加熱食品でも食中毒!黄色ブドウ球菌を発生させないための対策とは?

公開日:2024.07.31 更新日:2024.09.11
ライター:ショクビズ編集部
加熱品でも食中毒になる可能性があることをご存知でしょうか?近年、弁当や総菜など調理後(加熱後)の食中毒の事例が多く発生しています。
それらは、
正しい手洗いが出来ていなかった
手袋の着用をしていなかった。
手洗い後や手袋の手で髪の毛や肌をさわってしまった
持ち帰り時に適切な温度管理が出来ていなかった
ということが要因として挙げられます。
食中毒は非常に恐ろしいことであり、過去には、死亡事故に繋がる事例も起きています。
食中毒が報告された時点で、商品の回収や要因の特定など、非常に困難な状況に立たされてしまいます。
そして何より、消費者の食の安全を守ることが食品工場様の必須条件であり、これよりも優先される事項はありません。
しかし、食中毒の発生がなくなることはなく、近年は増加傾向にあります。
▼過去5年間の食中毒発生状況
参照:厚生労働省 食中毒統計資料(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html)
その要因の一つは【加熱食品は食中毒にならない】 という意識が根底にあるからではないでしょうか?
本記事では、【加熱食品でも適切な対処をしなければ食中毒になりえる】ということを解説いたします。
加熱食品を販売されている食品メーカー様、スーパーなどの小売店様も、加熱食品の製造・管理について見直すきっかけになれば幸いです。

加熱食品でも食中毒は発生する可能性がある

食中毒に伴う菌は、大半は “ 75度以上1分間の加熱 ” でほとんどの細菌は死滅します。
ウイルス対策としては、 85度~90度の状態で90秒間以上の加熱 ” が必要なります。
下表は「主要食中毒菌の死滅温度と加熱時間」の表になります。
主要食中毒菌死滅温度/加熱時間
腸管出血性大腸菌75℃/ 1分
カンピロバクター75℃ /1分
サルモネラ属菌75℃ /1分
リステリア65℃ /数分
ノロウイルス85~90℃ /90秒間以上
基本的な食中毒菌であれば、上記の温度と加熱時間で死滅します。
加熱を行うことで、85度~90度の90秒以上の加熱工程はクリアされているでしょう。
しかし上記の表のように、食中毒細菌の種類により、死滅温度や時間が異なります。
そのため「食中毒予防法」も菌種ごとに考える必要あります。
また、菌は食品の表面に付着していることが殆どになるため、肉のミンチなど混ぜ合わせているものに関しては十分に加熱する必要があります。
なぜなら、表面温度は90度となっていても中心温度が死滅温度に達しているかが不透明であるからです。
そのような食品については、油の温度と時間をしっかり確認し、可能であれば中心温度の測定を行うようにしましょう。
また、今回は上記のような加熱で死滅出来る菌以外で、食中毒に繋がる重要な菌のご紹介をさせていただきます。

食中毒の原因、「黄色ブドウ球菌」は加熱食品でも食中毒を引き起こす

2024年7月、横浜市の百貨店に入っているうなぎ店で弁当や総菜などを購入した約130人が体調不良を訴えた集団食中毒が発生しました。
土用の丑の日に起きたことから被害の数も多く、ショッキングな出来事として記憶に新しいかと思います。
この食中毒で検出されたのは、【黄色ブドウ球菌】という食中毒菌です。
そして原因とされているのは、「盛りつけ担当のスタッフが手袋をつけずに作業していた」といことでした。
黄色ブドウ球菌は、化のうした傷口などに多くいる細菌です。保健所は手や指に傷がある人は食品に直接触れないよう呼びかけています。
では、その「黄色ブドウ球菌」について少し詳しく説明します。

黄色ブドウ球菌とは

黄色ブドウ球菌は、5~47.8℃の温度域で増殖 (至適増殖温度:30~37℃)し、エンテロトキシンという毒素が産生されるのは 10~46℃の温度域と報告されています。
また、食塩濃度 16~18%でも増殖し、他の条件が適当であれば食塩濃度 10%でもエンテロトキシンを産生します。
黄色ブドウ球菌は健康な人でも、約30%が鼻腔や手指などに持っていると言われています。
もちろん人だけではなく、他のほ乳類や鳥類にも広く分布し、私達の身の回りにごく普通に存在している菌なのです。
顕微鏡で観察すると良く分かるのですが、直径約1μm(1mmの1000分の1)の球形をした菌で、
複数の菌が集合してブドウの房状に見えます。
このことと、培養したときに黄色い色素を出す特徴により、黄色ブドウ球菌と名付けられました。
また、耐熱性で、乾燥にも強く、食塩濃度が高く(7~10%)ても生きていけるという特徴を持っています。
黄色ブドウ球菌は食中毒菌としてもよく知られており、この菌に多量に汚染された食品(一般に1g当たり10**6個以上)を食べると、1~5時間の潜伏期間の後に、吐き気・嘔吐・腹痛・下痢などの症状が現れます。

