フードバンク活用とは?食品業界の現状と課題、取り組み事例を解説 | ショクビズ!

フードバンク活用とは?食品業界の現状と課題、取り組み事例を解説

公開日:2024.03.18 更新日:2024.10.17
ライター:ショクビズ編集部
フードバンク活用とは?食品業界の現状と課題、取り組み事例を解説

まだ食べられるのに廃棄される食品を集め、必要としている人に寄付する「フードバンク」。 日本では食品ロスの問題が深刻化していますが、フードバンクの取り組みが認知され始め、食品メーカーの意識も変わりつつあります。 この記事では日本を取り巻く現状と課題を踏まえつつ、フードバンクの取り組みや企業の事例をご紹介します。  

フードバンクとは

フードバンクとはまだ食べられるのに廃棄されてしまう食品を、捨てずに”必要とするひと”に分けるための取り組みです。 フードロス削減といった考え方が浸透してきたため、過剰在庫数は減少しているものの、安全に食べられるけれど包装が破損しているものや印刷ミス、賞味期限間近など、さまざまな理由で廃棄予定の食品が一定数あります。その食品を廃棄せずに、福祉施設や生活困窮者へ無償提供するため、まずはその食料を集めるための活動がフードバンクです。 もともとフードバンクは、1960年代に捨てられてしまう食品の有効活用としてアメリカで始まった活動です。日本では、2000年以降に団体ができ始めました。フードロスをなくすことが目的として設立されていたものの、子どもの貧困問題が深刻化したのも同じころだったため、生活困窮者への支援活動として広がりをみせ、今では企業や地域なども協力した取り組みがおこなれわれています。 フードバンク団体の大きな供給源となっているのが食品メーカーです。メーカー側にしてみれば、「食べられるのにもったいない」という気持ちも、「誰かの役に立てる」ということで積極的に活動支援をしているメーカーも増えました。 食品ロス問題も解決しつつ、貧困問題にも貢献できるとなれば、やらない理由はないのではないでしょうか。  

日本が抱える食品の現状と課題

フードバンクは、日本が抱える課題の解決につながります。そこで日本の課題点や問題点をまとめて紹介します。  

年間約523万トンの食品ロス

現在、世界規模で食品ロスが問題となっています。その中でも日本は、特に食品ロスの多い国です。 令和3年度の食品ロス量は523万トン。このうち食品関連事業者から発生する事業系食品ロス量は279万トンにも及びます。参照:農林水産省 日本の食料自給率は約40%なのにもかかわらず、これだけの食品廃棄が発生しているのです。そのため、食品事業者のフードバンクの活用が活発になっています。

子どもの7人に1人は「相対的貧困」

日本は世界的にみると裕福な国です。 しかし日本の子どもの7人に1人は「相対的貧困」で、大きな社会問題になっています。相対的貧困とは、その国の平均的な水準より著しく貧しい状態を指すものです。特にひとり親世帯の半分以上は、相対的貧困といわれています。 しかし、日本ではほとんどの子どもが学校に通っているため、相対的貧困が表面化しにくいといった現状があります。各家庭に目を向けてみると、食べる物に困っていたり、栄養が偏っていたりするなどの問題があるのです。  

フードバンクを後押しする制度や取り組み

フードバンク活動を後押しする制度や取り組みを紹介します。  

持続可能な開発目標(SDGs)

持続可能な開発目標(SDGs)とは、社会や経済、環境などの改善を目的とした取り組みです。17の目標が定められ、より良い世界を作っていくために活動しています。 そして目標12の「つくる責任・つかう責任」は、消費と生産の最適化を目指す取り組みです。2030年までに一人当たりの食糧廃棄を半減し、食品ロスを削減します。 特にロスが出やすい食品メーカーや食品スーパーは、積極的に取り組むべき項目です。 SDGs活動は社会的にも評価されやすいため、企業が取り組むメリットは大きいでしょう。  

食品ロス削減推進法

食品ロス削減推進法とは、食品ロスを減らすために国や地方公共団体、事業者、消費者などの責任を明確にし、解決策を立てていく法律です。 この法律では、地方公共団体と協力し食品メーカーや食品スーパーなどに知識の共有やサポートが行われます。例えば、飲食店に対して持ち帰りパックの用意や少量メニューの提供などを提案するのもひとつです。 また食品を寄付する企業への税制優遇策も設けられています。食品ロス問題を解決しつつ、税金面もサポートしてもらえるのは助かる仕組みです。  

