ユニバーサルデザインフードとは?特徴や参入するメリット、企業の事例を紹介
目次
食べやすさに配慮した「ユニバーサルデザインフード」をご存知でしょうか?介護食のイメージがありますが、美味しさにもこだわり、一般の方でも日常使いできる食品です。
この記事では、ユニバーサルデザインフードの特徴や介護食との関係、食品メーカーが参入するメリット、企業の事例をご紹介します。多くの食品メーカーで開発が進んでいる分野ですので、ぜひ参考にしてみてください。
ユニバーサルデザインフードとは
ユニバーサルデザインフードとは、「食べやすさ」に配慮された食品全般を指します。馴染みのある食品を挙げると、レトルト食品や冷凍食品などの「調理加工品」や、料理にとろみをつけた「とろみ調整食品」などの一部もユニバーサルデザインフードです。
ユニバーサルデザインフードのパッケージには、指定のマークが記載されています。このマークは、日本介護食品協議会が取り決めた規格に適合する商品のみにつけられます。
「硬さ」や「粘度」など4つの区分に分類し、区分ごとに適した商品を選べる仕組みです。主に介護食やケア食として用いられていますが、最近は一般の人でも美味しく食べられるような商品も開発されています。よって今後は、多くの食品メーカーが参入していくでしょう。
ユニバーサルデザインフードにおける4つの区分
日本介護食食品協議会では、ユニバーサルデザインフードの選び方の区分表を設定しています。
区分 | |||||
---|---|---|---|---|---|
かむ力の目安 | かたいものや大きいものはやや食べづらい | かたいものや大きいものは食べづらい | 細かくてやわらかければ食べられる | 固形物は小さくても食べづらい | |
飲み込む力の目安 | 普通に飲み込める | ものによっては飲み込みづらいことがある | 水やお茶が飲み込みづらいことがある | 水やお茶が飲み込みづらい | |
かたさの目安 ※食品のメニュー例で商品名ではありません | ごはん | ごはん~やわらかごはん | やわらかごはん~全がゆ | 全がゆ | ペーストがゆ |
たまご | 厚焼き卵 | だし巻き卵 | スクランブルエッグ | やわらかい茶わん蒸し(具なし) | |
肉じゃが | やわらか肉じゃが | 具材小さめやわらか肉じゃが | 具材小さめさらにやわらか肉じゃが | ペースト肉じゃが | |
物性規格 | かたさ上限値 N/m2 | 5×105 | 5×104 | ゾル: 1×104 ゲル: 2×104 | ゾル: 3×103 ゲル: 5×103 |
粘度上限値 mPa・s | ゾル: 1500 | ゾル: 1500 |
※「ゾル」とは、液体、もしくは固形物が液体中に分散しており、流動性を有する状態をいう。「ゲル」とは、ゾルが流動性を失いゼリー状に固まった状態をいう。
これらの区分を見ながらユニバーサルデザインフードを選べば、その人に合った食品を見つけられます。高齢者に限らず、咀嚼困難な人の食のバリエーションも広がるはずです。
また日本介護食食品協議会では「とろみ調整食品」の表示についても4段階で区分しています。
とろみの目安の表示例
とろみの強さ | ||||
---|---|---|---|---|
とろみのイメージ | フレンチドレッシング状 | とんかつソース状 | ケチャップ状 | マヨネーズ状 |
使用量の目安 | 0~1g | 1~2g | 2~3g | 3g |
こちらも食品のパッケージに記載されており、ユニバーサルデザインフードを選ぶ目安となります。
食品メーカーが介護食に参入するメリット
食品メーカーがユニバーサルデザインフードに参入するメリットを紹介します。
日本は高齢化社会に突入している
日本は少子高齢化社会に突入しています。総務省統計局の調べによると、平成27年には75歳以上人口(12.8%)が0~14歳人口(12.5%)を上回ると予想。また「第一次ベビーブーム(昭和22年~24年生まれ)世代」が平成30年には69~71歳となり、高齢化社会が加速しています。(参照:総務省統計局)
よって介護食やケア食の需要は高く、ユニバーサルデザインフードを開発するには絶好のチャンスです。今後も高齢者社会は加速していくため、より美味しさを求めたユニバーサルデザインフードが求められています。
食の多様化が進んでいる
