孤食が増えている原因と食品メーカーができる対策とは?

公開日:2024.08.19 更新日:2024.10.17
ライター:ショクビズ編集部

日本では核家族化が進み「孤食」が社会問題となっています。  特に高齢者やひとり親世帯、未婚者などは、1人で食事をするのが当たり前です。すると孤独感だけでなく、栄養の偏りなどさまざまな問題に直面します。  この記事では日本が抱える孤食の問題を軸に、食品メーカーができる対策について解説します。   

孤食とは

孤食とは、1人で食事」「それぞれ食べるものが違う」「それぞれ食事の時間帯が違う」という意味合いを持っています。 また「孤食」だけでなく、7つの「こ食」にも目を向けなければなりません。  孤食:1人で食事をする 小食:食事量が少ない 個食:家族ひとりひとりが違うものを食べる 子食:子どもだけで食事をする 粉食:パスタやピザなど小麦粉を使う高カロリーなものを好む 固食:好きなものや決まったものしか食べない 濃食:外食や加工食品など塩分や糖分が多いものを食べる このように「こ食」が増えると、栄養が偏って生活習慣病になったり、孤独で心を病んでしまったりなどの問題が発生します。   

日本では孤食が増えている 

日本では、孤食が社会問題になりつつあります。  農林水産省の「平成29年度 食育白書」によると、同居している家族と「ほとんど毎日」一緒に食事を食べると回答した人は6割程度。また年代でみると、孤食が「ほとんど毎日」は70代の女性で26.0%、20代の男性で25.4%と、4人に1人が孤食になっていることがわかります。  2025年には人口の年齢別比率が変化し超高齢化社会、いわゆる「2025年問題」が目前に迫っています。高齢者が増えると、さらに孤食が進むことは間違いありません。 孤食の問題は、食品メーカーだけでなく社会全体で考えるべき課題といえます。  

孤食が増える原因とは? 

孤食が増える原因は以下の通りです。  ・共働きで核家族化が進んだ ・ひとり親世帯の増加 ・一人暮らし高齢者の増加 ・テレワークの浸透  それぞれについて、詳しく解説していきます。 

共働きの家庭の増加 

近年、共働きの家庭が増え、家族団らんの時間が減ってきました。 1980年代の高度経済成長により、女性の社会進出が当たり前に。すると家族全員で食卓を囲む機会が減り、子どもが1人で食事をとったり、夜遅くにコンビニ弁当を食べたりなど家族の関わりが薄くなってきました。 昔は祖父母と同居するのが当たり前でした。しかし現代は、核家族化が進んでいるため、孤食になる人が増えています。 

ひとり親世帯の増加 

ひとり親世帯やワンオペ家庭も増えています。 厚生労働省の「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果の概要」によると、母子世帯は119.5万世帯、父子世帯は14.9万世帯という結果に。 しかも、ひとり親世帯はふたり親世帯よりも収入が少ない傾向にあります。そのため、仕事を掛け持ちしたり、残業を増やしたりなど、家にいる時間が少ないのも事実です。 そのため、ひとり親世帯は子どもだけで食事をすることが多く、コミュニケーションがうまく取れていません。 

一人暮らし高齢者の増加 

一人暮らしの高齢者が増加し、孤食化が進んでいます。 内閣府の調査によると、65歳以上の一人暮らしは男女ともに増加傾向にあります。 昭和55年は、65歳以上の男女それぞれの人口に占める一人暮らしの割合は男性4.3%、女性11.2%でしたが、令和2年には男性15.0%、女性22.1%と増加。 2025年には約800万人いる団塊の世代が後期高齢者(75歳)となり、人口の4分の1を占めるといわれています。 今後も一人暮らしの高齢者は増え続け、孤食も大きな問題になっていくでしょう。 

テレワークの浸透 

テレワークの浸透により、自宅で食事をする人も増えています。  会社にいれば、上司や同僚とおしゃべりしながらランチをしますが、家だと1人で食べなければなりません。 テレワークで人間関係のストレスが減った反面、人との関わりが薄くなり、孤食が進んでいるのです。   

孤食が進むとどうなるのか? 

孤食が進むとどんなデメリットがあるのでしょうか? 孤食の起こす問題について解説します。

栄養バランスの偏りが生まれる 

孤食が常態化すると、栄養バランスの偏りが生まれます。  農林水産省の「平成29年度 食育白書」によると、孤食が週2日以上の人より、孤食がほとんどない人の方が、バランスよく食事をとっており、朝食を食べる機会も多いことがわかっています。  例えば、子どもだけだと菓子パンやカップラーメン、お弁当など、簡単なもので済ませなければなりません。すると栄養バランスの偏りが生まれ、健康上のリスクが高まってしまいます。 

