環境に優しい!食べられるパッケージがもたらす新たなビジネスチャンス
目次
環境問題への関心が高まり、プラスチックごみの削減に関心を持つ人が増えています。
特に食品業界では、包装材の削減が課題です。
その中で注目されているのが、「食べられるパッケージ」です。
捨てるのではなく、そのまま食べられる包装材は、環境に優しいだけでなく企業にとって新たなビジネスチャンスをもたらしています。
本記事では、「食べられるプラスチック包装」の特徴やパッケージの種類、そして企業の具体的な事例を解説します。
食べられるプラスチック包装とは
食べられるプラスチック包装とは、食品の保存や包装に使え、そのまま食べられる包装材です。
プラスチックと聞くと、「石油を使った合成樹脂」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。実際、日常生活の中で目にする多くのプラスチックは、この合成樹脂製です。
一方、食べられるプラスチック包装は、植物由来の原料を使った「バイオプラスチック」です。例えば、トウモロコシやサトウキビ、海藻といった自然素材を原料に作られています。
食べられるプラスチック包装は、環境問題の解決につながるだけでなく、消費者の目を引きやすい新しいアイデアとして期待されています。
食べられるパッケージが生まれた背景
食べられるパッケージが生まれた背景について詳しく解説します。
環境問題の深刻化とプラスチックごみの増加
現在、世界的に環境問題が深刻化し、プラスチックゴミの増加が問題視されています。
環境省の調査によると、2022年度の一般廃棄物(ごみ)の総排出量は4,034万トン。そのうちの約10%がプラスチックごみとされています。したがって、約400万トン程度のプラスチックごみが排出されていることになります。
毎日の生活で使われるペットボトルや包装材など、使い捨てのプラスチック製品は非常に便利です。しかし、その中にはポイ捨てなどで適切に処理されず、海や川に流れ込んでしまうものもあります。
しかし、食べられるパッケージはほとんどゴミがでません。仮に捨てられたとしても、自然由来の原材料なので、土に還るものも多いです。
そのため、自然に優しい取り組みとして注目されています。
消費者の環境意識の高まり
環境問題が深刻化し、地球に優しい商品を選ぶ「エシカル消費」という考え方が広がってきました。
特に若い世代では、ゴミを減らす取り組みやエコな商品を選ぶことが浸透しつつあります。
そして食べられるパッケージは、「自分は環境に優しい選択をした」という消費者の満足感にも直結します。
エシカル消費に対応すべく、企業も新商品の開発に乗り出しています。食べられるパッケージは、こうした消費者の意識の高まりから生まれたアイデアと言ってもいいでしょう。
イギリスのスタートアップが「食べられるプラスチック」で注目されている
■画像引用元:Notpla|Ooho(https://www.notpla.com/ooho)
イギリスのスタートアップ企業が開発した「Ooho」という、海藻由来の食べられるプラスチックが世界中で注目を集めています。
「Ooho」は、水やジュースなどの液体を海藻を使った膜で包み込み、飲み物をそのまま「一口サイズ」で飲めるユニークな商品です。
膜ごとそのまま食べられるので、飲み終わった後のゴミも出ません。また、仮に捨ててしまっても自然に分解されるため、従来のプラスチックよりも環境に優しいのが特徴です。
特に、マラソン大会やイベント会場など、飲み物のゴミが出やすい場面での活用が期待されています。
食べられるパッケージの種類
食べられるパッケージの種類をまとめて紹介します。
海藻由来のフィルム
海藻由来のフィルムは、海藻を主な原料として作られています。
海藻に含まれる「多糖類」という成分が利用され、私たちがよく知っている「寒天」も、この多糖類のひとつです。
薄くて柔らかいのが特徴で、水やジュース、調味料などを入れるのに活用されています。このフィルムは、水に溶けやすく、体に無害なので、そのまま食べられるのが特徴です。
さらに海藻は、育てるのに土地を必要とせず、環境への負荷が少ない素材としても優れています。自然に分解されやすく、ゴミにならない海藻由来のフィルムは、新素材として注目されています。