日本では食の多様化が進んでいます。最近は肉や魚を食べないヴィーガンやベジタリアン、小麦を食べないグルテンフリーなど、食事のスタイルも多種多様です。その中のひとつとして、柔らかい食品も注目を集めています。
日本政府は、2030年までに訪日外国人旅行者数6000万人を目標に掲げています。インバウンドの増加を考えると、柔らかい食品も選択肢のひとつになってくるはずです。
今後も食の多様化は加速すると予想されています。よって、今のうちから参入しておけば大きな需要を掴めるかもしれません。
農林水産省が「スマイルケア食」の海外展開を進めている
現在、農林水産省は「スマイルケア食」の海外展開を進めています。
スマイルケア食とは、健康維持上栄養補給が必要な人向けの食品に「青」マーク、噛むことが難しい人向けの食品に「黄」マーク、飲み込むことが難しい人向けの食品に「赤」マークを表示し、それぞれの方の状態に応じた「新しい介護食品」の選択に寄与するものです。(参照:農林水産省 スマイルケア食)
中でも、富裕層が増え年齢層が高まっているアジア圏をターゲットにしています。日本以外のアジア圏では介護食が未発達であるため、大きな市場になると見込まれているのです。
よって、アジア圏をターゲットにしたユニバーサルデザインフードの開発は大きなチャンスです。農林水産省の後押しもあるため、参入ハードルはそう高くないでしょう。
ユニバーサルデザインフードを開発している日本企業
ユニバーサルデザインフードを開発している日本の企業の事例をご紹介します。
和惣菜の調理済食品を展開する「堂本食品」
■画像引用元:思いやり堂本便|堂本食品 広島の食品メーカー(https://omoiyari-domoto.jp/)
和風惣菜をメインに開発している堂本食品株式会社。多彩な味と技術力で、商品数は600を超えています。
介護食にも注力し、「口から食べて健康寿命を延ばしてほしい」「目でみても美味しい食事を」という思いから、「ソフトな噛みごこち」シリーズを展開。ユニバーサルデザインフード「容易にかめる」に適合し、マークも取得しています。
さらに、口に入れやすいカットサイズで飲み込みやすい「やさしいおいしさ」シリーズも開発。個人に合わせた商品作りが強みです。
このように時代の流れを掴んだ商品開発は、企業を大きくする力となります。
治療食や介護食に特化した「ホリカフーズ」
■画像引用元:ホリカフーズ株式会社(https://www.foricafoods.co.jp/)
ホリカフーズは、食事制限がある方向けの介護食・治療食、災害時に役立つ非常食・災害食を開発。独自の技術と、ものづくりによるオンリーワン企業として注目されています。
治療食や介護食においては、飲んで栄養を摂取できる「流動食」、栄養摂取を支援する「プリン」「茶碗蒸し」「豆腐」などをラインナップ。その他にも、ペースト状の「果物」「おかゆ」「サラダ」なども開発しています。
治療食や介護食に特化し、その商品数は圧巻です。今後も多くの商品の開発が期待されています。
見た目が常食と変わらない介護食を開発する「名阪食品」
■画像引用元:介護食 そふまる公式オンラインショップ(https://www.meihan-sofumaru.com/)
名阪食品は給食サービスや献立開発をメインに事業展開しているメーカー。その経験と技術を取り入れて新しいやわらか食「そふまる」を開発しました。
そふまる最大の特徴は「元の食材をそのまま軟化させる」点です。見た目は常食と変わらないため、介護食に抵抗のある方でも安心して食べられます。
昔の介護食は刻んだりすりつぶしたりと、見た目や美味しさは二の次になりがちでした。しかし、そふまるなら元気な人と同じように食事ができるため、精神的な健康にもつながります。
これらの技術は、ユニバーサルデザインフードの開発で欠かせないものとなっていくでしょう。
ユニバーサルデザインフードは日本に必要不可欠な存在
この記事ではユニバーサルデザインフードについてご紹介してきました。日本は高齢者社会に突入し、介護食や治療食の需要が高まっています。また海外向けのユニバーサルデザインフードの未来も明るく、開発に着手する企業も増えていくはずです。
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この記事のライター
ショクビズ編集部
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