本来は食べられるのに、流通の規格に合わず市場に出回らない「規格外野菜」が問題になっています。
農家から出荷されることもなく、野菜や果物が廃棄されてしまうのです。
しかし最近は、規格外の野菜を活用する食品事業者が増えてきました。
この記事では、規格外野菜の現状や食品メーカーにおける取り組みについて解説していきます。
規格外食品(野菜)とは
規格外食品とは、品質は規格品と同じにもかかわらず、大きさや重量、形などが市場の規格に適合しないものを指します。
中身の品質に問題がなくても、規格に合わなければスーパーなどの小売店に流通できません。
政府の統計によると、2022年時点での農作物の収穫量は約1,284万トン。その中で出荷されなかった農作物は、約170万トンというデータが出ています。
もちろん、出荷されなかった農作物すべてが廃棄されるわけではありません。しかし一定数の農作物は廃棄され、行き場がなくなっているのが現状です。
規格外の食品はなぜ流通しないのか?
「規格外野菜でもよい」「安く手に入れたい」という消費者も一定数います。しかし規格外野菜は、一般市場にあまり出回っていません。
そこで、なぜ規格外食品(野菜)が出回らないのか、その理由を解説します。
正規品の価格に悪影響を与える
規格外野菜が一般の市場に流通すると、正規品の価格に悪影響を与える可能性があります。
例えば、食品スーパーに安価の規格外野菜を流通させると、正規品の需要が減ります。すると正規品まで値下げを余儀なくされ、全体の価格バランスが悪くなってしまうのです。
規格外野菜の流通量が少ないからこそ、正規品を適切な価格で販売できています。
売る手間が必要になる
規格外野菜は、形や色が不揃いで一般消費者からみると魅力的ではありません。
そのため、規格外野菜をアピールする必要があり、余計なコストがかかる可能性があります。
規格外野菜のPRにお金をかけて、正規品以上の価格になってしまうと本末転倒です。
規格外野菜を販売する手間を考えたとき、正規品を流通させたほうが販売がスムーズになります。
肥料など他の活用方法があるから
規格外野菜は、肥料などに活用されています。
すべて廃棄されるのではなく、さまざまな活用方法があるため、表面化せず再利用されているケースがあります。
肥料として活用すれば、栽培コストを削減でき、次の作物を育てるための土壌づくりに役立ちます。
このように、規格外野菜を上手に活用している農家もいるようです。
食品メーカーが規格外食品を活用するメリット
食品メーカーが規格外食品(野菜)を活用するメリットを紹介します。
SDGsにつながり消費者からのイメージアップ
規格外野菜を活用し、食品ロスを削減することはSDGsにつながります。
SDGsの目標の中に「つくる責任 つかう責任」があります。2030年までに世界の食品ロスを半減させることが掲げられ、日本でもその取り組みが活発になってきました。
消費者も関心が高く、SDGsに取り組む企業に対して良いイメージを持っています。
規格外野菜を活用すればSDGs取り組みのアピールになり、良いブランディングができるはずです。
フードロスが減り売上の底上げにつながる
自社のフードロスを削減することで、売上の底上げにつながります。工場から出た規格外食品を販売すれば廃棄コストが抑えられ、利益も獲得できます。
例えば、バームクーヘンの製造過程で出た切れ端を「バームクーヘンの切れ端」と、そのままのネーミングで商品化し、販売している食品メーカーもあります。
あえて規格外品とアピールすることで、消費者から注目を集め、人気商品になるケースもあるようです。
規格外野菜は安く仕入れられる
規格外野菜は、正規品よりも安く仕入れられます。原材料を安く仕入れれば、コストを抑えて商品を売り出せます。
農家側も規格外野菜を買い取ってくれるため、お互いにWin-Winの関係になれるのもメリットです。
企業側は「規格外野菜を使っています」というブランディングにもつながり、アピールポイントも増えるでしょう。
規格外食品を活用する食品事業者の事例