デンプンやゼラチンを使った包装材
デンプンは、お米やじゃがいも、とうもろこしなどから取れる天然の成分で、粘り気があるのが特徴です。ゼラチンは動物由来のたんぱく質で、ゼリーやグミなどに使われています。
これらの素材で作られる包装材は、食品を包むための膜として使われます。
その応用として、デンプンやゼラチンが原料の使い捨てスプーンが登場。特に欧米では、使い捨てのカトラリーがキャンプやフェスで活用されています。
多糖類とタンパク質の複合フィルム
植物や海藻などに含まれる「多糖類」、そして強度のある膜を作れる「タンパク質」を融合することで、柔軟性と耐久性に優れたパッケージが作れます。
この複合フィルムは、従来のプラスチックと同じような強度を保ちつつ、使用後はそのまま食べられるのが特徴です。スナック菓子の包装や、液体を小分けにして保存する容器として活用されています。
環境にやさしいだけでなく、私たちの日常生活に溶け込みやすいパッケージとしておすすめです。
果物・野菜由来のパッケージ
果物・野菜由来のパッケージは、果物や野菜を加工して作られた包装材です。
そして最近は、規格外の野菜で作られる「やさいシート」が注目を集めています。
原材料は野菜と寒天のみで、化学調味料やアレルゲン、グルテンは一切含まれていません。そのため、小さな子どもからお年寄りまで、誰でも安心して食べることができます。
このシートはそのまま食べるのはもちろん、サラダやサンドウィッチの具材としても使え、非常に汎用性が高い商品です。
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食べられるパッケージがもたらす新たなビジネスチャンス
中小企業が、食べられるパッケージ市場に参入するメリットやビジネスチャンスについて解説します。
SDGs(持続可能な開発目標)への貢献
食べられるパッケージは、SDGs(持続可能な開発目標)に貢献できます。
その中でも「12.つくる責任 つかう責任」や「14.海の豊かさを守ろう」は、食品業界と密接に関わっています。
食べられるパッケージを使えば、プラスチックごみを削減でき、環境保護につながるでしょう。
このように、SDGsを通じて社会貢献をアピールすれば、企業イメージを向上できます。
エシカル消費の拡大
エシカル消費に関心のある人にアプローチすれば、他社との差別化につながり、信頼を得られます。
特にエシカル消費を重視する消費者は、SNSを活用した情報収集に熱心です。
そのため「食べられるパッケージ」を利用した体験がSNSで拡散され、コストをかけないプロモーションも期待できます。
ブランドイメージの向上
環境問題に取り組んでいる企業は、良い印象を持たれやすくなります。
特に食べられるパッケージは、SNSや広告で目を引きやすく、認知度アップに効果的です。
ブランドイメージが高まると、商品を選んでもらいやすくなるだけでなく、企業そのものへの信頼感が高まり、リピーターやファンが増えていきます。
大手企業との差別化にもつながり、より多くの人に応援されるブランドへと成長できるでしょう。
中小企業はどのように差別化すれば良いのか?
多くの企業が食べられるパッケージに注目しています。
そんな中で、中小企業はどのように差別化していけばいいのでしょうか?
その方法について詳しく解説します。
独自性のある商品展開
中小企業は、独自性のある商品展開が成功のポイントです。
他社と同じような商品開発をするのではなく、工夫を凝らした特別感のあるものを作りましょう。
例えば、地元の特産品を使った食べられるパッケージは、地産地消にもつながり地域との連携を深められます。
また「ここでしか買えない」という特別感があり、消費者からの注目も集めやすいでしょう。
中小企業の強みは、柔軟な発想をすぐに商品化できるところです。アイデア次第では、大企業に引け劣らない商品になり、市場を一気に開拓できるかもしれません。
ニッチ市場の開拓
大手企業が手を出しにくいニッチ市場は狙い目です。
例えば、ヴィーガン向けに、完全に植物由来の原料だけで作った食べられるパッケージを提供したらどうでしょうか?
