規格外野菜とは?フードロス削減のために食品メーカーができる取り組み

公開日:2024年9月30日 最終更新日:2024年9月18日

本来は食べられるのに、流通の規格に合わず市場に出回らない「規格外野菜が問題になっています。 
農家から出荷されることもなく、野菜や果物が廃棄されてしまうのです。 

しかし最近は、規格外の野菜を活用する食品事業者が増えてきました。
この記事では、規格外野菜の現状や食品メーカーにおける取り組みについて解説していきます。 

規格外食品(野菜)とは 


規格外食品
とは、品質は規格品と同じにもかかわらず、大きさや重量、形などが市場の規格に適合しないものを指します。
 
中身の品質に問題がなくても、規格に合わなければスーパーなどの小売店に流通できません。

政府の統計によると、2022年時点での農作物の収穫量は約1,284万トン。その中で出荷されなかった農作物は、約170万トンというデータが出ています。 
もちろん、出荷されなかった農作物すべてが廃棄されるわけではありません。しかし一定数の農作物は廃棄され、行き場がなくなっているのが現状です。 

規格外の食品はなぜ流通しないのか? 

「規格外野菜でもよい」「安く手に入れたい」という消費者も一定数います。しかし規格外野菜は、一般市場にあまり出回っていません。 
そこで、なぜ規格外食品(野菜)が出回らないのか、その理由を解説します。 

正規品の価格に悪影響を与える 

規格外野菜が一般の市場に流通すると、正規品の価格に悪影響を与える可能性があります。 
例えば、食品スーパーに安価の規格外野菜を流通させると、正規品の需要が減ります。すると正規品まで値下げを余儀なくされ、全体の価格バランスが悪くなってしまうのです。 
規格外野菜の流通量が少ないからこそ、正規品を適切な価格で販売できています。 

売る手間が必要になる 

規格外野菜は、形や色が不揃いで一般消費者からみると魅力的ではありません。 
そのため、規格外野菜をアピールする必要があり、余計なコストがかかる可能性があります。 

規格外野菜のPRにお金をかけて、正規品以上の価格になってしまうと本末転倒です。 
規格外野菜を販売する手間を考えたとき、正規品を流通させたほうが販売がスムーズになります。 

肥料など他の活用方法があるから 

規格外野菜は、肥料などに活用されています。 
すべて廃棄されるのではなく、さまざまな活用方法があるため、表面化せず再利用されているケースがあります。 

肥料として活用すれば、栽培コストを削減でき、次の作物を育てるための土壌づくりに役立ちます。 
このように、規格外野菜を上手に活用している農家もいるようです。 

食品メーカーが規格外食品を活用するメリット

食品メーカーが規格外食品(野菜)を活用するメリットを紹介します。

SDGsにつながり消費者からのイメージアップ

規格外野菜を活用し、食品ロスを削減することはSDGsにつながります。
SDGsの目標の中に「つくる責任 つかう責任」があります。2030年までに世界の食品ロスを半減させることが掲げられ、日本でもその取り組みが活発になってきました。 

消費者も関心高く、SDGsに取り組む企業に対して良いイメージを持っています。
規格外野菜を活用すればSDGs取り組みのアピールになり、良いブランディングができるはずです。

フードロスが減り売上の底上げにつながる

自社のフードロスを削減することで、売上の底上げにつながります。工場から出た規格外食品を販売すれば廃棄コストが抑えられ、利益も獲得できます。  
例えば、バームクーヘンの製造過程で出た切れ端を「バームクーヘンの切れ端」と、そのままのネーミングで商品化し、販売している食品メーカーもあります。 
あえて規格外品とアピールすることで、消費者から注目を集め、人気商品になるケースもあるようです。

規格外野菜は安く仕入れられる

規格外野菜は、正規品よりも安く仕入れられます。原材料を安く仕入れれば、コストを抑えて商品を売り出せます。 
農家側も規格外野菜を買い取ってくれるため、お互いにWin-Winの関係になれるのもメリットです。 
企業側は「規格外野菜を使っています」というブランディングにもつながり、アピールポイントも増えるでしょう。

