コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。
第8回は「一般食品に於ける量目の適正化」についてのコラムです。
さて、今回は「一般食品」における量目の適正化について解説してみたいと思います。前回、前々回と、冷凍食品および生鮮食品における「商品の量目」について解説しましたが、この「量目適正化」の流れは、一般食品(グロサリー商品)においても既に喫緊の課題として考える必要があると思われます。
一般食品(グロサリー)の量目の商品群として真っ先に思いつくのが「調味料」関連でしょう。料理の基本である「さしすせそ」(砂糖、塩、酢、醤油、味噌)の各調味料は、料理をする上で欠かせないものですが、現在スーパーやドラッグストアに品揃えされている商品について言えば、相当昔(1Lくらいのペットボトルが開発されたあたり)から、醤油は1L、味噌は500~750g程度、砂糖も1kgの袋…など、それこそ「十年一日」のごとく、これらの中心的な商品の量目に大きな変化は発生していません。
変化が発生していない理由としては、例えば醤油などの1Lサイズの商品であれば、特売などで安売りをするケースが少なくありません。使い切れなくてもそのサイズを買うケースが多いのは、半分のサイズの商品が1Lサイズよりも「かなり」高額になってしまっているからです。これは味噌も砂糖もお酢などでも同様です。
多くの方は、「ニーズがあるから、1Lサイズの商品が多いのでは?」との印象を持たれているケースが多いのではないかと思われますが、明らかに半分の量の商材との価格差があり、結果的に1Lサイズの商品しか買えない状況に陥っているものと思われます。
「持続可能な…」と様々な場面で言われ始めている昨今。今後、最も深刻な「危機」といえば、恐らく地球規模での「食料不足」になるかと思われます。人口の爆発的な増加は、発展途上国などを中心にまだ続いていますし、地球温暖化の影響による気候変動とそれに伴う多発する自然災害によって、世界的な食料の収量(収穫量)が減少し始めていることは、皆さんも様々な報道等で見聞されていると思います。
非常に大きな話となりましたが、地球環境の問題だけではなく、高齢化が高速で進み、世帯当たりの人口が着実に減少し始めているわが国においては、少しでも食料を無駄にすることはできません。フードロス(使いきれなかった食料品)の削減は、次の世代に禍根を残さないためにも、今から備えなければならない事態だと考えます。
メーカー側からすると、1Lの商品から半分の量を中心とした商品構成とするには、製造ロットの設計、物流の設計、価格設定、無論小売りの理解など、多くの越えなければならない壁があろうかと思います。1社だけが頑張っても他社が従来通りであれば、競争に打ち勝つことは難しくなることも理解しています。しかし、だからこそ自社商品の将来について、様々な角度から検討を開始する必要があるのではないでしょうか。大きな話ですが、問題提起として皆さんと共に考えていきたいテーマだと認識しています。
次回からは、「小売りにおける部門間の壁」という内情から、メーカーの皆さんに考えていただきたいことを解説します。
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この記事のライター
信田 洋二
1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。