コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。
第17回も「エンドゴンドラ活用術」についてのコラムです。
今回は『季節感を演出する』エンドゴンドラを如何に構築していくべきか?について解説していきます。
各売り場のエンドゴンドラの中で、恐らく最も対応されている状況であろうことが、この「季節感の演出」です。例えば、夏場であれば、麦茶や素麺・めんつゆなどの大展開が行われているでしょうし、そこには、涼を感じる演出として、風鈴や風車、模型での水車など、見た目にも涼しげな場面の演出と共に、その状況下で食事として供されることの多い商材を大きく展開し見た目で引き付けて、商品の拡販を図る、ということが行われています。
冬場であれば、鍋つゆとすき焼きのたれやポン酢など行楽時期であれば、春の行楽であれば、寿司関連、秋の行楽であれば、海苔や唐揚げ粉など、季節ごとに好まれやすい商材が多く展開されており、お客様も季節感を感じることができるような体制を多くの店舗で実施しています。
しかし、近年では、これらの売場にも変化が生じ始めています。内容としては、①従来よりもエンドゴンドラから購入されることが少なくなった、②季節の入口(夏物であれば、5ないし6月位)には売れるが旬の時期(夏物であれば7月から8月上旬位)には販売量が大きく落ち込む、③展開を終えるタイミングが難しく、開始時期、終了時期共に曖昧な状態となっている、など社会の状況の変化とともに、エンドゴンドラでの季節感の演出が難しくなってきています。
同時に、店舗側の構造的な問題もここには大きく関係をしてきています。人不足。労働力不足と、売れなくなってきていることで死筋(売れない)商品が増加し、店舗の商品在庫金額の上昇と金利負担の圧迫が起こり始めています。つまり、これまでと同じような季節感の演出ではお客様も満足されず、お店は労働力不足の中で、時間をかけて商品展開を行うだけのメリットがなくなり始めているという状況です。
これは、非常に由々しき事態であり、商売の根幹をも揺るがす大きな事態であると言えます。では、そもそも何故上記①の様にエンドゴンドラから商品が購入されることが少なくなったのか?を考えてみたいと思います。
これについての要因は多岐に渡っており、それらは複雑に入り組んでいます。その内で考えられることの中で最も大きな要因は、『世帯(家族)人口の減少』ということが言えるでしょう。少子化・高齢化の進行ということについては、皆さんも十分に認識されておられると思いますが、世帯当たりの人口については、現状では減り続けています(下図)。
2000年には、一般世帯当たりの人口は2.67人でした。しかし、直近の令和2年(2020年)の国勢調査によると、全国平均での世帯当たりの人口は2.21人と、わずか20年で18%もの世帯当たり人口が減少し、代わって、高齢者の単身の世帯や二人世帯などが劇的に増加しています。この状況下では、商品の「量目」で大きく展開したとしても、食べきれない、使いきれない。などの諸々の事情から、わざわざエンドゴンドラ買わずとも良い、との心理が生まれ、エンドゴンドラで、季節感を感じる事はあっても、それが消費(購入)にまでは至らない。このような状況となっています。
つまり、これまでの常識や方法論などでは一向に太刀打ちできず、同じ商売をし続けることができなくなっているとも言えるのです。
次回は、更に『季節感を演出する』エンドゴンドラについて、解説していきたいと思います。
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この記事のライター
信田 洋二
1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。