規格外食品を活用する食品事業者の事例 

規格外食品を活用する食品事業者の事例を紹介します。 

規格外食品の格安通販「Kuradashi 


■引用画像:Kuradashi HPhttps://kuradashi.jp/)より

Kuradashi(クラダシ)」は、規格外食品専門の通販サイトです。まだ食べられるのに規格から外れた食品を集め、格安で販売しています。 
スーパーで販売されている商品をはじめ、産地直送の新鮮食材など、さまざまな商品をお得に購入できるのがメリットです。  
そして、Kuradashiでの購入金額の一部は、社会貢献活動の支援に繋がる仕組みになっています。消費者自身が「社会貢献ができた」「フードロス削減ができた」と、商品を購入して間接的に社会貢献やSDGsの活動に参加できることが大きな評価に繋がるでしょう。 

規格外トマトの冷凍自動販売機 


■引用画像:NTTアグリテクノロジー HP 「ファンデリーとのコラボ冷凍食品第一弾 食品ロス削減に貢献 規格外のトマトを活用した「旬をすぐに」新メニュー販売開始」https://www.ntt-agritechnology.com/news/20240322.html)より

株式会社NTTアグリテクノロジー株式会社ファンデリーは、規格外野菜を活用した商品を共同開発しています。  
もともとNTTアグリテクノロジーでは、自社農場の規格外トマトを有効活用し、食品ロス削減につなげたいという課題がありました。 
そこで株式会社ファンデリーが展開する「国産ハイブランド冷食“旬をすぐに”」の技術をもとに、規格外トマトを使った冷凍食品を販売する自動販売機を設置。トマトパスタと鶏のトマト煮込みの2種類を展開しています。 
2つの企業が協力することで、食品ロス改善につながった事例です。 

規格外野菜を乾燥し商品化「OYAOYA


■引用画像:OYAOYA HPhttps://oyaoya-kyoto.com/)より

京都府にある株式会社
Agritureでは、規格外野菜を乾燥した商品「OYAOYA」を展開しています。 
原材料はすべて京都産で、切り干し野菜やドライフルーツなど、30種類以上の商品を展開しています 
OYAOYA」は、京都府北部の農家と連携し、行き場のない規格外野菜を仕入れています。添加物を加えずに乾燥させ、新鮮な切り干し野菜ができあがります。 
新鮮なうちに乾燥させているため旨みが落ちず、消費者からも好評のようです。地域の規格外野菜を活用した良い事例といえるでしょう。 

規格外野菜を定価で買い取り加工する「ベジート」


■引用画像:VEGHEET HPhttps://www.vegheet.jp/)より

株式会社アイルは、規格外野菜を活用したシート食品「
ベジート」を展開しています。 
ベジートとは、ベジタブルとシートを組み合わせた造語です。規格外野菜と寒天を使用して作られており、気軽に野菜の栄養を取れる食品として人気を集めています。
同社では、規格外野菜を定価で買い取っています。これにより農家は安定した収益を見込めるようになりました。 
安く買い取るのではなく、農家と共存していくための仕組みを整えている良い事例です。

廃棄フルーツからグミを製造する「やまやま」


■引用画像:株式会社やまやま HPhttps://nou2c.com/)より

和歌山県にある
株式会社やまやまは、社会課題の解決に取り組む企業です。 
同社では、地域の農家から規格外や廃棄になる果物を買い取り、それを丸ごと乾燥させた「無添加こどもグミぃ〜。」を開発。毎月約240kgもの廃棄フルーツがグミに加工され、全国の子供達に届けられています。 
また加工や発送の業務は、障害者福祉施設に業務委託し、雇用の創出にもつなげているのが特徴規格外食品の活用だけでなく、地域の活性化にもつながっている事例です。 

規格外食品の活用が広がっている

今回は、規格外野菜の現状と食品メーカーの活用事例について解説してきました。 
規格外野菜を抱える農家と食品メーカーがつながれば、新しい商品開発のヒントになるかもしれません。 
SDGsをはじめ、食品ロスを削減する動きは世界中で注目されているので、ぜひ取り組みを推進していきましょう。