健康や環境を気にする人たちにとって、魅力的な商品になります。
また、アレルギーを持つ人が安心して使えるように、グルテンフリーや特定のアレルゲンを含まない素材で作るのもいいでしょう。
こうした特定の市場に絞り込めば、消費者に選ばれる独自のブランドを築くことができます。
ブランドストーリーの強化
ブランドストーリーとは、商品の背景や企業の想いを伝え、消費者に親近感や共感を抱いてもらう手法です。
例えば、規格外の野菜を活用した食べられるパッケージなら、「捨てられてしまうはずだった野菜に新しい命を吹き込みました」というストーリーを伝えるイメージです。
このような背景を説明すれば、消費者は「自分も協力したい」と感じてくれます。
中小企業の強みは、地元での活動や温かみのある背景をアピールできる点です。こうしたストーリーを発信し、より親しみやすさを感じてもらいましょう。
食べられるパッケージを開発している企業事例
食べられるパッケージを開発している企業の事例を紹介します。
食べられるトレーを開発する「丸繁製菓株式会社」
■画像引用元:丸繁製菓株式会社オンラインショップより(https://marushige-seika.shop-pro.jp/?mode=f7)
愛知県碧南市にある丸繁製菓株式会社は、アイスコーンや食べられる食器を製造する食品メーカーです。
代表的な商品が、食べられるコップ「もぐカップ」です。
もぐカップは、国産のじゃがいもでん粉を高温高圧で焼き固め、耐水性を持たせた商品です。飲み物を注いでも漏れにくく、使用後はそのまま食べられます。
味はプレーン、えびせん、チョコレート、ナッツの4種類のフレーバーがあり、飲み物や食べ物との組み合わせを楽しめます。
ゴミ問題の解決だけでなく、日常にちょっとした楽しさを提供してくれる素晴らしいアイデアです。
食べられる米ストローで脱プラスチック「株式会社UPay」
■画像引用元:株式会社UPay HPより(https://upay.co.jp/)
株式会社UPayは、環境に優しい「食べられる米ストロー」を開発しました。
この米ストローは、国産のくず米とコーンスターチを主原料とし、完全に植物由来の素材だけで作られています。
使用後は自然に分解され、環境問題やフードロス削減につながります。
さらに、食用着色料を使ってカラフルなラインナップを増やしているため、自治体や企業からの問い合わせも増えているようです。
食べられるスプーン「PACOON(パクーン)」
■画像引用元:「PACOON」公式サイトより(https://pacoon.kinrosyoku.co.jp/)
株式会社勤労食は、食べられるスプーン 「PACOON(パクーン)」を開発しました。
PACOONは、スプーンとして使った後、そのまま食べられるのが特徴です。
原材料は、国産野菜と国産小麦、無添加の自然素材だけ。
フレーバーは、かぼちゃ、抹茶、おから、ビーツ、いぐさの5種類があり、それぞれの野菜の風味と色合いを楽しめます。
主に子ども向けとして販売され、野菜摂取の習慣やしっかり噛む習慣を促進し、子どもたちの食育に役立てられています。
食べられるエコフィルム「クレール®」
■画像引用元:伊那食品工業株式会社 HPより(https://www.kantenpp.co.jp/corpinfo/)
「クレール®」は、寒天メーカー伊那食品工業株式会社が開発した、食べられるエコフィルムです。
海藻由来の成分でできているため、水分の多い食品をまとめるのに役立ちます。
またフィルムは無味無臭で、料理の風味を損なわないので、どんなレシピにも活用できるのがメリット。
例えば、水分の多いフルーツを使ったパイでも、生地をパリッと仕上げられます。
環境に優しいだけでなく、料理の幅を広げてくれる画期的なフィルムです。
海藻原料のサステナブル包装「エコ・ラッピン」
■画像引用元:BIOPAC 公式サイトより(https://www.biopac-jp.com/)
「エコ・ラッピン」は、インドネシアのBIOPAC社が開発した、海藻を原料とする包装資材です。
使用後にお湯で溶かすことで自然に分解され、ゴミにならないのが特徴です。
もちろん食用の素材で作られているため、包装ごと食べることも可能。例えば、ハンバーガーの包装紙として提供し、そのまま食べてもらうこともできます。
https://www.youtube.com/shorts/TAU2KDB8xJU
商品ラインナップも豊富で、ラップ、サシェ、ガセット、巾着袋、シールテープなどがあります。どんな食品にも合わせやすく、さまざまな商品に活用できるのが魅力です。
食べられるパッケージで環境負荷を減らそう
食べられるパッケージは、環境問題、そしてエシカル消費へのニーズに対応できます。
中小企業は、地元の特産品を活用した商品や、小規模だからこそできる細やかなニーズ対応で差別化していくことが大切です。
食べられるパッケージは、環境に優しいブランディングとして、今後さらに伸びていくでしょう。
この記事のライター
ショクビズ編集部
企業の主な実績
オリジナルシールの企画・作成 10,000社以上
オリジナル紙箱・化粧箱・パッケージの企画・作成 11,000製品以上