規格外食品を活用する食品事業者の事例を紹介します。
規格外食品の格安通販「Kuradashi」
■引用画像:Kuradashi HP(https://kuradashi.jp/)より
「Kuradashi(クラダシ)」は、規格外食品専門の通販サイトです。まだ食べられるのに規格から外れた食品を集め、格安で販売しています。
スーパーで販売されている商品をはじめ、産地直送の新鮮食材など、さまざまな商品をお得に購入できるのがメリットです。
そして、Kuradashiでの購入金額の一部は、社会貢献活動の支援に繋がる仕組みになっています。消費者自身が「社会貢献ができた」「フードロス削減ができた」と、商品を購入して間接的に社会貢献やSDGsの活動に参加できることが大きな評価に繋がるでしょう。
規格外トマトの冷凍自動販売機
■引用画像:NTTアグリテクノロジー HP 「ファンデリーとのコラボ冷凍食品第一弾 食品ロス削減に貢献 規格外のトマトを活用した「旬をすぐに」新メニュー販売開始」(https://www.ntt-agritechnology.com/news/20240322.html)より
株式会社NTTアグリテクノロジーと株式会社ファンデリーは、規格外野菜を活用した商品を共同開発しています。
もともとNTTアグリテクノロジーでは、自社農場の規格外トマトを有効活用し、食品ロス削減につなげたいという課題がありました。
そこで株式会社ファンデリーが展開する「国産ハイブランド冷食“旬をすぐに”」の技術をもとに、規格外トマトを使った冷凍食品を販売する自動販売機を設置。トマトパスタと鶏のトマト煮込みの2種類を展開しています。
2つの企業が協力することで、食品ロス改善につながった事例です。
規格外野菜を乾燥し商品化「OYAOYA」
■引用画像:OYAOYA HP(https://oyaoya-kyoto.com/)より
京都府にある株式会社Agritureでは、規格外野菜を乾燥した商品「OYAOYA」を展開しています。
原材料はすべて京都産で、切り干し野菜やドライフルーツなど、30種類以上の商品を展開しています。
「OYAOYA」は、京都府北部の農家と連携し、行き場のない規格外野菜を仕入れています。添加物を加えずに乾燥させ、新鮮な切り干し野菜ができあがります。
新鮮なうちに乾燥させているため旨みが落ちず、消費者からも好評のようです。地域の規格外野菜を活用した良い事例といえるでしょう。
規格外野菜を定価で買い取り加工する「ベジート」
■引用画像:VEGHEET HP(https://www.vegheet.jp/)より
株式会社アイルは、規格外野菜を活用したシート食品「ベジート」を展開しています。
ベジートとは、ベジタブルとシートを組み合わせた造語です。規格外野菜と寒天を使用して作られており、気軽に野菜の栄養を取れる食品として人気を集めています。
同社では、規格外野菜を定価で買い取っています。これにより農家は安定した収益を見込めるようになりました。
安く買い取るのではなく、農家と共存していくための仕組みを整えている良い事例です。
廃棄フルーツからグミを製造する「やまやま」
■引用画像:株式会社やまやま HP(https://nou2c.com/)より
和歌山県にある株式会社やまやまは、社会課題の解決に取り組む企業です。
同社では、地域の農家から規格外や廃棄になる果物を買い取り、それを丸ごと乾燥させた「無添加こどもグミぃ〜。」を開発。毎月約240kgもの廃棄フルーツがグミに加工され、全国の子供達に届けられています。
また加工や発送の業務は、障害者福祉施設に業務委託し、雇用の創出にもつなげているのが特徴。規格外食品の活用だけでなく、地域の活性化にもつながっている事例です。
規格外食品の活用が広がっている
今回は、規格外野菜の現状と食品メーカーの活用事例について解説してきました。
規格外野菜を抱える農家と食品メーカーがつながれば、新しい商品開発のヒントになるかもしれません。
SDGsをはじめ、食品ロスを削減する動きは世界中で注目されているので、ぜひ取り組みを推進していきましょう。