子どもの肥満・やせにつながる 

孤食は、子どもの肥満・やせにつながります。 子どもの成長期において、食事は大きなウエイトを占めます。 孤食で栄養が偏ると、発育・発達に悪影響を及ぼしかねません。  例えば、カップラーメンの塩分量は平均56gといわれています。 しかし世界保健機関(WHO)では、大人の食塩摂取量の目標値を15グラム未満に設定しています。 要するに、子どもがカップラーメンを食べると、1日の食塩摂取量を大幅に超えてしまうのです。しかもカップラーメンの味の濃さに慣れれば、ますます濃い味を好むようになり、肥満につながってしまいます。 子どもの健康を守る上でも、孤食を減らしていく必要があるでしょう。 

食事マナーが身につかない 

子どもの孤食の問題点として「食事マナーが身につかない」ことが挙げられます。 家族と一緒なら「いただきます」「ごちそうさまでした」などの挨拶や、箸の使い方、正しい食べ方などを学べます。 しかし孤食はマナーを学ぶ機会がないため、マナー違反だと知らないまま大人になってしまうのです。すると意図せず周りの人を不快にし、良好な人間関係が作れない可能性があります。   

孤食を解決するために食品メーカーは何をすべきか? 

孤食の解決は、家族だけでなく地域や企業がサポートしていく必要があります。 では食品メーカーは何をすればいいのか?   それは「共食の場」を作ることです。 共食とは、家族や仲間と食卓を囲んでコミュニケーションをとりながら食事をすることです。共食が増えると、心と身体が整いやすく生活の質も向上します。 食品メーカーであれば、料理教室や子ども食堂、シニア食堂を運営し、コミュニケーションの場を作るのがおすすめです。 ぜひ地域単位で取り組める共食を考えてみてはいかがでしょうか。   

孤食対策をしている企業の取り組み事例 

孤食対策をしている企業の取り組み事例を紹介します。 

地域の課題を解決するために活動する「カゴメみらいやさい財団」 

■引用画像:「カゴメみらいやさい財団」HP(https://www.kagome.co.jp/company/sustainability/social-contributions/02.html 食品の大手総合メーカーのカゴメでは、地域の課題を解決するために「カゴメみらいやさい財団」を設立しました。 特に子どもを取り巻く食生活の問題の解決に取り組み「子どもに笑顔を、地域に笑顔を」を理念に活動を行っています。  例えば、1999年から始まった「りりこわくわくプログラム」では、カゴメトマトジュース用のトマト「凛々子®(りりこ)」の苗を全国の小学校や保育園、幼稚園に無償提供。トマトを栽培する過程を体験してもらっています。 このように収穫から調理までの一連の体験は、子どもの好奇心を高め、よい食育活動につながっているようです。 

子ども向けの料理教室を開催(ハウス食品)

■引用画像:「ハウス食品グループ本社」HP(https://housefoods-group.com/activity/event/h_cooking/index.html レトルト食品の最大手ハウス食品では、子ども向けの料理教室を開催。1996年にスタートした「はじめてクッキング」は、一緒に料理をする楽しさや食べる喜びを感じ、食べ物の大切さを伝えています。  2023年までに幼稚園・保育所・認定こども園に通う1,000万人を超える子どもたちが、カレー作りに挑戦。子どもの健やかな成長を応援する食育活動を推進しています。 このように、自社商品を活用した料理教室もよい取り組みといえるでしょう。 

コミュニケーションを楽しめる「やさいのキャンバス」

■引用画像:Makuake「やさいのジャンバス」プロジェクトページ(https://www.makuake.com/project/share-re-green/ 株式会社Share Re Greenは、子ども向けのお絵かきクリーム「やさいのキャンバス」をクラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」で販売しました。   「やさいのキャンバス」とは、子どもたちの想像力を育むお絵かきクリームです。野菜とハチミツで作られており、食パンやクッキー、ホットケーキなどにお絵かきをして、楽しみながら食べられます。 これはお絵かきを楽しむだけでなく、一緒に何かに取り組み、コミュニケーションを図る目的があります。 家族や仲間とワイワイしながらお絵かきをする機会を創出し、孤食の解決に取り組んでいる事例です。 

食育活動を推進する「キユーピー」

■引用画像:キューピーグループコミュニケーションブック2019 マヨネーズメーカーの最大手キユーピーでは、食を通じて社会に貢献するために「コミュニケーションブック」を作成。特に孤食によるコミュニケーション不足の解決に取り組んできました。   例えば、東京都調布市に設置した体験型施設「マヨテラス」では、食の楽しさと大切さを体験できます。 子どもたちはマヨネーズ作りに挑戦し、自分でできたという自信と、野菜の美味しさを知ってもらう食育活動を実施しています。 また2017年には「キユーピーみらいたまご財団」を設立。子ども食堂など、食育活動や居場所作りに取り組む団体への支援も行っています。   

コミュニケーションの場を増やそう 

今回は「孤食」の原因や食品メーカーができる対策について解説してきました。 孤食は企業、そして地域のサポートがなければ解決できない問題です。特に食品メーカーは、食育と密接な関係があるため、地域と連携した取り組みを推進していかなければなりません。  ぜひ本記事を参考に、地域が抱える孤食問題と向き合ってみてはいかがでしょうか。 

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