コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。
第14回は「部門間の連携(壁を破る)」についてのコラムです。
今回は『菓子とデイリー品、一般加工食品』を合わせることでできる『部門間の連携(壁を破る)』を解説してみましょう。
デイリー品とは、毎日消費してもらえるように、製造から消費期限(賞味期限)までの日数が他の商品と比較して短いことが特徴であり、冷蔵のオープンケースなどで販売されている商品が大半です。このため、お店では非常に限られた売場の中での争奪戦となり、どの商品に優先順位を与えるか?ということについては、お店の中でも絶えず頭の痛い悩みの種でもあります。
特にそのデイリー品の中でも、牛乳・乳飲料やヨーグルト・ゼリーなどの所謂「洋日配」と言われる売場においては、季節や天候気温のみならず、平日と休日、気温の上下動によっても大きくそのニーズに変化があり、店側としても大変にそれらの商品の動向を読み取ることが難しい商材でもあります。平日には牛乳はあまり動かなくても休日ともなると大きく動く半面、長期の休みの前には、極端に売れ数が減ってくる。逆に、大型連休の最終日などでは、夜遅くまで牛乳を求める人が続くというように、売れ方が大きく変わる要素が読みづらいなど、難しい商材となっています。
その中で、『菓子との洋日配との連動」とは、例えば、ヨーグルトと、シリアルなどの組み合わせは、売場の近接化などで対応している場面が多い状況ですが、それらを思い切って、ヨーグルト売場の最上段を活用して展開を図る。同じくヨーグルト売場の間近な場所に、ドライフルーツなどを一緒に展開し、POPには、『プレーンヨーグルトに、ドライフルーツを入れて一晩寝かせると、オリジナルのフルーツヨーグルトができます!不足しがちなミネラルなどは、ヨーグルト+ドライフルーツの組み合わせで、毎日の習慣化で健康維持を図りましょう!」というような、組み合わせ商品の提案を売場の中で(狭い状況ですが)行うことで、相互の商品の新たな展開が図れるようになるのではないでしょうか。
実際、筆者の関係している店舗では、この対応を6か月限定で実施したところ、各々の売場を離しても、その後の販売数字に影響がほぼなく、販売数が高止まりの状態が続いたという事例があります。
お客様の商品の、生活の、新たな習慣を提案し続けることも、小売業のみならず、メーカーさんとの協働で対応しておくべき事項なのではないでしょうか。その意味では、コロナ禍では、お客様の生活上での閉塞感や自粛疲れなどが相当に出てきている時期です。国際情勢なども混沌としており、先行きが見通せない、不安な状態がこれからも当面続くことが想定されます。生活に少しの潤いを与え、新たな(小さな)発見を感じて頂くためにも、お店側としても部門間の壁を破ることに取り組むべきだと思います。
次回からは、『エンドゴンドラ活用術』というテーマで解説をしてみたいと思います。
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この記事のライター
信田 洋二
1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。