【連載第3回】コロナ前後で変わるお客様の消費動向②

公開日:2021年6月16日 最終更新日:2021年7月9日

コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。
今回は第3回、前回に引き続き「コロナ前後で変わるお客様の消費動向」についてのコラムです。

 


 

 

さて、今月はコロナ禍によって変わったお客様の「酒」への消費行動の変化について解説します。「酒」という分類は、非常に嗜好性が高く、お客様の好みの違いがハッキリと消費行動に現れる商品です。ですので、他店で売れているからといって、自店に導入しても全く動かないことや、テレビCMで多く流れている商材であっても動きが非常に低調になることが多く発生する商材であり、この動きについては、他の一般加工商品や菓子類などではあまり見られない販売傾向です。

 

あくまでも、それぞれのお店の商圏内のお客様の嗜好に合うか合わないかで品揃えの可否を決める必要がある商材です。また、ビールやチューハイなどは、毎年春先~初夏にかけて、各メーカーが競って新しい商品を出してきますが、これも好みの濃淡はハッキリと出てくる商材です。各店舗は、自店のお客様の好みをつかみ、新商品であってもそうでなくても、売れそうな商材について品切れなく発注・仕入れを行うことで、お客様のつなぎ留めができるように日々努力しています。

 

その中で、このコロナ禍です。お酒に対するお客様の嗜好はかなり大きく変わりました。まず、外飲みができなくなり「家飲み」が中心となりました。これまでややもすると、家飲み用として購入する商品については価格重視の商品が多くあり、ビール類であれば、いわゆる第三のビールといわれる新ジャンルの分類に大きくその比重が掛けられていました。

 

しかし、2020年の酒税改定の効果もあり、高価格帯のビールなどの動きが良くなってきました。また、これまでは個人の好みを第一に考えた商品の動きが好調でしたが、「チャレンジしてみよう」とワインや高額のウイスキー、洋酒など、これまで動きが比較的鈍かった商材の動きが活発になってきました。

「外飲みではなく自宅で飲むのだから、少しくらいの贅沢を」という心理が働いているものと思われます。しかし、よく聞く話として、お客様からの声で多いのが、「どのような飲み方(割り方や合わせるさかななど)をすればおいしいのか?」ということです。

 

 

スーパーやコンビニでの酒売り場では、価格のみを表示したプライスカードが付いていることが一般的ですが、どのような場面で飲むのがおいしいのか、割り方(水、お湯、炭酸など)は?さかなはどのようなものが合うのか?など、未体験のものに挑戦しようとしても、店舗の売り場ではあまりにも情報がない状況です。

そこは、メーカーさんからの情報をお待ちするしかないのですが、ここでご注意いただきたいことがあります。お客様やお店が欲しい情報は、残念ながら「製品の原料やこだわりの製法」など、メーカーさんがどうしても伝えたいとお考えのこだわりの部分ではなく、「どうしたらおいしいの?」という最もシンプルで、最も核心的な情報なのです。

 

例えば、ワインについて「焼き肉に合うワインはどれ?」という情報は、ほとんどの小売りのお店では表示されていません。代わりに産地やブドウの種類、シャトー(醸造所)等の情報は満載です。「どんなときに、どのように飲めば最もおいしいか?」という根本的な情報を提供している小売り店舗は非常に少ないのが実情です。

実は、お酒に限らず多くの商品でこの傾向が見られます。こだわりの製法、こだわりの原料はメーカーさんのご苦労が伝わる内容ではありますが、残念ながらその情報だけでは、お客様の心は動きません。多くのメーカーさんがこの課題を抱えていらっしゃるのではないかと思います。コロナ禍で、様々な場面でお客様はこれまで経験していなかった新しいことに挑戦されようとしています。そのときに「参考となりやすい情報の提供」を小売りもお客様も求めているのです。

 

次回は、この「情報の出し方」について解説してみたいと思います。

 

(次の配信は720日頃の予定です。)

 

▼前回のコラムはこちらからご覧いただけます

【連載第2回】コロナ前後で変わるお客様の消費動向①


 

<プロフィール>

信田 洋二

 

1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。

 

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