食品業界におけるDX化とは?課題を解決、業務改善をした企業の事例をご紹介

公開日:2023.06.05 更新日:2024.10.17
ライター:ショクビズ編集部

食品業界では、人手不足や売上の低迷が叫ばれています。特に最近は、人口減少による人手不足が深刻化し、働き手の確保が困難になってきました。
そんな状況を打破してくれるのがDX化です。食品製造の現場でデジタル化をすれば、業務効率化ができ、コストと人手を抑えながら売上を確保できます
この記事では、食品業界が抱える課題やDX化のメリット、デジタルの活用をしている企業の事例を紹介します。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して業務改善や働き方を見直す取り組みです。AIやIoT、ビッグデータなどを用いることで、さまざまな業務の改革を行います。

企業に導入されている既存のシステムは、徐々に使えなくなるといわれています。これから新規事業を立ち上げて競合に差をつけるには、デジタルの活用が必須です。

特に食品製造の現場では、多くの人的コストがかかっています。これを削減できれば、大幅なコストカットとなり、安定した運営が行えるでしょう。

食品業界のDX化は進んでないのが現状

食品業界のDX化は進んでいるとはいえません。

総務省の「令和3年版情報通信白書」によると、約6割の企業が「実施していない、今後も予定なし」と回答。特に中小企業では約7割が実施しておらず、DX化が進んでいる欧米に遅れをとっている状況です。

また富士電機株式会社の「食品製造業のDXに関する意識調査」においても、DXという言葉の普及も遅れていることがわかります。

上記の結果を見ると、食品業界のDX化は進んでいるとはいえません。しかし中小企業は、慢性的な人手不足や売上の低下により厳しい状況に追い込まれています。DX化を進めて業務改善を行わなければ、企業の存続に関わってくる可能性があります。

食品業界における課題や問題

食品業界の抱える課題や問題を紐解けば、DX化の重要性が見えてきます。
そこで食品業界の課題や問題をまとめてみました。

人口減少における売上の低下

人口減少により食品の売上が低下しつつあります。食べる人が少なくなった分だけ、食品業界はダメージを受けてしまうのです。

内閣府の令和3年版高齢者白書では、日本の人口は2065年に約8,800万人まで減少すると予想されています。それに伴い食品の需要も減少するため、さらなるコストカットを行わなければなりません。

また高齢化も進んでおり、働き手の確保も難しいのが現状です。よってDX化を進め、人手不足の解消に乗り出す必要があります。

消費者に届くまでの工程が多い

食品が製造されて消費者に届くまでに、多くの工程が必要です。製造から物流、卸業者、小売など、さまざまな業者が関わっており、その中で多くの手間が発生しています。

また消費者庁の食品表示法は、毎年ルール更新があり、それに伴って表示ラベルの張り替えや製造ルールの変更などが必要です。従業員の作業量も増え、人的コストや時間コストがかさんでしまいます。

その無駄を無くし、商品を滞りなく届けるためには、DX化が必要といえるでしょう。

書類の確認による時間ロス

食品業界では、まだまだ紙の書類でのやり取りがメインです。しかし紙で情報管理をすると、手書きで作成したり、書類を探したりする手間がかかります。また書類の取り違えによる人的ミスも発生しやすく、多くの無駄が出ているのが状況です。

特に食品を保管する倉庫管理は、DX化により大幅な効率化が見込めます。保管場所や出庫確認などをデジタル化すれば、人間の確認作業が減り、大幅なコストカットとなるでしょう。最近は商品をバーコード管理し、ロボットが出荷準備をする企業も増えてきました。

このように、食品業界だけでなく中小企業全体で、紙の書類を減らしていく取り組みが必要です。

人手不足

食品業界は深刻な人手不足に陥っています。

帝国データバンクの調査によると、正社員が不足している企業は51.1%という結果に。特に食品業界は、他の業界に比べて給与水準が低く、求人を出しても人が集まらないのが現状です。

その結果、現場で働くスタッフの負担も重くなり、労働環境が悪化しています。もちろん給与や労働環境の改善は大切ですが、売上が低迷している今、打てる対策はそう多くありません。

だからこそ、人の手を借りないDX化が注目されているのです。

食品製造の現場でDX化をするメリット

食品製造の現場でDX化をするメリットを紹介します。

生産性の向上

DX化を進めると、製造現場の生産性が向上します。今まで手作業だった業務を機械やロボットが行ってくれるため、人手不足の解消だけでなく、生産スピードも効率化できます。

また製造現場のデータを収集し分析すれば、作業工程や生産量などの予測を立てることも可能です。その分、スタッフ同士のコミュニケーションが増え、職場の雰囲気作りにも役立ちます。

品質向上

食品製造を機械やロボットに任せることで、一定の品質を保つことができ、結果的に品質が向上することがあります。それもそのはず、人間には能力差があり、個人によって丁寧さや作業効率が異なるからです。