黄色ブドウ球菌による食中毒発生のメカニズム

黄色ブトウ球菌による食中毒発生のメカニズムについて説明します。
黄色ブドウ球菌は、ブドウ球菌エンテロトキシン(以下エンテロトキシン)と呼ばわる毒素を産生します。そのため、食品中で黄色ブトウ球菌が大量に増えると、そこにエンテロトキシンが蓄積されます。
エンテロトキシンは酸に強いため、胃酸でも消化されず、胃や小腸から吸収され、嘔叶を引き起こします。
更に、熱にも強いため100℃30分間の加熱でも壊れてしまうことはありません。
そのため、エンテロトキシンに汚染された食品は「加熱したから大丈夫。食べられるよ」ということにはならないのです。

食中毒菌「黄色ブドウ球菌」を防ぐには?

上記で説明させていただいた通り、黄色ブドウ球菌は非常に怖い食中毒菌になります。
加熱してもエンテロトキシンは破壊されず、食中毒菌を起こす要因となります。
食中毒予防の三原則は、細菌を「付けない」「増やさない」「やっつける」です。
しかしエンテロトキシンを「やっつける」方法は容易ではございません。
そのため「付けない」・「増やさない」方法をご紹介させていただきます。

黄色ブドウ球菌対策の「付けない」「増やさない」方法

■ かならず手袋を着用する
黄色ブドウ球菌は人間の常在菌であるため、混入を防ぐためには「つけない」が重要となります。
■ 正しい手洗いを行う
 手洗いも菌をつけない為の大切な対策ですが、正しい手洗いを実施する必要があります。
正しい手洗い方法をご紹介しておりますので、参考にされてみてください。
・これが本当の手洗いだよ!ショート動画
■ 調理中に髪や肌を触らない
 黄色ブドウ球菌には、健康な人の肌にも存在しています。そのため、調理中は髪や肌に触れないよう、髪を纏めたり、頭巾をかぶるといった対策が必要です。
■ 食品の持ち帰り時には低温で持ち帰る
 黄色ブドウ球菌の最適な増殖温度として30~37℃といわれています。そのため、30℃未満になるように、保冷剤などを活用して持ち帰ってください。
ドアノブや携帯、その他いろんなところに黄色ブドウ球菌が付着している可能性は0ではないので、調理環境の点検や不要物の持ち込みの確認も大切です。
また、人によっては「黄色ブドウ球菌」が常に手から検出される方も稀にいるようです。

食中毒対策のためには現場の見直しも必要

このように加熱食品であっても適切な方法で予防を行う必要があります。
ショクビズを運営している株式会社丸信では、食品に関する衛生対策のサービスを行なっています。
食品メーカー様、小売店様で、衛生対策に不安のある方、相談をされたい方は、お気軽にご相談ください。

■ 手の拭き取り検査

正しい手洗いができているかを製造現場で確認するためには、「手の拭き取り検査」が有効です。
丸信では、食品検査と併せて手のふき取り検査も行っておりますので、ご興味のある方はご相談ください。
・手の拭き取り検査について
■ 衛生パロトール
衛生パトロールとは、食品事故等の未然防止を目的とする安全活動の一環です。
丸信では下記項目において、食品製造・販売の現場での、安全・衛生状態のチェックや細菌検査などを実施しています。※エリアに限定が御座います。
丸信の食品衛生サービスについて、詳しく知りたい方、お問い合わせをされたい方は下記「食品衛生.com」をご覧ください。
▼食品衛生サービス「食品衛生.com」
▼食品分析サービス「食品衛生.com」

この記事のライター

ショクビズ編集部

ショクビズ編集部

株式会社丸信が運営するフードビジネスのためのお役立ちメディア。
広報・プランナー、マーケターなどが集っています。
フードビジネスに関わるニュースやお役立ち情報を幅広く発信していきます。

企業の主な実績

オリジナルシールの企画・作成 10,000社以上

オリジナル紙箱・化粧箱・パッケージの企画・作成 11,000製品以上