ある程度数字で確認して行けば、より健康に配慮した惣菜が作れる。

最近は秋らしい季節が短くなったが、日本人だからこそ季節を食べることを優先させなければならない。真夏の炎天下の下で元気に育った薩摩芋や里芋、大根・人参・牛蒡・蓮などの根菜類は栄養豊富で身体に優しい。秋=さんまのイメージが強いが、焼くだけでなく、煮つけに、揚げ物に、そしてご飯にと調理方法で変化がつけられ、シンプルに食欲をそそるのである。

一世帯人数の減少により、ひとりで食事をするケースは益々増えていく。バランスの摂れた食事、言葉では分かっていても実際にはなかなか難しい。働く場所では大量生産の総菜は必要だが、人が住む場所の近くでは店内加工で、出来るだけ身体に優しい惣菜の提供をして行かなければ、健康長寿にも陰りが見えてしまう。(おわり)

【連載第5回】変容する中食業界で生き抜く惣菜戦略 ~生鮮部門のお惣菜~

<プロフィール>

成田廣文(成田惣菜研究所所長/ナリタヤ代表取締役)

大学卒業後、アメリカを視察。コンビニンスストアトいう業態を知り感動する。1974年実家の鮮魚店を食品スーパーに業態変更して開店。77年食品スーパーの売上が半減、利益確保の手段としておにぎり、サンドイッチなどから惣菜の販売を開始。89年全国スーパーなどから、問合せが殺到。コンサルタント業務を開始。94年成田惣菜研究所を設立。顧客企業はスーパーなど全国800社に上る。自らも惣菜店を経営するかたわら、惣菜コンサルタントとして地方を飛び回る。成田惣菜研究所においての基本は『手づくり』。自営業者としての生き残り策の模索が、結果的に他にない実践的な惣菜ノウハウにつながり、今や、“日本一の惣菜コンサルタント”として時代に求められている。※お問い合わせはこちら

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