【連載第20回】コロナ前後で変わるお客様の消費動向(19)

公開日:2022.11.28 更新日:2024.10.17
ライター:信田 洋二

コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。

今回から数回は、緊急掲載として、『史上まれにみる物価高』に消費者はどの様に対応しようとしているのか?という点について解説します。


「暴騰」とさえ言えてしまう現下の商品の値上げラッシュですが、あまりにも短期間に次々と、しかもありとあらゆる商品と言っても良いほどに商品の価格が上がってしまっています。これらについては、消費者の大多数は「世界情勢などを考えると致し方ない」と考えているケースが多く、現在のところでは、「甘んじて受けている」と言った消費行動となっている状況と言えます。

が、冷静になってこれまでの消費生活とは大きく異なる対応を取り始めている消費者も非常に増加しているのが現状と言えます。多くの消費者の場合、商品価格の暴騰となっても、収入が価格上昇分増加しているケースは殆どないのが実情です。つまり、可処分所得は増加していない中で、商品価格が上がり続けているという状況で、その場合に発生する事象としては、①購入点数(買い上げ点数)の削減②1点当たりの購入金額の削減(抑制)です。

分かりやすい例で言えば、肉であればこれまでは牛肉を使っていたメニューを豚肉、或いは鶏肉に変える。キャベツを使ったメニューであれば、もやしや豆苗に代える。などです。多くの消費者の場合、1日に使える「食費」は予め予算化し、ひと月の食費の総額から1日当たりに使える食費などを割当しているケースは非常に多い状況です。

特に、年金で生活をしている方々にとっては、国民年金なども実質的に支給額が減額されている上に、食費のみならず水道光熱費やその他のあらゆる価格が上がっている中で、年金の受給額は変わっていない訳ですので、どうしても削減せざるを得なくなるのが食費と言う事になります。

支出を削減するには、先述の①②の方法しか対応策はありませんが、そこで課題となるのが『摂取カロリーは死守』と言う事になります。皆さんに置き換えて頂けると分かりやすいかと思いますが、例えば『おにぎり』をお昼ご飯に買おうとした場合、これまで3個買っていた人が、支出を抑えるために、『2個』にする。と言うことは、ひもじさも含めてなかなかできないことです。どうしても空腹となってしまう。3個が普段の食べる量からすると、2個と言うことになれば、その削減されてしまう精神的なダメージはかなり大きなものとなります。そのため、支出を抑制しつつも、「摂取カロリー(食べる量)」は何としても死守すると言うことになると、できることとしては、『1個当たりの単価を下げる方策』と言うことになります。

例えば、おにぎりの場合ですと、ほとんどの方が1つ目のおにぎりの具材を決めているケースが多い(コンビニなどでは、『ツナマヨ』と『鮭』がほぼ全てと言って良い店でトップ1位、2位です)ですが、これらの商品も御多分に漏れず、価格が上がっています。しかし、1日当たりの支出額が一定で、1個目の商品が値上げされ、しかも3個のおにぎりが欲しい。ともなれば、2個目、3個目の商品は、これまで購入できていた商品ではなく、見向きもしてこなかった低価格の商品に目を向け、購入することが必要となってきます。つまり、これまで2番手、3番手の売れ筋商品として君臨していた商品が大きくその販売数を下げ、代わりに低価格商品などが、それらに取って代わる状況となっている。と言うのが現状です。

店舗側も、これらの事情から実施するべき内容を決めていかねばなりませんが、小売り側もなかなかに踏み切れていないのが現状の実情です。

今後、給料(可処分所得)がなかなか上がらないままに、商品の価格だけが次々上がる、と言う状況はかなりの長期間続くことが想定されます。これらの現状を踏まえて、メーカーさんとしてどのような対応を行うべきか?これから数回に渡って色々な角度から考えてみたいと思います。

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この記事のライター

信田 洋二

信田 洋二

1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。