また人手不足により、スタッフ一人当たりの作業量も増えています。するとこれ以上、品質の担保は難しくなっていくでしょう。

一方機械やロボットであれば、同じ品質を保ったまま24時間稼働してくれます。よって品質の向上や維持を目指しているのであれば、DX化を進めるのが得策です。

人件費の削減

DX化をすると、手作業で行っていた業務を自動化できます。最小限のスタッフで製造・管理でき、大幅なコストカットにつながるでしょう。

今まで食品製造の現場では、多くスタッフが必要でした。しかし最近は、機械やロボットの活用により、さまざまな作業を自動化できます。

人手不足を解消し、人件費を抑えるためにはDX化が必要です。

マーケティングツール活用で効率的に

デジタルを活用すると、消費者の行動に合わせて開発や製造ができます。DX化においては、製造を効率化するだけでなく、消費者行動を分析するマーケティングツールの活用もおすすめです。

ツールを活用すれば、消費者が何を求めているのか明確になります。どんな年代の購入者が多いのか、ECサイトの訪問者はどこから流入してきているのか、などさまざまな分析が可能です。

そのデータを活用すれば、開発や製造がスムーズになり、他社との差別化にもつながります。

働き方改革の実現

DX化を進めると、多くの業務がデジタル化されます。これにより、スタッフの業務量が減り、働き方改革を実現できます。

製造現場だけでなく、プロジェクト管理ツールや会計システムなど、事務作業にもデジタルの活用がおすすめです。これらのツールを導入すれば、在宅ワークが可能となり、従業員の働きやすさも向上します。

DX化で課題解決した食品メーカーの事例

DX化を進めて業務改善を行っている食品メーカーの事例をご紹介します。

次世代型向上で業務を自動化・無人化した日清食品

■画像引用元:NISSIN KANSAI FACTORY(https://www.nissin.com/jp/ir/library/report/pdf/knt_190331_02.pdf

約14,000人の従業員を抱える日清食品では、業務改善のためのデジタル化を進めています。

2018年、関西に次世代型スマートファクトリーを開設。最新鋭の技術を導入し、多くの業務を自動化・無人化しています。

生産ラインには人間が立ち入る必要はなく、全てロボットが製造。工場内には700万台のカメラを配置し、製造工程を監視しています。また生産データの情報は一元管理され、さらなる業務効率化に役立てています。

このように大手食品メーカーのDX化を見れば、将来の予測が立てられるはずです。

生産から箱詰めまでを全て自動化したオーエーセンター株式会社

■画像引用元:NEJI CHOCO LABORATORY|ネジチョコラボラトリー(https://nejichocolab.jp/

通信をメイン事業とするオーエーセンター株式会社では、新事業としてチョコレートの開発に参入。ボルトとナットの形をした「ネジチョコ」を製造し、常に品薄になるほど人気商品となりました。

そして製造工場では、チョコレートの注入から箱詰めまでを全て自動化。その結果、生産量や販売量が増加し、売上アップにつながっています。

またタブレットやバーコードスキャナーによる出荷や在庫管理も導入。作業効率が上がっただけでなく、人的ミスも減りました。

スマホで温度管理を行う溝上酒造株式会社

■画像引用元:溝上酒造株式会社(https://sake-tenshin.co.jp/

福岡県北九州市で日本酒を製造する溝上酒造株式会社「日本酒の味は造り手が決める」をコンセプトに酒造りを行っています。

酒造りには人の手が欠かせず、仕込み期間は昼夜問わず温度管理が必要です。もちろん温度管理をメーカーに依頼できますが、多額の費用がかかり規模の小さい酒蔵での導入は難しい状況でした。

そこで北九州産業学術推進機構(FAIS)の力を借り、スマホで麹の温度管理ができるように設定。現場を離れても温度調整できるようになり、時間効率が大幅に向上しました。

カメラで生産状況を確認している水溜食品株式会社

鹿児島でたくあんの製造を行う水溜食品株式会社。主力商品の「寒干したくあん」は、多くの人から愛されています。

そして同社では、ニーズに合わせて多品種小ロット生産を行っています。消費者にとってはありがたい取り組みですが、工場内でのやり取りは紙ベースで、無駄な作業が多く発生している状況でした。

紙ベースだと、どの商品がいつ出荷できるか把握できず、発注の問い合わせの回答に遅れが出ます。工場まで行って生産数を確認し返答していると、時間がいくらあっても足りません。

そこで各商品のラインにカメラを設置し、生産状況をリアルタイムで確認できるように仕組み化。すると無駄な連絡が減少し、スタッフの業務改善につながりました。

食品業界の課題はDX化で解決できる

今回は食品業界のDX化について解説してきました。業務改善やコストカットをしたいならDX化は必須です。また一気にデジタル化するのではなく、少しずつ導入すれば、DX化のメリットを実感でき、スタッフの理解も得やすいでしょう。ぜひ本記事を参考に、自社のDX化に取り組んでみてください。

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