フードバンクを行う企業や団体が増えている

日本では、コロナ禍を機にフードバンク活動を行う企業や団体が増えてきました。 特に学校の休校や親の失業などで、「食べることが困難」という状況になる人が増えたことで、子ども食堂の活動が活発化し、フードバンクへの寄付が積極的になりました。食品メーカーや飲食店から余剰食品の寄付も増えました。社会が安定していない現状では、はさらに拡大していくと予想されています。 現在、日本では215ものフードバンク団体が活動しています。 参照:農林水産省 各フードバンク活動団体の活動概要(215 団体:令和4年10月31日時点) また食品ロス削減推進法では、税制優遇策だけでなく経費を支援する制度もあります。 徐々にフードバンクを後押しする仕組みも構築されているようです。 今後は食品メーカーや食品スーパーの取り組み事例も増えていくでしょう。  

フードバンク活動を行っている企業の事例

最後にフードバンク活動を行っている企業の事例を紹介します。  

フードバンクや子ども食堂への支援をしている「いなげや」

□画像引用元:いなげや (https://www.inageya.co.jp/ 東京を中心にスーパーマーケットを展開するいなげやでは、一部店舗でフードドライブ活動を開始しています。フードドライとは、家庭で未使用の食品を回収し、フードバンクや子ども食堂に寄付する取り組みです。 対象はレトルト食品やインスタント食品、缶詰、調味料、菓子、飲料など長期保存がきくものです。 消費者側もフードロス削減に協力してくれるため、地域全体で盛り上がっています。  

東北6県に食料の配給を行う「COOPフードバンク」

□画像引用元:コープ東北(https://www.tohoku.coop/ 地域の生活を支える消費生活協同組合「COOP」域の人たちがお金を出し合い、生活を向上させていくための活動をしています。食品スーパーや食品宅配の事業も行い、地域に欠かせない存在です。 そして東北6県を支えるコープ東北では、フードバンク活動を積極的に行っています。 行政や支援団体と協力し、生活困窮者の方へ食品などを提供。例えば、2023年には宮城県角田市の北江尻ふるさと安心米生産組合から、その年に収穫されたお米を寄贈してもらっています。参照:コープ東北 食品事業を展開する企業が主体となって取り組み、行政とのつながりが強くなっている事例です。  

食品メーカーの先駆けとなった「ニチレイフーズ」

□画像引用元:ニチレイフーズ | ハミダス活動(https://www.nichireifoods.co.jp/corporate/hamidasu/index.html 株式会社ニチレイフーズでは「ハミダス活動」を推進しています。 ハミダス活動とは、社員が自分の担当部署に囚われず、さまざまなことに挑戦する取り組みです。その一環としてフードバンクへの寄付も行われています。 2005年からフードバンク団体「セカンドハーベスト・ジャパン」と連携し、多くの団体に食品を寄付。今持っている仕事以外の業務に取り組んだ結果、社員のやる気向上や職場環境の改善につながったそうです。  

子ども食堂へ食品を提供する食品スーパー「ハローズ」

中四国にスーパーマーケットを展開するハローズでは、2015年からフードバンクへの寄付をしています。 ラベルの汚れや包装不良などにより販売できない食品を集め、子ども食堂やホームレス団体に寄付する仕組みです。 始めた当初は、寄付する食品を集めた物流センターに引き取りにきてもらう形でした。しかしフードバンク側の負担になるため、現在は各店舗に直接引き取りにきてもらうようにしています。これにより廃棄率が大幅に改善し、地域貢献につながったそうです。  

フードバンク活用で日本の未来を変えていこう

食品を扱う事業者は、フードバンク活用で食品ロス改善に貢献できます。特に食品メーカーや食品スーパーは多くの食品ロスが出るため、フードバンクへの寄付は大きな力となるはずです。SDGsや食品ロス削減推進法など、食品ロスを削減する後押しもあるので、ぜひ行政や各団体と協力体制を整え、フードバンク活動を推進していきましょう。   ▼「食品開発OEM.jp」はこちら オススメの記事はこちら ・「3分の1ルール」の見直しで加速する食品流通、安全性と食品ロス削減を両立へ ・食品ロス削減と業務効率化が両立できる食品の「年月表示」とは?「消費期限」「賞味期限」を考える  

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