【連載第23回】価格暴騰で消費者がどの様な対応を取るのか?(3)

公開日:2023.02.27 更新日:2024.10.17
ライター:信田 洋二

コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。

今回は、『不要と思われている商品を如何に購入頂くか?』と言う視点で、解説してみたいと思います。


極直近では、スーパーマーケットよりもドラッグストアの方が苦戦を強いられていると言うデータ(地区)があります。

ドラッグストアは、これまでの商売であれば、「安く仕入れて安く売る」「店のオペレーションは画一化」「無駄な経費を可能な限り削り取る」ということで、『安さ』を前面に出した商売をされておられました。「価格志向」が強いお客様を中心に、お店の中でも、生鮮品や日配品、一般加工食品、菓子、飲料、酒類などについては本業の日用雑貨類、薬品類などに加えて、収益の大きな柱となり、更にスーパーマーケットやコンビニの牙城を崩しにかかっていると言う印象が、強く感じられていました。これらの政策によって、多くのドラッグストアのチェーンで、大きな勢いを得てこれまで急成長を遂げてきたことについては、皆様もすでにご存じの通りかと思います。

徹底して無駄のない店舗オペレーションの仕組みを構築し、日中には店内に1人しかいない、というようなお店すらあります。生活防衛意識の高まりで、お客様が「安さ」を求めている昨今においては、ドラッグストアのチェーンこそが最大の伸び幅のある業態であるとの認識をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

しかし、現実にはそのようにはなっていませんし、スーパーマーケットがあちこちで競争に敗れ去り、閉店(廃業)を余儀なくされるケースも少なくはありませんが、まだまだ生活をしていくための『買い物の第一優先(ファーストチョイス)』として、スーパーマーケット(特に、地場で地域密着の経営を目指しているチェーン)が選ばれる傾向が強くあります。

ドラッグストアは、確かに「安い」。しかし、「その後の広がりがない」。が、スーパーマーケットは、「地元のことをよく理解していて、自分たち(お客様)に合った商品がある」という点から、まだまだ選ばれ続けています。そこには、『不要不急』と考えられているものも多数含まれています。

例えば、嗜好品や菓子、果物などは、「生命の維持」という観点で言えば、「絶対に必須で接種すべき食品」とまでは言えません。不要ではないですが、絶対か?と言われれば、そこまでではない。しかし、これらが『メインとなる商材(生鮮食品など)』の「次」で、しっかりと控えているからこそ、「不要不急」と考えられる商品にも目が行き届くということになります。残念ながら、「目的購入品」が買い物の大半を占めてしまう場合、それら以外の商品には余り関心を示さず、見えども見えず、の状態となっているケースが多い状況になります。つまり、買い物の目的品以外のものについては、目もくれず、目的のものだけを買ってすぐに帰る。このような購買行動となっているケースが多いものと思われます。

次回から、『売場で商品に関心を持ってもらう』為に、何をすべきか考えてみたいと思います。

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この記事のライター

信田 洋二

信田 洋二

1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。