コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。
第15回は「エンドゴンドラ活用術」についてのコラムです。
今回からは、『エンドゴンドラ活用術』と言うテーマで解説をしてみたいと思います。
スーパーマーケットやドラッグストアなど、チェーン展開をしている店舗においては、店舗の「定番売り場」については、大半はその棚割りは本部の商品部が決めているというケースが多く、特に近年、作業の省人化を進める上で必須とされている自動発注の仕組みを導入しているチェーンでは、定番の売り場については、棚割り通りに商品の展開を行わないとシステム上問題が発生することとなる、とされています。その意味では、定番の売り場では、店舗側で売場の配置や商品構成を変えることができず、機械的に補充の発注を自動的に行い、店舗は品出しの作業だけを行う、ということが、いわば「当たり前」となっています。
しかし、本部が決めた定番の売場は、個店ごとの立地などの状況、来店されている客層およびお客様のニーズ(店に対する期待)を汲み取って売場を作る、と言うことについては、ほとんど出来ていないのが実情です。お店によって大きく異なるお客様のニーズなどにお応えができることを許されている唯一の売場は、各々の商品分類の「エンドゴンドラ」である場合が多い状況です。しかしながら、多くのスーパーマーケットなどでは、それらのエンドゴンドラについては、決して有効的な活用がなされているとは言い難い状況となっています。
内容的には、「日替わりチラシ商品の残骸の売場」であったり、「近隣の生鮮品の売場とは連動できていない売場」であったり、「色々な分類の商品の展開を行い、何が売りたいのかわからない売場」と化してしまっていたり・・・と課題が非常に多い売場となってしまっている実情があります。メーカーさんの中で、自社製品を一斉に大陳(大きく陳列を行う事でボリュームで目立たせる)を請け負い、エンドで展開されているケースも、チェーンによっては見掛ますが、どれだけの販促効果があるのか?冷静に分析されたほうが良いのではないかと思われます。
長期化するコロナ禍や混沌とする世界情勢などを考えてみますと、消費者の心理としてはできるだけ無駄なものは買いたくはない。しかし、これまでの生活のレベルは下げたくない、と言う非常に複雑な心理状態で「モノを買う」ということをされておられます。どうせ買い物をするのであれば、「自らが納得して」「納得した商品」を購入したい、と考えておられる消費者は、特にここへきてかなり増加しているものと思われます。
それらの方々に納得して購入いただける商品構成とするには、エンドゴンドラでの「生活提案」こそが現在最も求められている売り場展開です。日替わり特売商品の残骸の売場で多い展開の事例は、みりん風調味料に醤油、砂糖にみそ、それと味付け海苔などが混在している売場であり、筆者などはこれらの展開をしている売場を見ると「日替わり商品の墓場」とさえ呼んでいます。
このような売り場では、何ら生活の提案などできてはおらず、十年一日昔ながらの日替わり特売の商品についてもほぼ変化もなく、みりん風調味料や醤油、砂糖などの「単品」にだけ価格的な優位性を求め、それらの商品以外への広がりが全く見えない、と言うような表現となってしまっている売場としている店舗が非常に多いのが実態です。このようなことを繰り返していたのでは、消費者の消費欲求を満たすことは、全くもってできないと考える必要があります。
次回は、実際にどの様なエンドゴンドラを構築していくべきか?解説をしていきます。
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この記事のライター
信田 洋二
1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。