【連載第10回】コロナ前後で変わるお客様の消費動向⑨ | ショクビズ!

【連載第10回】コロナ前後で変わるお客様の消費動向⑨

公開日:2022.01.20 更新日:2024.10.17
ライター:信田 洋二

コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。

第10回は「小売りに於ける部門間の壁」についてのコラムです。


今回は、『小売りに於ける部門間の壁』について、そのことが起こる背景について解説してみたいと思います。

残念ながら、小売り(特にスーパー)では、『部門間の壁』は非常に高く、そして厚い、というのが実情です。本来的に言えば、店舗は各部門一丸となって、お客様にその日の最適なメニューを提案し続ける事が求められますが、実情はその様にはなっていません。皆さんも、新聞折込などで入ってくるスーパーのチラシの『日替わり商品』をよく見てみてください。場合によっては、日替わりの商品を3日間連続で買いに行かないと『カレー』すら作れない(勿論、商品そのものはありますので、カレーが作れないという事ではないです)状況(3日間、別々の日替わり商品を集めてようやく「安上がりのカレー」が作れる様になる…と考えて頂ければ幸いです)となります。これが実情です。

お店は決して『塊になるな!』とか『部門間の連携を良くしよう!』と言った掛け声は多く出されています。しかし、実態に即すると、結果的には部門間がバラバラ。という事が多々あります。特に生鮮食品等の場合、その日の仕入れの状況によって、品揃えが大きく異なってしまうという事は多くあります。それが要因と言う事も一因としてはありますが、真因ではありません。考えられる背景としては、実は本当の意味での『司令塔』が不在というケースが非常に多いと思われます。また、別の意味で言うと、『船頭が多い』とも言えます。

各部門は、それぞれ自らの部門に課せられた『数字(売上・利益)』があります。営業ですので、数字を作る必要があるのは当然です。しかし、その『数字(売上)の作り方』が、各部門で統一されておらず、言わば『治外法権』の様相を呈しているので、『鍋つゆ』の様な商品が、部門ごとに用意され、しかも、売場の占有状況から考えて、それぞれの部門ごとに商品が置かれている。という状況となっているのです。『店の売上も大事だが、部門の売上(ノルマ)の方が大事』と言う事がある意味では錦の御旗となって、部門間の連携を阻害している背景と言えると思います。

しかし、これでは『お客様』の利便性が損なわれてしまっています。非常に残念なことです。また、生鮮品の売場に存在している「鍋つゆ」や『調理の素』は、生鮮品の売場の担当者からすれば、言わば『専門外』の商品であり、その取扱いは、あくまでも『生鮮商品の添え物』的な位置づけや『最上段で展開するのに適している』から展開をしている。という実態があります。ですので、売場をよく見て頂くとお気付きになるかと思いますが、それらの『添え物』的な商品は、決してメインの商材である生鮮品と連動していないケースも多くの売場でみられる傾向です。『エビチリの素』の足元に『海老』がなかったり、『ハンバーグの素』の足元に『ミンチ』がなかったり・・・多くのお店でこのような傾向を見る事が出来ます。これが『部門間の壁』の象徴と言えるでしょう。

次回は、「メーカーさんも連携の上、どの様に部門間の壁を克服すべきか?』と言う事について解説してみたいと思います。

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この記事のライター

信田 洋二

信田 洋二

1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。